―どうして農業をやろうと思われたのですか。
「もともと百姓の長男でしたから、農業をせざるを得ないという感じでした。私の父は農業が嫌いでしたから、祖父は私が卒業するまで待っていて、私に農地を託したんです。祖父はそのあと、すぐに亡くなりましたから、もしかしたら自分の寿命がわかっていたのかもしれませんね。中学校を卒業すると同時に跡取になったのですが、それは仕方なくというものではありません。もともと農業に興味がありました。しばらく母と二人でやっていたのですが、もっと勉強したくなり 3 年間アメリカへ行きました。家族や自分の人生を大切にし、農家であることに誇りを持った彼らのやり方にとても影響を受けましたね。ところが、帰国したら日本は高度成長期。父に勤めに出るように言われ、町工場で働きました。でも、そこでは自分の能力を発揮できず、 2 年で辞め、家内工業を始めました。しかし、ずっと農業のことが頭から離れませんでした。結局、オイルショックのときに家内工業をやめ、いよいよ農業をやろうと決めました。 1 年間はこれからどうやっていこうかと地域の農業を分析して、楽しみながらできるものはないかと探しました。そして出会ったのが野菜でした。」
―農業はなかなか大変だというイメージがありますが…。
「確かに農業は儲からないというイメージがありますが、私はこんなに儲けられるものはないと思っています。私は百姓も一つの業種として考えて、サラリーマンと同じような報酬、身分保障などを全部考えてやりました。やればできるものなのですよ。もちろんそれは自分の力だけでなくいろいろな人にお世話になったからなのですが。私は自分の能力は1%、残り99%は他の人の助けだと思っています。素晴らしい人との出会いや、周りの人の協力により、自分を 100 %にできるのだと思うのです。
私にとって大きかったのは、白根正志先生(山陰ネッカリッチ社長)との出会いでした。野菜を作ることにしてから、問題になったのは土です。高度経済成長の頃は農薬や科学肥料に頼ることが当たり前でした。でもそうすると土がだめになる。人間が楽をして、土がぼろぼろになってしまっては、農業は続けられません。循環型の農業をするには土をなんとかしなければならならない。そう思っていた時に白根先生の講演会で炭と木酢液が畜産関係で素晴らしい実績を持っていると聞き、これは土壌にも使えるのではないかと思ったのです。それから炭について勉強しました。今は炭と木酢液、その他にも土壌の栄養になるようなものを補給しながら、土壌作りをしています。土作りは農業の原点ですから。そこがしっかりしていれば、多少の天候不順なんか関係なくいいものがとれるんですよ。」
―今後はどのような活動を?
「農業はよくみると、完全に社会主義で、農協という形の中で動いています。つまり、平等だということです。だから民主主義として経営者としてみれば、これほどいいものはありません。私はそこに目をつけ、農業ベンチャー企業構想を打ち出しました。私は※この組織を第二農協といっています。借金や補助金は嫌いなので、全国から株を集め、自分たちの退職金を使い、施設をつくりました。ちゃんと最初の年から儲かってますよ(笑)。従業員は一人です。今の日本で一番企業を圧迫しているのは人件費ですから、それを徹底的に落とした結果です。無駄を省いていけば必ず儲かるんです。能力がない人はだめだと言われますが、誰しも能力はあるんです。その能力を引き出せるかどうかですね、大事なのは。」
―読者にメッセージをお願いします。
「今、日本の食料自給率は 4 割といわれていますが、実際はそれ以下でしょう。国内の住民の生活を維持できる食料自給率は 60 %です。なにかあって、外から食料が入ってこなくなったらどうすればいいのでしょうか。そんな危機感が必要なはずなのに、日本の農業は変わらないままです。普通のやり方ではやはり儲からない。では、どうすればいいのか。先程も言いましたが、みんなが右に行っているから右に行くようではだめです。もっといろいろ考えなければいけない。そうすれば企業でもなんでも簡単に起こせると思います。起業を成功させるには、経営能力、絵をかける人、作文をかける人、という三拍子が必要だと思います。一人では無理です。三人集めればいいんです。これ以外はいりません。そして、これがやりやすいのが農業の分野なんです。
これからの産業はリサイクル資源の有効利用、環境をうまく組みこんだ産業が一番儲かります。その中でも人それぞれに得意なものがあるのですから、それで企業を起こせばいいんです。流行に流されず、バランスを見て企業の少ないところの分野で勝負すれば成功します。今の日本経済は明け方 5 時です。これから夜明けです。夜明けには農業です。これからの世の中の歴史を見て先を見越した生活をしていってほしいです。皆と同じをよしとするのではなく、一番下から上に上がろうとするくらいの気持ちで。若い人には誰に何を言われても自分を持てる仕事をしてほしいですね。」
※この組織・・・横森さんが代表取締役をつとめる「(株)信州がんこ村」のこと。「(株)がんこ村」は、天然の森林資源から「炭・木酢液」をそれを畜産・水産用飼料、土壌改良剤等の農業の基礎資材として活用し、より健康的で美味しい生鮮食品(野菜・肉・魚・卵・牛乳)を生産している。
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