プロフィール
1983 年、夫の退職とともに山間地で農業を始める。 1991 年にWWB/ジャパンのビジネススクールを受講。その後、安全な食を提供しようと 1992 年、 60 歳で長野県飯田市に「和楽」を開業。
 活動内容
平成 5 年、高齢者が大勢働く食品店「和楽」を開店。店内ではおやきやお弁当などのほか、地域の方々の手工芸品や地場産品販売、第 3 世界ショップの製品などを販売。また 2 階のフリースペースでは生け花、押し花、短歌、パッチワークなどの講座、「 Hand in Hand 和楽」というボランティアグループもこちらを拠点に活動している。日本に定住、ないしは一時滞在の外国人のために日本語教室を開いたり、外国人からの様々な相談に応じている。
「今の時代に不平不満を言ってる時間はもったいないです」

―「和楽」をはじめたきっかけはなんですか。

「高齢者のために何かをしたいと思ったのがきっかけです。それまでは農業をしていたので、その経験を生かして高齢者と食の問題から仕事を始めたいと思っていました。でも、何を始めるにもまずお金が必要です。どうしようかと思っていたときに※ WWB /ジャパンのことを新聞で知りました。『志を担保に融資する』という文句にひかれて東京まで飛んでいきました。講習を受け、『高齢者のために何かを』という漠然としていた思いが、具体的な形になっていきました。

 自分は長野にいたのでおやきが得意でしたから、まずおやきを店に出そうかと考えました。おやきというのは特別なものではなく、家庭料理です。でも、商品として出すのですから、 1 年以上勉強しました。始めはなにもわからず、他の店に行っては材料の粉は何かと探っていました。岩手にいい粉があるという情報を得て、実際に使ってみて本当によいと感じ、今でもそこの粉を使っています。とてもいい粉を探し当てたことを自分でも満足しています。具は地元のものを使っています。素材がよければいいものができるんです。」

―おやきが始まりだったんですね。現在はそれ以外にどんなものを扱っているのですか。

「最初のころはおやきが経営を担っていましたが、今はお弁当です。お年寄りや一般向けのお弁当が今はかなり売れています。野菜をいっぱい食べて欲しいから煮物などを作っているのですが、これが若い人たちにも受け入れられているようです。決しておしゃれなお弁当とはいえませんが、ヘルシーなところがいいのでしょう。今現在、厨房はおやきとお弁当、それと高齢者向けの配食をやっています。

 また、 2 階と 1 階の片方がフリースペースになっています。何でもやろうということで、店のほうには高齢者の人とか、何かしようという人の手作り品を置いています。時代の変化に応じて少しずつ変わってきていますが、やろうとしていることは今も変わりません。

 店に来てくれる人と話すことと、 WWB と話すことで足元と世界の両方の情報を集めています。今、店に来る人に感じていることは『何かを探しに来ている』ということですね。そして精神的に安定を求めている感じもしています。店でお客と話すことは経営の成功にもつながっていきます。イベントにも積極的に参加して、多くの人と話すようにしています。なかなか、仕事が忙しくて参加できないことも多いのですが…。

 仕事を始めたときから、時代は変化していますが、思いは変わりません。しかし、時代の変化に合わせて人とのかかわり方は変えていかなければいけないと思います。」

―仕事で大変なことはなんですか。

「経営という点では大変なことがたくさんあります。高齢者は外に出たがらず、家にいたがります。本来地域にいた人は、その地域にいるべきだと思うのですが、年をとるとなかなかひとりでできないことが多くなりますからね。しかし、少し手伝うだけで地域の中で生活はできると思います。でも今は、福祉施設が多くできて、そこに入ることが当たり前になっています。みんなが施設頼みになっているんです。そして、高齢者が施設に行くにしたがって、市から施設にお金が行き、自分たちには来なくなってしまいました。助成金がでないためにお弁当の配達を続けていくことが難しい状態になっています。助成金の対象にならない人も多くいますし、そういう人に安心できる、いいお弁当を配りたいのですが…。でも、私たちのような小さな会社ではなかなか厳しいのが現状です。

施設に入ることが当たり前といった風潮はいいことではないと私は思います。人は誰かの役に立つことが必要なのに、施設に入ると役に立つ必要がなくなってしまいます。体が悪くなったら誰かに助けてもらわなければなりませんが、それまではできることを生かすという考えを持つべきです。」

―読者の方にメッセージをお願いします。

「今の日本に必要なのは『人』です。いい人が日本に住むことです。若い人たちは流されるのではなく、しっかりと周りを見て、必要なことを探してほしいです。必要だと思ったことをすると必ず何かがついてきます。ついてこなかったらやり直せばいいんです。

 何をしていても、今は情報がすぐに取りこめるのですから、積極的になるべきだと思います。今の時代に不平不満をいっている時間はもったいないです。自分がやるかやらないかですから。年を取ると頭が回らなくなってきますから、若いうちに勉強してほしいです。

 高齢化社会といわれますが、高齢化社会というのは高齢者が何かしてもらう社会なのではありません。弱い者を助けるのは当たり前です。でも弱い者も社会に対して何か少しでもいいから働きかけることができるような社会を作っていく必要があると思います。お年寄りは技術をもっているし、いろんなことができるんです。地域の中で、小さな地域の中でいいから助け合いを始めてほしいですね。」

※ WWB /ジャパン・・・ World Women's Banking / Japan (女性のための世界銀行・日本支部)の略。女性の起業を支援する組織で、起業家育成ビジネススクール、講演、融資仲介などの活動をおこなっている。