―来てみて驚いたんですが、本当に「家」なんですね ( 笑 ) 。なぜ民家改修型宅老所をやろうと思ったのですか?
「この活動を始めたときは大規模な通所施設が主だったんですよね。だけど自分達が福祉の仕事をやっていく中で、もっと気楽に来れるところがあれば、大勢の人が家から出て地域の中で外に向かっていけるということを実感していました。本当は社会との接点を持てるはずなのに、家に閉じこもっているお年寄りが結構いて。体が悪くなっちゃったから外に出れないとか、あんな大きな施設には行きたくないとか、あんな白い建物は嫌だとか。そうじゃなくて、もっと気楽に近所にお茶を飲みに行く感覚で、職員と利用者の関係を密にできるような、それくらいの規模でやりたかったですね。全国の宅老所とかを見学して、こういうのができたらいいね、やりたいねっていうのがあってはじめました。介護保険がはじまるっていうのが一番大きかったですけど。
ただ、私たちだけで盛り上がって、本当に地域のニーズに合っているのかなと思って、こういう宅老所についてのビデオ上映会をしたんですよ。そこでアンケートを取ったら
100 %。こういうところがほしいっていう意見が。だったらいけるかも知れないっていうことで。」
―「いいせ」が他の宅老所と違うところは?
「朝、お家にお迎えに行くところから始まって、ここでやるのは食事と入浴、その他の時間の介護です。小規模個別ケアということで、一人一人の方がやりたいことを、得意なところを活かしてもらいたいと思っているんですよ。散歩をしたい人もいるし、庭いじりしたい人もいるし。だから何々の時間を設けるんじゃなくて、それぞれのやりたいことをなるべくやってもらえるようにしているんです。一斉活動をしないっていうのは絶対守りたかったところです。」
―こうした形での活動は地域への密着度が大事だと思うんですが。そのへんはどうでしょうか。
「最初はやっぱり目の前のお年寄りと自分達しか見てないっていうのがありました。でも旧宅(取材場所である『新宅』の前にできた最初の宅老所)のほうを始めたときは、まったく行政とかも入っていないので、近所に挨拶しに行くところからはじめたんですよ。その時に近所の方がすごく賛同してくれたり、気を使ってくれたりしました。お年寄りと散歩をしていると声をかけてくれたり、徘徊しちゃった方がお家に上がりこみそうになったときも、「じゃあ、お茶飲んでいき」なんて感じであったかくしてれて。はじめのうちは地域の方に理解していただきたいなと思ってきたんですが、逆に地域の方に教えていただくことがすごく多くて。いつかお返ししたいなっていう思いがあります。この新宅のほうは庭が広いし、フリースペースもあるので、地域に開放していろいろ使っていただきたいですね。」
―職員以外の方っていうのはお手伝いに来たりするんですか?
「ボランティア人たちも来てくれてます。ボランティアに来ていただいた方には得るものを得て、なんか楽しかった、時間を共有したって思いをもって帰っていただきたいですね。ボランティアっていうと、自分の楽しみが根底にあると思うんですけど、世間では無償の奉仕の心が一般的で。こことしてのボランティアは無償の労働力って解釈されることはしないし、やめようってことになったんですよ。例えば草むしりとかで本当に困ったら、それは有償で頼もうじゃないかと。得るものがあって帰ってもらおうと思ってます。小学生が老人ホームにボランティアにいって、窓拭きして、歌を一曲歌って帰ったりしてますよね。そうじゃなくてその時間をお年寄りとお話していったほうがいいんじゃないかなと思います。ここには若い人たちもボランティアで来るんですけど、おばあちゃんたちにこき使われても、それなりに楽しんで帰っていくし。」
―今後どのような活動をしていきたいですか?
「近所の方々で介護保険に該当しない方とか、もっと若い方とかにも自由に来てもらえるようにしています。庭に関しても、保育園なんかでお散歩の休憩場所として使っていただいたりとか。ここはできて間もないので、本当にこれからなんですけども。いろんなところのいろんな年代の方にかかわっていただくために、ここが中心になればいいかなって。実現するかはともかくとして、プランはいろいろあるんですよね。学童保育とかできないかなって。はっきりとこうでなくちゃいけないと決めたくないし。地域との関わりなんかもこっちでイベント組んでとかじゃなくて。こういう人が来たからこういうことができるよ、とかの自然発生的なものを大事にしたい。
半分冗談半分本気なんですけど、夏になったらバーベキューとかやって若い人は、庭にテント張って泊まってもらうとか
( 笑 ) 。あんまり大志はいだいてないけど、ここにこういうところがあるよっていうのを知ってもらって、気軽に相談に来たり顔を出してほしいなっていうのがありますね。そういうところになっていけばいいなと。」 |