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平成17年(2005年)7月13日
地上デジタルテレビ放送開始にかかる問題点
(その2)
長 野 県
地上デジタルテレビ放送は、既に関東・中京・近畿の三大広域圏でスタートしており、2006年12月までに全国の県庁所在地など主要都市で放送が始まる予定とされる。
その後、2011年7月24日までには、地上アナログテレビ放送を終了することが計画されている。
長野県は、昨年8月の全国知事会において、地上デジタルテレビ放送開始にかかる費用負担などの問題点について提言を行ったが、その後1年が経過する今日に至ってもなお、2011年までに全ての国民が地上デジタル放送を享受できるようにするための具体的な方策の全体像は国民の前に明らかになっていない。
この計画は、次に掲げる重大な問題を抱えていると考えられることから、直ちに詳細な情報を国民の前に明らかにした上で、計画を見直すべきと考える。
1 2011年までに国内の全てのテレビをデジタル対応にする見通しが立たないこと。
地上デジタルテレビ放送が2003年12月1日に東京・名古屋・大阪の三大都市圏でスタートしてから、1年半が経過した。この1年半でわかったことは、地上デジタルに対応したテレビの出荷実績は291万台にすぎず、ケーブルテレビ用STBなどの地上デジタル対応機器を含めても463万台にとどまったということである。国内では1年間に約1,000万台のテレビが売られているが、このうち約8割は現行アナログ放送だけに対応する「古い」テレビだったことになる。この2対8というデジ・アナ比率が2〜3年で逆転するとは考えにくいし、たとえ近々に逆転できたとしても、2011年までたった6年では、現在、国内にあると見込まれている1億台以上のアナログ対応テレビのうち数千万台以上がデジタル非対応のまま残ってしまうことは確実な情勢である。
注:地上デジタル放送受信機国内出荷実績は(社)電子情報技術産業協会調べ
2 アナログ周波数変更対策(いわゆるアナ変)の費用が不透明であるとともに、進捗が遅れている地域があること。
アナログ周波数変更対策のコストは、電波利用料として、携帯電話会社を通じて全ての携帯電話利用者から毎年1台当たり540円を徴収するなどで賄われている。総費用は、426万世帯を対象として1800億円程度、つまり1軒あたり単純計算で4万円ほどかかるとされている。これに対して、末端の下請け電気工事店が受け取る手数料は1件あたり1,000円以下ともいわれ、あまりにも差が大きいことから、どのように費用が使われているのか不透明である。
また、15年2月から始まったアナ変対策は、本年6月までの2年余りで約291万世帯(約68%)の受信対策が終了し、現在までのところ、「順調に進捗」(総務省地上放送課)しているとされている。
しかし、「電波銀座」といわれる九州・有明地方や瀬戸内地方のアナ変作業は極めて複雑で時間もかかることや、徳島では大阪・生駒山からの電波がフルパワーでも予想外に弱く、地元にデジタル局がある1系列以外の民放テレビをどのように受信するのかといった問題が生じていると聞いている。現在の開局スケジュールでは、全国の主要地域(県庁所在地)で地上デジタル放送が始まる予定の2006年12月までに、全国全ての地域で電波が出るか危惧される。
3 地方民放局のデジタル化については、投資負担が重く、末端まで中継局を整備できないことから、アナログ波が停波するまでに2割前後の世帯に民放のデジタル電波を届けることができないこと。
地方民放局にとっては、投資負担が過酷すぎて末端まで鉄塔を建てることができない−−だから2011年段階で4,800万世帯の2割前後に民放のデジタル電波を届けることができない、とされた問題は、依然として解決のメドが立っていない。
民放局は32エリアの親局とこれに準じる550の重要局からのデジタル電波で、全人口の80%をカバーできる見込みだが、残りをカバーするために(アナログ局とほぼ同数の置局が必要と仮定した場合)1万4000局以上の小規模送信・中継局(ミニサテ局)が必要であると見られている。これにかかるコストは、民放連が04年に送信・中継設備について必要な投資額を8,082億円と試算したうちの約1,700億円。民放は、現状では「公的資金」−地方自治体の税金からの資金と、財務省の税金からの補助金をあてにしていると聞くが、国や自治体に費用負担を求めるための、どこに送信・中継施設を都合いくつ建設するという詳細な計画の公表は、2005年いっぱいかかるとされている。
しかし、テレビ局の高給、低俗番組の氾濫、青少年への悪影響などが批判的に論じられているときに、放送デジタル化に公的資金を投入したいといって、簡単に国民や自治体住民が納得するとは考えにくい。テレビ業界は、公的資金の投入が人びとに受け入れられるような手を打つべきである。民放連の会長社である民放局が「テレビのデジタル化はまったく無意味」と主張するIT関連企業に440億円もの巨額な出資をし業務提携を続けながら、国や地方自治体に対して、公的資金の投入を求めて、国民や住民の納得が得ることができるとは到底考えられない。
4 視聴者への告知が遅れていること。
国民の多くは、まだ地上デジタル放送の詳細について理解をしていない。
総務省が2005年(平成17年)6月14日に発表した「地上デジタルテレビジョン放送に関する浸透度調査の結果」によれば、11年のアナログ放送停止、地上デジタル放送への転換に伴い、2011年にアナログ放送が停止することを知っている人は10人のうち1人にも満たない。アナログ放送の停止については3人に2人が認知しているが、停止時期を「11年」と正しく認識していたのは9.2%で、73.9%は「わからない」と回答している。
総務省は「アナログ放送の停止について周知を進めていく必要がある」と説明しているが、総務省や放送局は、公的資金の投入を求める前に、視聴者に対し正確な情報を提供する責任がある。
注:調査は今年3月、全国の15歳以上の男女約4,000人を対象に行われたもの。
5 受像機のサイズと価格が問題であること。
地上デジタル放送の受信機の大きさと価格という二つの巨大な問題が、まったく片付いていない。
まず、日本で売れるテレビの6割が21型以下の小型であるにもかかわらず、相変わらず、16型以下の小型ハイビジョンが存在しない。また、売れ筋のプラズマまたは液晶デジタルテレビは、30型以上、価格30万円以上というような高額商品であって、低所得者、高齢者、一人暮らしの世帯などを含めた国民が誰でも手軽に購入できるものとはなっていない。
このような現状で、地方自治体に費用負担を求める形でCATVや共同受信施設の整備を行おうとしても、自治体住民の理解を得ることはできない。
6 総務省だけがもっぱら関与する省策となっており、真の国策となっていないこと。
たとえば、経済産業省は通商産業省機械情報産業局長通達(49機局第230号・昭和49年4月16日)に基づいて、製品の機能を維持するために必要な部品の保有期間を「補修用性能部品の最低保有期間」として定めており、カラーテレビのそれは8年である。経済産業省が製品の機能維持を製造打ち切り後8年としながら、総務省の計画によれば現行放送を今後6年で終わるのは、消費者保護の観点からいかがなものかと思われる。あるいは、総務省の見通しに従えば今後6年間で1億台以上の古いテレビが破棄されるものと思われるが、環境省が対策を講じているとも寡聞にして承知していない。このように現在の地上デジタル放送計画は、省庁間の連携がまったく図られておらず、総務省のみが突出して関与する「省策」となっており、真の「国策」というにはほど遠い現状である。
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