プロフィール

1950年 伊那市に生まれる
1968年 商校卒業と同時に建具職人見習いとして父の営む有賀建具店に入る
1978年 有賀建具店を継ぐ
2003年「森世紀工房マイスター」として認定される

そのほか 「建具の匠技職人」の養成塾の指導にあたる、長野県から「卓越技能者 信州の名工」に選ばれるなど

 活動内容
昭和 40 年代前半に建具職人の世界に入った後、無垢の木にこだわり、木そのものが持つ手触りや匂いを生かした製品を手がけ、障子やふすまだけでなく、洋服ダンスや食器棚、テーブル、いすなどを県産材で製作。県林務部が呼びかけた木工家具の製作振興組織「森(しん)世紀工房」に参加し、平成 15 年 6 月には、同工房のマイスターとして認定され、県産材を使用したオリジナル家具づくりに取り組んでいる。
「里山の木を大量消費したいですね」

―近くの山の木を使って家具や建具を作るようになったきっかけは何ですか。

「私が通った高校は山形の飯豊山のふもとの山の中にあったんですが、その三年間をブナの原生林の中で過ごしました。ところがその周りの木を伐採しちゃうんです。ブナの原生林です。その中にはナラとか栓木センノキとかいろんな種類の大木もあった。今だったらとても考えられないことですよね。そのときは何も思わなかったんです。でも高校を卒業して仕事を始めたときに、チップ工場で直径 1 メートルはある大木が大量に出てきてるのを見て、こんなもったいないことはないなと思ったんです。それが最初のきっかけです。もう1つは新建材に対してなんですが、使っていてどうもこれはおかしいと思って・・・全部同じなもんだから。それで考えたのは次の世代、子供たちがニセモノの中で育ってしまったらホンモノが分からないで育ってしまうんじゃないかってこと。だから新建材はなるべく使わないで、身近にある木を消費しようと思いました。三つ目の理由がかなり重要なんだけど、新建材、いわゆるプリント合板ですけど、これを使った仕事っていうのは面白くないんですね。身近にある木を使って仕事をしたほうがずっと楽しい。」

―木の魅力って何ですか。

「なんでしょうね。あんまりちかくにありすぎるもんだから・・・。とにかくね、木の仕事をしていて楽しいんですよ。それが一番の魅力ですね。続けられるっていうかね、なになにしなくちゃいけないとか、こうでなくちゃいけないとか、そういうことがなくてね。こういうものを触っていること自体が楽しいんですよ。あと、全部違うってことですね。同じ種類の木でも色が違い、木目が違い、ひとつとして同じものがないんです。個性が出るというか、育ちが出るというか・・・まったく違う表情があるので、それを大事にしなきゃいけないなって思うし、面白い。」

―今まで様々なものをつくってきたと思うんですが、どんなことが難しかったですか。

「木はムクノキを使うのでどうしても動くんですね。最初の頃は動きを止めて狂わないようにしてました。でもそうやっていくと出来上がったあとに狂ったり無理がかかったります。今では逆に、木のほうに合わせる、こっちから木を閉じ込めるんじゃなくて木が自由に動けるようにしています。考えてみれば、昔の人はみんなそうやってたんですけどね。そういう伝統が途切れちゃってるもんですから。そういった点では苦労しましたね。」

ー仕事をする上で心がけていることを教えてください。

「一番心がけているのは、どんな木でも使えるってこと。職人仲間の中には今でも細い木、曲がった木は使えないって意識があるんです。そうじゃなくて、打ち捨てられているような木でも十分に使えるってことを知ってもらいたいですね。逆に誰もやっていないからそういう気を使うのが楽しみですね。表情がすごくある。

作るだけじゃなくて納品してからも面倒見ないとまずいんじゃないかって思います。例えば、遠くの地域からも仕事を依頼される。そうすると気候が違うんで木が動いて、家具が歪んだり動かなくなったり不都合があるんです。それをメンテナンスすることが必要です。

 もうひとつは、廃棄するときに自然に戻る、木だけで作ったものがいいと思います。大事に使っていただいても最終的には廃棄しますから。次の世代が莫大なお金をかけて処理しなきゃいけないような負担を残しちゃいけない。」

―これから挑戦したいことは何ですか。

「山の木を大量消費することですね。今、使われないまま放置されてる木がほとんどなんです。それを全部使いたい。使うということは山の木を切ることですから、そうすると山が再生、きれいになるんですよね。里山を再生していくとやっぱりいい木が取れますし、そうすればまた必要なときに切ればいいし。なんといっても木は再生可能な資源ですからね。切ったらそれで終わりというわけじゃない。切れば他の木は育つしね。」

―建具職人を目指す若者にメッセージはありますか。

「近くの山にいい木がたくさんあることを知ってほしい。外国材とくらべるとずっといいも木です。優れている点はまず色ですね。色にこれだけの種類があるのはすごいですよ。それから、におい、肌触り。そうした点で多様なんですよね。やっぱり加工する際に扱いやすいのは外材です。大きくてまっすぐですから。でも楽しさからいったらね。やっぱり国内ですよ。いろいろ苦労するからこそ楽しい。

あと、これは建具職人を目指す人だけじゃないんだけど、本物を見たり触ったりしてほしいってこと。美術鑑賞品としてではなくて生活の一部のものとして本物を使う、ということを一番やってほしいですね。」