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最終更新日:2003年03月24日
 

知事職員朝礼

平成14年6月10日(月)

     

 おはようございます。長野県知事の田中康夫です。

 今月から月に1回、各現地機関の方々も含めて、30分ほど私がその1カ月に考えていること、また、皆さんと一緒に考えていきたいことをお伝えしていこうと思います。

 先ごろ、信州・地球温暖化対策研究会というところが地球温暖化対策「長野モデル」というものを作成し、私の手元に届けてくださいました。これは大変に画期的な内容であります。2010年に長野県がどういう姿であるべきか、冒頭にその2010年のあるべき長野県の姿が文章として描かれています。峠を越えると他の都道府県ではあまり見かけない木製のガードレールが目立つと。信号機も、これは既に警察庁も予算化をしていますが、省エネ型の発光ダイオード製が多く使われている。そして学校、小・中・高等学校や公共施設の屋根には10キロワットの太陽光発電の装置がもれなくあり、あるいは、学校の机やいすも県産材を使っていると。そして街の自動販売機は2002年現在と比較すると約2分の1になっていて、そしてコンビニだけでなく大型の店舗も午後11時には店を閉めると。そしてまた企業が産業界の削減実施計画をして排出量を6%削減して、そのための目標を設定し具体的に公表をしてそれに伴って行っていく、さまざまな内容が載っています。

 この地球温暖化対策研究会が出した長野モデルというのは、長野県が依頼したわけではありません。長野県の経営者協会、これはご存じのようにセイコーエプソンの安川英昭会長が代表であります。そしてまた長野県の環境保全協会、これもまた、八十二銀行の会長である茅野實さんが代表を務めています。こうした長野県の産業界を代表する2つの団体が公募で求めた市民と共に作成をしたという点が極めて画期的なことです。これは決して過激な提案ではなく、私はまさに精密機械で始まった東洋のスイスである長野県が、ある意味、日本のスウェーデンとなっていくということではないかと考えています。

 「ロッタちゃんはじめてのお使い」という映画を教育委員会や社会部の人たちにお願いをして私が就任当初に長野県内の小学生や中学生にぜひ見ていただきたいと言いました。アストリッド・リンドグレーンという、この春先に九十数歳で亡くなられた「長くつ下のピッピ」という物語で皆さんもよく知っているこの女性が書いたロッタちゃんという話は、とても小さなロッタちゃんのお母さんがスウェーデンのビンメルビーという小さな町でお買い物に行くときに竹かごを手にさげて、その中に大きなガラス瓶の牛乳瓶が入って、お店で新しいガラス瓶の牛乳を買うというシーンがあります。ある意味、日本ではほとんど見かけなくなったシーンであるかもしれません。

 昨年の夏にスウェーデンとそしてデンマークに出掛けました。いずれもストックホルムもコペンハーゲンも新しい空港のビルになっていましたが、そのビルはもちろんRCで造られた4階建て、5階建てのビルであるにもかかわらず、床だけでなく壁もそして天井ももれなく木製です。それこそは私は実体のあるイメージ戦略であると思います。北欧を訪れた人々が木の香りのする空港に降り立つ、けれどもそれは、同時に人々をお題目ではない啓発活動として意識を高めることだと思います。

 沖縄県に先の大戦で極めて凄惨(せいさん)なる悲惨な戦場となった糸満市という市があります。現在この糸満市は、この春に建設費用4億5,000万円をかけて出力195キロワットの太陽光発電を糸満の市庁舎の壁面をすべて太陽光発電が行える装置を設けました。これは佐賀県庁が既に120キロワットの太陽光発電を行っていますが、これをはるかに上回るものです。2,500枚の発電パネルが覆い、そのうちの1,000枚は市庁舎の南側に斜めに並んでいます。今まで太陽光発電は、お金がかかりすぎるからとても難しいと言われていました。けれどもこの太陽光発電を糸満市が行うということは、そこの市庁舎を訪れる人々に私たちがまさに21世紀は成長から成熟の環境の世紀に生きているということを伝えてくれるのです。そしてこの糸満市には、先の大戦の戦禍の記念の場所を訪れる人々だけでなく、全国各地からこの太陽光発電を見るために民間やそして市町村の方々が訪れています。大変に喫緊な話をすればそうした方々が訪れることも糸満市の経済効果です。けれども大手の広告代理店が算定するような大きなイベントを行う際の経済効果という言葉とは違う、大変に一人ひとりの市民の意識改革を行うものであると私は思います。

 先日、県本庁舎の講堂で講演をしていただいた宇沢弘文さんを座長として、建築家の安藤忠雄さん、安藤さんは3月に浅田彰さんと一緒に新しいまちづくりに関してのトークセッションを長野市で行ってくださいました。そして軽井沢にお住まいの川勝平太さん、川勝さんは経済学史の学者で早稲田大学に勤務されていましたが、現在は京都にある国際日本文化研究センターの教授を務めています。そしてもう一人、浅田さんと並んで神野直彦さん、この方もまた財政学の大変な碩学(せきがく)です。かつて自動車工場の組立工の経験から学究の徒となった神野さんは、最近「人間回復の経済学」という本を出しました。不思議なことにというか大変に喜ぶべきことに、この「人間回復の経済学」という新書は、現在、大手町や丸の内の書店で大変に多くの方々が手に取り、そして購買をしています。そこに描かれていることは、先日、宇沢弘文さんがお話しになったこととほぼ軌を一にしている内容です。つまり私たちの経済学は誰のためにあるのか、あるいは、私たちの法律学は誰のためにあるのか。法律を維持するために、あるいは、経済というシステムを維持するために法を厳しくしたり、経済が地球化、グローバル化していくということではないのではないか。法は本来、人々を自律的に判断をし、人々が真の意味で豊かになるために法律も経済もあるのだということを説いています。

 これら5名の方々と私たち部局長や私が一緒になって長野県の目指すべき姿というものを策定していこうと考えています。それは決して抽象論ではなく、極めて具体論の目指すべき姿を提言していこうということです。

 宇沢さんはフランスとドイツの国境に近いストラスブルグ、ここにはEUの議会が置かれていますが、ストラスブルグの街の中には車が乗り入れることを規制をして、外側に駐車場を造り、人々はそこを皆歩いて商店街を見ると、散策をしているということをおっしゃいました。これはストラスブルグに限ったことではありません。例えばミラノからベネチアへ行く途中にベローナという町があります。ロミオとジュリエットの町であると言えば思い出される方がいるかもしれませんが、この町もまた中心部には大変古くからの野外のオペラ劇場があります。けれどもこのベローナもまたイタリアの多くの北部都市がそうであるように、城壁、都市国家として成立し、その旧市街へ入る城壁の周りには観光バスのみならず一般の車も駐車をする地下の駐車場、そして地上の駐車場があります。人々はそこで観光の人だけでなく、住んでいる人々もまた車を降りて歩いていくのです。もちろん体の不自由な人に対する手だては道路にさまざま講ぜられています。人々は歩いてベローナの市内に入り、そして円形のオペラ劇場を見て、そしてまたそこで食事をします。その商店街には数多くイタリアの名だたるしにせのブティックが店を並べています。

 安曇村という村が私たちの長野県にはありますが、安曇村が姉妹都市として提携をしているグリンデルワルトというスイスの小さな町があります。こうした町も自分たちの町が永続的に生きていくためにはどうすればいいのかということを考え、そして町の中に車が入ることを規制する、人々はそこを歩くということを決めたわけです。観光客だけでなくて、そこに住んでいる人々もです。それは日々の日常生活において効率主義から考えれば、あるいは極めてマイナスかも知れません。でも自分たちの町が一過性ではなく、永続的に真の意味で反映していくにはどうするのかということをおそらくは彼らは考えたということです。

 長野県にもそうした例はあります。馬籠やあるいは妻籠という場所は、おそらくや馬籠や妻籠が三十数年前からあのようなたたずまいを取り戻していったさなかには、私たちには高度経済成長があり、ある人はもっと大きな駐車場を造って観光バスが来るようにした方がディスカバージャパンだといったかも知れません。私は昨年、どこでも知事室で南木曽町に出掛けたときに「どなたがこのように美しいたたずまいというものを物質主義で右肩上がりだと思っていた時代においても形作ろうとしてきたのでしょうか」と尋ねました。すると、町の方が「当時、一人の大変に尖った町の職員がいて、その人がこの私たちのたたずまいというものを残してこそ、南木曽町の未来はあると言った」と。その時に「なるほど」と膝を打って、やはりこれを先祖からもらったものとして後世にも伝えようという人には理論の理の字を説いたと。これが理なのだと言ったと。「やあ、もっと私たちの目先の反映を考えようよ」という人には利益の利を説いたと。急がば回れで、むしろこれを残してこそ他の市町村との良い意味での区別化ができると言って、それこそが将来における私たちの利益になると言ったといいます。

 以前から私は問題調整型から問題解決型にしようということを申し上げてきました。演繹法ではなく帰納法で捕らえようと申し上げてきました。時折、知事が言っていることは実は演繹法と帰納法の意味合いを取り間違えてはいないかというふうにおっしゃってくださる方がいます。もう一度私は考えてみたのですが、やはり私が言っていることは演繹法から帰納法へと発想を転換しようということだと思いました。

 少し難しくなるかもしれませんが説明をします。演繹というのは推論、だんだん押し広げて発想をしていくということです。前提があって、そして結論を押し広げて考えていく。前提を認めるとするならば、結論もまた必然的に認めざるをえないということです。数学における証明はその典型的なものです。では帰納法というものはどういうものでしょうか。特殊なことから普遍性のある一般的な命題や法則を導き出すというふうに書かれています。けれどもこの帰納法的な推理というのは、演繹をしてきた場合には妥当ではないが、けれども私たち市民は正当であるとおそらくは見なすであろうという推論のことを述べているのです。つまり個々の具体的事実から一般的な法則や命題を導き出すということです。もう少しかみ砕いて言えば、私たちは常に望むべき社会の姿というものを念頭に置いて、その念頭に置きながらいま私たちが生きている現実を見て、そして望むべき社会へとするために正すべき点を、直すべき点を把握して果敢なく進めていくということです。

 ディテールからの改革というのは、まさにこの帰納法ということです。今、現実にあることを、個々のことを見て、ずっとそれに問題解決ではく問題調整型で対処をしていると、実は知らない間に袋小路に入っていってしまうということです。それは一つ一つはとても丹念に仕事をしたとしても、結果として訪れることは演繹、つまり広がりのある形にすらならず、そして私たちが目指していた姿を、特殊な命題というものを実現化しようとする帰納にもなっていかないということです。

 先に治水・利水ダム等検討委員会の宮地良彦委員長から砥川と浅川の2つの河川流域に関しての治水と利水のあるべき姿の提言をいただきました。私はこの週末にそれを改めて読み直し、そして今なお、今週、さらに、もう少し長い時間をかけて、そのいただいた提言というものを私が理解するだけでなく、その上で私たちが目指すべき治水や利水のあり方というものを多角的に、そして細部にわたって検討せねばならないと思っています。けれども今回の提言がある意味では示唆しているところも、問題調整型ではなくて問題解決型として私たちは帰納法的に私たちが望むべき社会というものを作り出していこうということをささやいてくださっているように思います。

 今年度、部局長と一緒に協約というものを策定いたしました。私は県民から直接選挙によって選ばれ、私にはさまざまな判断をする権限があるだけでなく、判断をする責務があり、そしてその結果に対して私は常に責任をとらねばなりません。皆さんとの一緒の共同作業であっても最終責任はすべての長野県政の、行政の判断そしてその結果は私にあるということです。私は私と共に長野県民が目指すべき社会を創るべく奮迅してくださる皆さんをいついかなる時においても、私自身が相変わらず少しデブッチョな体ではありますけれども、この体をもって私自身が前面に立って皆さんを守るということです。そして皆さんはその私と一緒に帰納法として、そして問題解決型で県政を行うということです。

 協約に関しては私の写真だけが少し写真家が撮った写真なので現物よりも良く見えて、他の部局長の写真は、少しくかわいそうじゃないかというふうにおっしゃっている方もいます。これは部局長に関してもデジタルカメラで部局長の顔写真のアーカイブを、記録集をつくって、その中から部局長が気に入ったものに変わりますので、ある意味で明日クリックすると部局長の写真が突如、とても使用前、使用後から使用前のような顔になっているかもしれません。それは半ば冗談ですが、この協約に私は追加をしていく事項がいくつかあると考えています。これは既に部局長会議でも伝えました。それはディテール、ディテールの意味は先ほど申し上げたように演繹の末にもたらされるものではなくて、帰納としてのある意味ではとても広がりのある実効性のあるものがディテールです。そしてディテールと同時に大事なのは、スピーディーであるディテールであるということです。

 例えば、農政部ではこの秋からワインと日本酒に関して原産地管理呼称制度というものを導入します。これはソムリエの田崎真也さんと東部町にお住まいの玉村豊男さんとの共同作業によって成し遂げられたことです。野菜と果物に関しては、皆さんも最近しばしばこの言葉を聞くと思いますが、トレーサビリティーということを行っていきます。トレーサビリティーというのは、野菜や果物の履歴です。いつ、どこで、誰が、どのような農薬を使い、どのような農薬は使わずに作り、そして出荷したのかということがきちんとホームページ上で、その野菜や果物の紙箱、あるいは袋に記されていた番号を入力すると出てくるような形にしようということです。

 実はこれを農水省も考えるようになってきました。私は農政部の意識というものが生産者、というよりも生産者の組織を大事にするというだけではなく、すべての人々が食べ手なのだから、食べ手の発想の視点、つまりは食料部というような発想にしていこうと話しをしていました。ご存じの武部農林水産大臣が最近、小泉純一郎さんのメールマガジンで私たちも食料省あるいは食料産業省にしていくと書いています。そしてトレーサビリティーも平成15年度から導入したいと書いています。長野県が発想したことは、決して長野県が、あるいは私たちが取り立てて優れていたのではなく、皆が望む社会は農水省の大臣であっても同様に考えているということです。ただし、長野県が発想したことはそれをスピーディーに実現しなくてはいけません。この秋にはいくつかの野菜に関して実験的であってもいくつかの農事組合やあるいは農協、個人の協力を得ていくつかの野菜や果物に関してはトレーサビリティーができるようにしていきたいと思います。具体的な日時を設定をして、そこまでに実現するために私たちは行くといことです。

 あるいは森林整備の予算というものは、就任以来1.5倍になりました。けれどもそれはわずか60億円です。大変な、膨大な治山の事業に比べればわずかな金額です。先日、奈川村で車座集会をやったときに80歳にならんとする老人の方が、その方も森林組合の一員ですが立ち上がって、林道を二十数年かけて造っていく、その林道を仮に造るとしてもその上下150メートルくらいは間伐をするようにきちんと方策をたてたらどうだろうと言いました。そしてその彼は一つ一つ地震対策のために各地域にメッシュをかけてこの地域はどのくらいの被害が起きるだろうかということを考えるように、山に関してもメッシュをかけてこの山全体をどういう山にしていきたいのか、そのためには林道なのか作業道なのか、あるいはワイヤーをかけたケーブルがいいのか、そしてそこの植生はどのような形にしていったらいいのか、そうしたことのデザインをきちんとディテールから決める。大きなグランドデザインを描くためにディテールをきちんと大事にして、その中で森林整備や林道や治山事業ということを考えてほしいと言われました。この点も林務部長と共に秋には具体的な計画をたてようと言っています。

 軽井沢も「マンション軽井沢メッソド宣言」というものを軽井沢町の佐藤町長が出しました。これは軽井沢に私たちの長野県も出資をする地域開発公団というものが3階建てのマンションを建てようとしていました。私たちにもさまざまな景観条例やまちづくりの条例があります。軽井沢も同様です。けれども法律は必ずしも完璧ではありません。法律があってもその法律の想定していなかったところを巧みにくぐり抜けようと考える人たちがいます。それは決して法律には違反はしていません。軽井沢町の人たちはマンションがなるべく2階建て以下であることを望んでいました。町長は、観光協会や商工会の人々もそのように望んでいる、けれども法律上、自分たちはその手続きの書類を上げていかねばならないと思っていました。けれどもその時に、もしかして条例を作るために長い年月がかかれば、その間に住民が気がついたものは、住民が一人ひとり望んでいないのにできあがってしまうかもしれない。ならば住民から直接選ばれた首長である町長が「マンション軽井沢メソッド宣言」というものを出そうと。メソッドというのはマニュアルではありません。具体的な哲学を持った方策ということです。ある意味ではそれは徳政令のようにいささか乱暴だという人がいるかもしれません。でもその宣言を出して、ぜひこの町を愛する企業市民であるならば、あるいは組織市民であるならば、その宣言を尊重してほしいということを述べたわけです。地域開発公団もその宣言を知るに至って現在、そのマンションの計画も大幅な見直しをしようとしています。そして大変にうれしいことは、いま軽井沢の多くの町民あるいは固定資産税を払っているけれども住民票は東京にある別荘を持っている人たちの多くが、例えば神奈川県の真鶴町が作っているようにまちづくりの景観条例をはるかに超えた美の条例、建物の高さだけではなくて色合いや屋根の形状や駐車場の位置に至るまで、それはかつてクリント・イーストウッドが市長をしていたカーメルという町がアメリカの西海岸にありますが、この町と同じように住民が、行政側が主導するだけでなく一つのマンションという大きな問題で人々が目覚めて、そして住民が町と一緒になって、いま軽井沢は新しい景観条例を超えたより実効性のある、そしてメソッド、哲学のある美の条例を作ろうとしています。それは私はとてもうれしいことだと思います。

 最後に一つだけこれはお願いというよりもぜひ皆さんも考えていただきたいということがあります。

 先日、安曇野にあるソニーイーエムシーエスという会社の長野テックというところに出掛けました。ここはご存じのVAIOというパソコンやあるいはAIBOという小型のロボットを作っている会社です。多くの正社員の方だけではなく、他の企業から派遣されている方、あるいは契約の方、あるいはパートタイムの方々、その多くの人は大変に若い男性や女性でした。私がその長野テックの代表の方と一緒に工場の中を商工部長と共に歩いていると、多くの人がきちんと会釈をします。そして私が「こんにちは」というと皆仕事の手は動きながらも必ず言葉が出ます。決してそれは上司が言うから、上司に怒られてしまうから「おはようございます」とか「こんにちは」とか「いらっしゃいませ」、あるいは会釈をしているわけではありません。ごくごく自然に人と人が、まさに昨日のサッカーの試合の時に得点をしたら皆が抱き合う、あるいは交代選手として出る人間と一緒にハイタッチで手を合わせてあいさつをしてまたグランドから去る、それと同じようなごく人間としての当たり前のことです。

 信州ものづくり産業戦略会議のメンバーでもある平林さんが営むサイベックコーポレーションという塩尻にある工場へ出掛けたときも同様に皆が決してお仕着せではなく、あるいは何か鋳型の中でとても非人間的にロボットがしゃべるようでもなく、大変に仕事の手は動かしながらも生き生きとした姿であいさつをしました。

 多くの県民の方々が長野県の職員が最近とても良い笑顔をしていると言います。あるいはとても電話の対応もとても柔らかくなってきめ細かくなったとおっしゃってくださいます。これは私にとっては大変な喜びですし、大変な誇りです。けれども私たち自身が廊下を歩いているときは果たしてどうでしょうか。これは限られた私の経験に過ぎないかもしれませんが、廊下を歩いているときに「おはようございます」あるいは「こんにちは」といってもなかなか言葉の出ない方がいます。私が言ったから突然驚いてしまって、言葉がスタックしてしまったのかもしれません。けれどもこの3月に1年間、交流職員として来ていた方々と食事をした時に複数の、市町村から来ている交流職員の方々が「昼休みに地下の売店まで行くときに何人もの人に会って『こんにちは』とあいさつをしてもなかなか職員の人は会釈もしてくれないし、言葉も吐いてくれない。むしろ顔を背けてしまったりする。僕がそんなに変なのかな?と思ったけれどもちょっぴり悔しいから1年間ずっとやってきたけれども。かえって年齢が上の男性の方があいさつをしてくれて若い自分と同じような年齢の職員の人の方が、あるいは仕事に疲れているのかもしれないけれども、会釈や言葉がなかなか出なかったんですよね」ということを言っていました。これは一人の職員の方が言っていたことだけではありません。多くの方がおっしゃっていることです。ぜひ私たちは多くの県民の方から電話の応対が良くなり、そして窓口の対応が優しくなったという言葉を職員相互の中においても廊下を歩いているときでも、トイレで会ったときでも、あるいはエレベーターで会ったときでも、ぜひ心がけるようにしていただきたいと思います。

 my pleasureという言葉を私はよく使います。エレベーターに乗るときに「さあさあどうぞ」というときに、アメリカという国には、私は認めるべきところと首を傾げるところがずいぶんあるとは思いますが、After youといいます。「さあ、お先にどうぞ」ということです。必ずそれに対してThank youというわけですね。その場合、日本だと「いえいえどういたしまして」といって照れてしまいます。それが日本の美徳かもしれません。心の中では「やったー。山田君、よくエレベーターを押さえて私をよく乗っけてくれたね」と上司が言って得点稼ぎと思っているかもしれません。でも英語の表現ではThank youと言われたときにIt’s my pleasureという言葉があります。「私の喜びである。ホテルやあるいは百貨店で見ず知らずのあなたに私の方がそんなに急いでいなかったから、ドアを押さえてさあお先に降りてくださいと言ったのに対してあなたが喜んでくれた」と。あなたが喜んでくれることをこの短い瞬間に見つけられたことこそが私の喜びだ、それがmy pleasureです。

 県民から多くの税金をちょうだいして、その税金があるからこそ私たちはさまざまな県民に対しての事業を行うことができます。そして私たちのお給料もちょうだいすることができるのです。ぜひ私たちのこの職場においても人々が言葉あるいは表情によってあいさつができるような人間の体温が通った、より温かいそしてきめ細かい長野県の県庁にしていきたいと思っています。

 どうもありがとうございました。

 

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