―ケイ山田さんは 14 年も前、まだ日本にイングリッシュガーデンという言葉がない頃から蓼科で活動をされていますが、もともとこの場所を選ばれた理由というのはあったんでしょうか。
「もともと蓼科山が先祖に縁のある土地だったのです。蓼科山が見えるところがいいなと思ったからです。両親は長野県の出身なんですね。それともう一つは比較的イギリスと気候が似ていたからというのもあります。イギリスはこんなに標高は高くないですが緯度が高いですから。冬はこんなに大雪は降りませんし、夏もそんなに暑くはなりませんが、その点を除いては比較的似ていると言えますね。空気とか、花の生育には大変適しています。」
―ガーデンにある植物もイギリスのものが多いんですか。
「そうですね、ほとんどバラも含めイギリスから持ってきています。私たちが始めたころは、いわゆるイングリッシュガーデンにふさわしい植物は日本にはほとんど種類がなかったんです。お庭にどういった植物を入れるか、というようなことが書いてあるテキストがあるんですけど、それを見ても書かれた植物名が日本中探してもないんですね。私はとにかく本物を作りたいという思いがあって、そこに書かれたものでなければ本当の美しい庭は造れないんじゃないかって思って、それで輸入をしようってことになったんです。でも船で運ばれてきた植物に虫がついていて検疫で全部返されちゃったりね、そこから苦労が始まりました。本当に困ったことだらけだったんです。日本で始めてのことだからどうしていいかわからない、植物をどこから入れればいいか、デザインはどうするか、全く素人のところから暗中模索しながらやってきたという感じですね。」
―お庭を造る上で気遣うこと、心がけていることっていうのはどういうことなんでしょうか。
「やっぱりね、自然環境。イングリッシュガーデンをいうのはもともと自然環境を大事にするところと一緒になってスタートしているんですね。イングリッシュの歴史というのは 1600 年くらいから始まっているので歴史ごとにいろいろな考え方を持ってきているんですが、自然の風景を切り取った庭というのが永遠のテーマになってるんですね。だから私も蓼科という美しい自然の環境を壊さないように、景観と融合した庭造りをするというのが根本にある考えなんです。やはり日本の美しい自然を大事にしていかなければならないと強く思いますね。
それと、この庭はまだまだ若い庭なので、もっともっと熟成させて奥の深い庭にしたいです。やはり庭というのは歴史があるから美しいのであって、例えば京都の庭なんかでもずっと魂を込めて作り上げてきた、守り続けてきた人がいるから今にもっても美しく見られるわけですよ。イングリッシュガーデンも同じですね。イギリスの人たちも同じように 100 年以上かけてずっと自分たちの庭を守り育ててきたから美しいのです。」
―先ほどお庭を拝見しましたが、落ち着いた、ゆっくりとした空気が流れていてとても素敵だと思いました。ここにはどんな人たちが訪れるのでしょうか。
「もちろんいろんな方がいらっしゃいますが、一日中朝から晩まで読書をしていかれる方もいらっしゃいますし、一週間ごとに来られる方もおられます。来る人には空気を感じていただけたら、気持ちがいい場所だと感じていただければそれでいいですね。別に花をそんなにじっと見ていかれなくてもああいいなぁ、なんてリラックスできるんだろう、ここに来るとのんびりできるということが庭の楽しみなのではないでしょうか。
そういうことで庭の花には名札をつけていないんです。ここは植物園ではないですから。実はこれについてはイギリスでも結構論争があるんです。名札を付けてほしいというのがイギリスでもあるんですけど、でも代表的なものには目立たないように付けてあるんですよ。写真をとってみたりすると名札がでかでかとついていないほうが、庭の景観としては自然な感じで美しく見えますから。」
―ガーデニングの先駆者として今の若者に伝えたいことは。
「みんなもっと自然に目を向けてもらいたい。こんなに美しい長野県なのに看板だとか電信柱とか、そういう美しい景観をどんどん壊しちゃって、やたらと建物だけ奇抜な色を使ったりしてるじゃないですか。やはり自然の美しさを壊さない環境というのを私たちが守っていかなければ、誰も守っていく人がいないと思うんです。特に若い方たちがそれを守っていくということを実践してくださらないと、次の世代がごみだらけの日本になってしまう。せっかくこんなすばらしい山の中なのにいろんなごみが捨てられていたり、そういうことを普通に放置してしまうのが悲しいことだと思うんですね。」
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