プロフィール

1971 年
信州大学大学院工学研究科修士課程修了

1972 年
信州大学工学部助手

1977 年
信州大学工学部講師

1978 年
信州大学工学部助教授

1990 年
信州大学工学部教授

工学博士、オルレアン大学博士。新炭素体やリチウムイオン電池など先端新素材の電子物性とその応用が主な研究対象。フランス国立科学院客員研究員、マサチューセッツ工科大学招聘研究員、炭素材料学会編集委員長、同運営委員長、日本学術振興産学協力 117 委員会主査、アジア太平洋科学技術リーダー会議委員ほか、国際会議議長等を務める。炭素材料学会賞受賞。 2001 年米国炭素学会ペティノス賞受賞。

 活動内容
グラファイトファイバーからカーボンクラスターに至る広範な炭素体とニューセラミックス等の先端新素材を主たる研究対象としている。その研究成果は世界的に著名で、炭素の科学と技術の広範な分野に及ぶ。各社が事業化を展開。携帯電話やノートパソコンにはリチウムイオン電池が使われているが、その半分以上に遠藤教授らが開発した“遠藤ファイバー(ナノファイバー)”が使用されている。
長野レガシーが捉えた新素材

―遠藤先生はナノテクノロジーで世界的な方ですが、中央から離れている長野県の地理的条件は、研究を進めていく上で問題になりませんか。

「みなさん、長野というと地理的に少し首都圏から距離があるといいますよね。でも、私は、そのことはまったく問題ないと思っています。確かに、地図の上では長野は首都圏から離れています。しかし、今の時代、地図上の位置というのはあまり問題になりません。ご存知のように、新幹線が開通して東京には 1 時間半で行けるようになりましたし、何か情報が欲しいと思ったら、インターネットですぐ検索できる。だから、地理的ハンディキャップは、仕事の上でも生活のうえでもまったく感じることはありません。

地理的にハンディキャップがないだけでなく、長野県には首都圏にない、豊かな自然があります。それに、コミュニティがあるというか、地域の人々とのかかわりも非常に密接なんですね。私はそういう地域に住むことを誇りに思っていますし、仕事をするうえでの背景として、非常にいい環境にいると思っています。地域からエネルギーをもらって仕事をしているという感じです。」

―今お話に出た、コミュニティとのいうのは。

「コミュニティというのは、人々は生活基盤のことです。簡単にいうと、住んでいる人々が心を通い合わせて、お互いの生活を支えていくことができることです。コミュニティは、人間の社会が持つ基本的な要素のことですね。」

―長野にはそういうコミュニティがあるということですか。

「ありますね。私は出身も須坂市だし大学も長野だからわかりますが、学生さんにはわかりにくいかもしれません。特に信州大学の学生は。ほとんど県外出身だからね。私は、いつも思うんですけど、学生は食わず嫌いしていないで、もっとコミュニティにコミットすべきです。そこで学べることがたくさんある。もちろん地域の人々も学生から学べることがあると思いますよ。せっかくこういうコミュニティが生きている土地である長野県にいるのにもったいないと思います。コミュニティを鬱陶しく思わずに、積極的に参加するようにしていけば、住民と学生の相互にいい影響を出し合えるはずです。たとえば、長野県民はチャレンジ精神が豊富です。粘り強いというか、努力を継続して、最後にはしっかり目標を達成できるという県民性を持っています。今の学生には辛抱強くないですからね。この粘り強さを、地域の方々と交流する中で見て欲しいですね。せっかく長野にいるわけですから、長野レガシー(遺産)を、信州の歴史や伝統、風土のよいところをしっかり吸収して、巣立っていってほしいですね。」

―遠藤先生も相当粘り強いですよね、何でも 3 ヶ月間顕微鏡を見続けたと聞きましたが。

「ああ、それは留学していたときの話ですね。 30 年近く前ですが、私はフランスに留学していたんですね。そこには当時世界最高精度の電子顕微鏡がありました。私は、早く自分が信州大学から持ってきたサンプルを、その電子顕微鏡で調べたいと思っていたのですが、指導教官が許してくれませんでした。『ありのままを見なさい』とその教官が提示するサンプルを毎日毎日、顕微鏡を通して徹底的に見続けました。 3 ヵ月後にようやく、自分が持ってきたサンプルを見ることを許されました。今思うと、私も相当粘り強いですね、私も信州人ですからね ( 笑 ) 。

しかし、このときの経験は本当に役に立ちました。後に『遠藤ファイバー』と呼ばれるカーボンナノチューブを製造する方法の開発につながる発見できたのもフランスでの経験のおかげです。

遠藤ファイバーとは、鉄を触媒にして炭素繊維を成長させるカーボンナノチューブのことですが、この方法は、ナノメートル単位の炭素繊維の先に鉄の粒子が付着しているのを発見できたため、はじめて可能になりました。1センチの繊維に付着した直径 1 ナノメートルの粒子を電子顕微鏡で捉えるのは、信州大学の工学部から善光寺までの数キロ間に落ちている 10 円玉を探すようなものですが、フランスでの経験を忘れず、昼夜、電子顕微鏡をのぞいていたからだと思います。」

―ベンチャー企業を立ち上げられたとのことですが。

「 MEFS( メフエス ) 株式会社という大学発ベンチャーです。ベンチャー企業を立ち上げた理由は、社会の要請というか、社会が求めていると思ったからです。また、私自身、私の研究の成果を社会に還元したいと思ったからです。大学での研究成果を社会に還元するのは、これからの時代、大学の責務ではないでしょうか

また、いずれ NPO も設立したいと考えています。この NPO には、人材育成やインキュベーション的な役割を持たせ、 MEFS とこの NPO を両輪とする社会駆動を作っていきたいと思っています。」