ー会社設立の目的はなんでしょうか。
「会社設立の目的は、セラミックスと高分子材料の複合による新しい材料の開発をするためです。新しいとはデザイン、色調、風合い、ネーミングそういうものを新しいって考える人もいます。多い服をデザインや色調で新しいねといってみたりしますよね。大体の人はそう考えると思います。しかし、我々は材料を開発する会社なので新しいこととは、あるものでしかできなかったことをほかのものでできるように、それまでできなかった事をできるようにすることです。」
ー御社の製品は直接社会に貢献しているものが多いですが、どのように社会のニーズを把握していますか。
「こちらから集めるというよりも集まってくるんですよ。いまは昔と違って簡単に情報が発信できるようになりましたから、面白いと思う人は接触してきます。そこでこれよりもっとこういうものがほしいというニーズや市場の把握ができるのです。大きな流れですが情報化のために、庶民が恩恵をうける基準を作らなければ庶民はふりむかない、物を買ってくれない時代になりました。その点を踏まえてどのような研究をしていけばいいか考えています。」
ー今後活動の予定はどのようなものですか。
「材料であたらしいことができるって事はオリジナリティーがあるということですよね、だから特許によって簡単に権利化されます。その材料の特性、性質によりますが材料の用途は非常に広いです。例えば、鉄っていうものができたとします。鉄っていくらでも用途がありますね。そのあたらしい材料で物を作ろうとしたら、きりがないし時間がかかってしまいます。だから物を売りたかったら物を作りたい会社に作ってもらう、物を売りたいんだったら物を売りたい会社に売ってもらうようにすれば工場はなくても物を作ることができるのです。要するに、建物もない、機械もないけど我々のような 10 人たらずの会社が利益をあげて、だれもできないようなことができる会社を目指しているのです。」
ー経営者として木曽は不便な地域ではないですか。
「物を開発する会社ではなく材料を開発する会社ですから、我々の会社は木曽にあっても東京にあってもアメリカでもいい会社です。山があって人がいなくて過疎だという人もいますが、われわれはコンピューターがあるのでまったく不便に感じません。
若い人がそういう考え方をしているとしたら不思議に思いますね。情報さえフリーならば長野とか信州とか甲信越なんか関係ないんです。よく地域の人が村のためとか国家のためにとかいう事をいう人がいますが、私はまったくそう思いません、もうそういう時代ではないです。海があって海がない時代なのです。」
ー研究職を目指している若者へのメッセージをお願いします。
「みなさんは自分で自分の能力があるかないか専門知識が問われているかと思いますか。
私は全然そう思いません。あなたが知っていることなんて専門分野の範囲のほんの一点程度です、一人が全部のことなんてやれっこないんです。研究とはあたらしいことをやることですよね。あたらしいことをやるってことは知らないことをやることです、知らないことをやるのに一番合理的なのはあなたが中心となって、あなたよりもっと知っている人とネットワークを組むことです。そのようなネットワークを作るために人間関係とか信頼関係のほうが技術的なものをしっているよりもはるかに大事と、うちのような会社はそう考えます。専門的な知識はほとんど期待していないのです。そのため若い人には大局観を持ってほしいですね。客観に世の中を見て、自分はどこにいるのか。そこで自分の思いを遂げるために何をすればいいのかを考えてみる。知らないことをどの程度のレベルで自覚するかが問題なのです。この悪ければ悪いでしょうがない、能力がないとわかるのが重要です。よく消極的な中の積極性っていうのがあるじゃないですか。知らないっていうのはあって当然のこと、それは覚えればいい事、聞けばいい事とわかればいいのです。単純な発想ですね。そして、わからなければ、私は知りません、あなたが知っていたら教えてくださいっていう、わからないということを意思表示できる人はこれから必要とされます。聞くということは知らないことを覚えるし、コミュニケーションの最大の方法だと思います。聞かれた人は知らないから俺に来たんだと相手は思う、そこで信頼関係も形成することができる。たどり着くことは知らないことを知れるということなのです。簡単なことなのだけどなかなかできません。そこが伸びるか伸びないかの分岐点なのだろうと思います。」
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