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平成18年6月県議会定例会における知事議案説明要旨
(平成18年6月22日)

 



 私が信州・長野県の県知事に就任したのは、2000年(平成12年)10月26日です。
 改めて申し上げるまでもなく、2004年度(平成16年度)には財政再建団体へと転落不可避の危機的な財政状況が続いていました。既に往時から論壇誌を始めとする県外の表現媒体に於(お)いては、広く認識されていた現実です。
 が、これも又、改めて申し上げるまでもなく、極めて深刻な事態へと陥っているにも拘(かかわ)らず、県当局も県議会も、その後の「『脱・記者クラブ』宣言」で「表現者」と呼称統一された県内のマスメディアも、然(さ)したる危機感を共有していなかったのが実情でした。況(いわ)んや、数多くの県政の領域に関して、インフォームド・コンセント=情報開示からは程遠い状態に留め置かれていた220万県民に於(お)いてをや。
 平成10年度から平成11年度にかけての僅(わず)か1年間で748億円も県債残高が増加していたのです。平成12年度にかけても91億円増加し、県債残高総額は1兆6391億円に達していました。1日の利息支払額は1億4200万円でした。
 不要不急の借金を抑制する。王道なき財政健全化への道を歩み出すことが、私には課せられていました。幸いにして、民度の高さで全国に知られる220万県民の皆様も、現実を直視し、財政を健全化してこそ、少子社会・高齢社会のフロントランナーたる信州・長野県が持続的な地域社会=リージョナル・コモンズたり得るのだ、と有り難くもインフォームド・チョイス=情報選択して下さいました。
 こうした県民各位のご理解とご協力の下、借入超過から返済超過へと、平成12年度から転換しました。県債発行額よりも県債償還額を多くしたのです。基礎的財政収支=プライマリーバランスの黒字化です。本年度の当初予算も含めれば7年度連続、プライマリーバランスは黒字を達成しています。因(ちな)みに、2010年代の早い時期にプライマリーバランスの黒字化を実現したい、との目標を政府が掲げる日本全体では、今も1時間に66億円と加速度的に借金が増加し、特別会計等も含めれば既に1000兆円を超えて世界一の借金大国となっています。
 本県は、平成13年度に55億円、平成14年度に2億円、平成15年度に178億円、平成16年度に312億円と、県債残高の減少に努めてきました。而(しか)して、平成17年度決算の見込みに於(お)ける県債残高は、前年度末から更に376億円減少し、平成12年度から平成17年度までの丸5年間で累積債務は計923億円の減少を達成しました。平成12年度から平成16年度までの間、東京都を除く他の45道府県では、起債残高が増大しており、本県は全国で唯一、平成12年度から連続して減少させています。
 加えて今回の決算見込みでは、平成元年度以来、16年振りに財政調整のための基金取崩額をゼロとし、一般会計の実質収支で42億円余の黒字を確保しました。この結果、財政調整及び減債基金の残高は前年度末の決算剰余金を繰り入れ、平成16年度の357億円に15億円を上積みし372億円となりました。世間一般の「ゼロ金利」には連動せず、起債時と殆(ほとん)ど変わらぬ金利で返済せねばならぬ制約も勘案すれば、信州・長野県の改革に期待して下さる全国各地の国民に対し、220万県民が少しく胸を張れる成果です。
 2003年(平成15年)2月に最初の「財政改革推進プログラム」を策定した際、私たちは包み隠さず、敢(あ)えて衝撃的な数値を示しました。それは、財政赤字が平成16年度には340億円に達し、即(すなわ)ち財政再建団体転落ラインの250億円を遙(はる)かに超える状況に陥る、との予測です。加えて、平成17年度には赤字額が564億円に達する予測も明らかにしました。
 徒(いたずら)に危機感を煽(あお)り立てている、と議場に於(お)いても数々のご批判を頂戴(ちょうだい)した記憶が蘇(よみがえ)ります。けれども、北海道の夕張市が巨額の負債を抱え、財政再建団体指定申請を行う、と報じられる昨今、繰り返しますが、県債残高を5年連続で減少させ、プライマリーバランスを7年連続で黒字化し、平成17年度決算では基金を取り崩さずに42億円余の黒字を確保するに至った、この間の努力は決して無駄ではなかったのです。
 平成17年度決算見込額に於(お)ける県税収入は平成16年度に引き続き、景気の回復を反映して法人二税が増収となった結果、前年度比で2.3パーセント程度上回り、歳入の構成比でも1.4ポイント増加し、24.3パーセントとなりました。
 平成16年度に17.4パーセントとピークを迎えた起債制限比率も、平成17年度には16パーセント台に低下し、今後、平成18年度に15パーセント台、平成19年度に13パーセント台、平成20年度に12パーセント台へと大幅低下する見込みです。県債残高も、中期財政試算を前提として、毎年300億円から400億円の規模で減少する見込みです。
 が、油断は禁物です。本年度も県税収入は若干の増加が期待されるものの、「三位一体の改革」なる惹句(じゃっく)の下に、中央政府の財政破綻を先送りし、地域社会=リージョナル・コモンズを破壊する悪影響を受けて、地方交付税の大幅削減が想定され、一般財源の確保は依然として困難な状況が見込まれます。県民各位の深いご理解とご協力の下、前述の如(ごと)き前人未到な努力を重ねても、平成21年度には財政再建団体に転落する可能性も排除し得ぬ、厳しい予測から目を逸(そ)らすことなく、引き続き、歩まねばならぬのです。

 昨年12月27日に、職員労組4団体で構成される地公労共闘会議(長野県地方公務員労働組合共闘会議)に対し、給料の調整額・諸手当をゼロベースで見直しさせて頂きたい、と申し入れました。総合愛情産業、総合奉仕産業としての長野県庁の一員として県民サーヴィスに従事する私たちは、ゼロ予算事業の拡充、ゼロベース予算の導入に留(とど)まらず、本県が存在し続けてこそ、県民の皆様に奉仕し得るのです。
 職務内容に応じて給与を上乗せする給料の調整額は、賞与や退職金にも連動します。私自らも交渉に参加させて頂き、5月31日の未明に合意へと至りました今回の見直しでは、この給料の調整額99区分の内、40区分を廃止し、52区分を賞与や退職金に連動しない特殊勤務手当へと振り替えることとなりました。
 既に2月16日の交渉で、給与構造改革に伴う給与制度の改正、公務員特有の制度であった「わたり」の是正、更には職員互助会に対する県費補助金の廃止等の福利厚生制度の見直しが合意され、4月1日から実施しています。今回の見直しでは、へき地手当を始めとする諸手当に関しても、抜本的な見直しを行わせて頂きました。
 なお、団塊世代の退職金にも反映される今回の抜本的見直しで、初年度に当たる平成18年度は24億円、平成20年度には63億円、平成21年度には86億円の支出削減が齎(もたら)されます。財政健全化に留(とど)まらず、県民サーヴィスの充実にも寄与する「苦渋の決断」を、パブリック・サーヴァントとしての高い使命感に基づき、受け入れて下さった組合員の方々に、この場で改めて感謝申し上げたく存じます。

 6月10日から13日まで4日間の旅程で、台湾を訪問し、長野県内の酒蔵7社の皆様とともに、「長野県原産地呼称管理制度」に認定された信州・長野県の日本酒を中心としたプロモーションを行ってまいりました。高雄市に位置する大統(だいとう)百貨和平(わへい)店や大楽(だらーず)民族店では、イベント会場を埋め尽くした多くの皆様の熱烈な歓迎を受け、100万都市である台中市を中心として広くスーパーマーケットを展開する裕毛屋(ゆうもうや)では、早速(さっそく)、高原野菜、信州りんごを本格的に扱っていただける運びとなりました。これらの様子は、テレビ、新聞で台湾全土に連日大きく報じられました。
 また、彰化県(しょうかけん)及び台南市の幹部の方々と、観光や物産を通じた相互交流に関し、積極的な意見の交換を行い、日本の外務大臣に当たる台湾の黄志芳(こうしほう)外交部長との会談では、信州まつもと空港へのチャーター便の9月就航に向け、本県との間で連携を強化することで合意しました。
 併せて、日本の文部科学大臣に相当する杜正勝(と まさかつ)教育部長ともお会いし、台湾と信州の中高校生の修学旅行による交流について懇談いたしました。平成17年度に信州を訪れている台湾の高校生は25校、600余名に上ります。「たとえ十数人の小さな修学旅行であっても、八ヶ岳山麓や南信州の山間の宿まで飛んできて、きめ細かく対応して頂ける」と、信州・長野県観光協会の取組に対して、有り難い評価を頂戴(ちょうだい)し、更なる交流の推進を約束いただきました。

 6月1日から8月31日までの3か月間、多くの旅慣れたエグゼクティブから高い評価を受けるANA 全日本空輸の国際線のファーストクラスとビジネスクラスで提供される和食に、信州の食材を使った郷土食料理が登場しています。久保小七郎(こしちろう)専務との直接交渉を経て、「信州の豊かで美味しい食材」が広くアピールされることとなりました。小川村のおばあちゃんが作る「おやき」や、県の畜産試験場で開発され、飯綱町で手間(てま)隙(ひま)かけて育てられた「しなの鶏」や、よい水、豊かな土壌、恵まれた気候の中で生産された長野県原産地呼称管理制度認定米である東御市のコシヒカリなど、基本的にすべて信州の食材によるものとなります。6月4日、軽井沢にてフランス食品振興会(SOPEXA)と連携する形で開催した「ハッピーアペリティフIN軽井沢」の会場で、今回の機内食をお披露目しました。

 垂直依存のピラミッド型社会から、水平協働のネットワーク型社会を目指し、県内各地で地域づくりを自律的に志す県民の創意工夫に富んだ脱物質主義的な取組を支援する「『信州ルネッサンス革命』推進事業(コモンズ支援金)」も、2年目を迎えました。昨年度は、子どもたちの登下校を見守る為に、村のお年寄りを中心に手づくりで設けた「ふるさと交番」、田直し・道直しの身近な取組まで540件の事業を採択いたしました。
 平成18年度は、昨年度の287団体を大きく上回る398団体から、839件の事業申請を頂戴(ちょうだい)しました。5月初旬までに一次採択分として、花や緑に包まれた「信州・長野県」に相応(ふさわ)しい郷土の「景観」や「眺望」を守り、育(はぐく)んでいく住民主体の取組や、障害を持つ方々が事業を通じて地域住民とふれ合う中で自律し、地域への貢献を目指す取組など507件、総額7億4千万円余の事業を採択しました。

 予算がなければ事業はできないという従来からの「常識」を捨て、県職員が自ら市町村や県民の中に飛び込み、汗をかき、智恵(ちえ)を出し合う「ゼロ予算事業」は、「年間予算の3割を占める人件費こそが最大の事業費」、「お金をかけないからこそ知恵と力が結集できる」という前向きの思考の下、平成15年度から平成17年度までの3年間で計568事業を実施してきました。
 平成18年度は、「手づくり」、「手渡し」、「手弁当」をキーワードに、信州での田舎(いなか)暮(ぐ)らしを希望される他の都道府県にお住まいの方々に対して、バトラー・サーヴィスの精神で対応する「田舎(いなか)暮(ぐ)らし案内人」、食のありがたさや命の尊さを子どもたちに伝えたいと食肉衛生の現場で感じた一人の県職員の熱い思いに幾人ものスタッフが共鳴し、製作した手づくりDVDを全国に届ける「ブタさん、いのちをありがとう」全国発信大作戦など、243事業を予定しております。5月1日にスタートした「田舎(いなか)暮(ぐ)らし案内人」の元には、開始から1か月余りの間に30件を超える相談が寄せられております。
 信州発の新しい発想として、全国各地の自治体から注目を集めるゼロ予算事業を、より一層推進いたします。

 また、少子・高齢、人口減少などを背景に、多様化する地域の課題や喫緊の課題に、迅速にきめ細かく対応するため、平成17年9月に公表した組織再編案の趣旨を踏まえ、4月に組織改正を行いました。今回の改正では、地方事務所に「地域改革推進担当」を置き、各地域の課題に幅広く対応すると共に、「環境森林チーム」を設置して、環境保全、森林づくり、土地改良事業を一体的に所管し、真に豊かな地域づくりを進めております。本庁舎では、24億円に上る個人県民税の未収金に対応するべく、「県税収納推進センター」を設置し、市町村職員と協働して徴収業務に当たっております。また、チームワークの意識やコミュニケーションの強化を図りつつ、既成の概念にとらわれることなくサーヴィスの充実に取り組むため、現地機関、本庁舎ともに「課制」「係制」を廃して、「チーム制」「ユニット制」を導入しました。

 治水・利水対策について申し上げます。
 浅川の治水対策に関しては、既に砥川、上川に於(お)いて正式に国土交通省の認可を受け、他の諮問河川でも着実に進んでいる、「ダムを造らない新しい治水対策」を実現するべく、現在、国土交通省関東地方整備局とともに、精力的に河川整備計画を吟味しています。併せて、関係する地区の皆様への説明会を開催し、忌憚(きたん)なきご意見を頂戴(ちょうだい)しながら、相互理解に努めております。
 この河川整備計画では、今後20年間に実施する河川改修、遊水地、既存ため池の活用により、浅川流域の過去の大雨による洪水を完全に流下させることが可能となります。更に、次期計画に放水路を加えることにより、将来目標である治水安全度100分の1を達成いたします。
 旧ダム計画では解決できなかった内水氾濫(はんらん)に対処するため、ポンプの増強、二線堤(にせんてい)、遊水地を設置することにより、過去最大の被害を齎(もたら)した昭和58年9月と同規模の出水に於(お)いても、床上浸水被害を防止し、国土交通省と同レベルの安全確保を達成いたします。
 流域協議会や住民説明会で頂いたご意見、ご要望の多くは、「ダムを造る施策」ではなく、「水害をなくし、安全で安心して暮らせる施策」です。
 上流から下流まで、沿川(えんせん)それぞれの地域において、自地域のみならず他地域をも慮(おもんばか)り、正に新河川法の精神に則(のっと)って、真の安全、安心とは何かを真摯(しんし)に議論される流域の皆様の願いを具現化すべく、新しい治水施策に一日も早く着手するための河川整備計画の早期認可を実現してまいります。

 最近の経済動向及び雇用情勢です。
 国内経済の状況を見ますと、企業収益が改善し、個人消費も緩やかに増加していることから、原油価格の動向が内外経済に与える影響に留意する必要があるものの、今後も国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれております。県内経済についても、産業機械向け及び自動車向けの生産が高水準で推移し、IT関連財も着実に回復しており、緩やかながら着実な回復が続いております。4月の有効求人倍率は1.17倍で、昨年9月から8か月連続で1倍を上回り、全国の中で高い水準を維持しています。
 雇用の確保及び地域経済の発展を目的とした、「信州ものづくり産業投資応援条例」に基づく環境配慮型企業投資応援助成金を、計13の企業を対象に今まで認定しております。この助成金を活用頂き、459億円の設備投資が実施され、361人の新たな雇用が見込まれています。   
 今回提出の一般会計補正予算案その他の案件に関し、その概要を申し述べます。
補正予算案は、一般会計56億4844万3千円、特別会計1億5857万3千円、企業特別会計6億1760万円です。
 先の2月県議会定例会で私は、日頃から自律的に努力されている県民の皆様の前向きな活動を応援するべく、本県独自の減税と奨励金による支援を積極的に検討する旨の提案を行いました。その後、広く県民の方々からもご意見を募集した上で、今回、信州に「安全・安心・安定」を齎(もたら)す取組を応援するべく、以下ご説明する3つの新たな奨励制度に取り組みます。
 一つ目として、全国に先駆けて創設した「『安心、安全、正直』な信州の温泉表示認定制度」の普及と、消費者の視点に立って自ら温泉情報を提供しようとする温泉事業者を応援する観点から、認定制度への申請に当たって必要となる検査費用への支援と、認定された温泉であることを表示した看板等を認定施設に提供します。こうした一連の支援を通じて、お客様から一層信頼される信州の温泉を目指します。
 二つ目として、消費者の皆様に安全・安心な信州ブランドの農産物をお届けしようとの観点から、化学合成農薬や化学肥料の使用量を従来よりも50パーセント又はそれ以上削減する「レス50」、「レスザン50」栽培や、有機農産物栽培に積極的に取り組む農業者を支援します。加えて、消費者の皆様が「レス農産物」をご納得してお買い求め頂けるように、生産する「ほ場」や販売店に於(お)けるPRを推進してまいります。
 三つ目として、信州産の安全・安心で美味(おい)しいお米を使用した「米(こめ)粉(こ)パン」を子どもたちが味わえる学校給食への支援です。3年後には県内全ての小・中学校及び自律学校への普及を目指します。地産地消の推進に加え、米の消費拡大を図ります。
 次に、健やかな暮らしの提供についてです。他県同様、本県でも医師不足は極めて深刻です。地域医療に心を砕く信頼できる医師の確保を目指し、今年度から新たに医学生修学資金を創設し、貸与を希望する医学生を募集したところ、県内外から定員を遙(はる)かに上回る応募を頂きました。県内の医療施設で従事を希望する熱意に応(こた)えられるよう、貸与定員を全国最大規模にまで増やした上で厳正な審査を行い、支援するに相応(ふさわ)しい医学生に対して修学資金を貸与します。
 これから申し述べる内容に関し、冷静に耳を傾けて頂きたく思います。
 誇り高き220万県民が集う信州・長野県は今、存亡の危機に直面しています。エイズ(AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome:後天性免疫不全症候群)患者及びHIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)感染者の報告数の人口10万人に対する割合は過去3か年平均で、大阪府や神奈川県、愛知県を遙(はる)かに上回り、東京都に次いで全国ワースト2位なのです。全国平均の1.6倍です。
 が、恐れてはいけません。“有為転変”するウイルスであるHIVを根治することは難しくとも、感染した初期段階で対応したなら、現在の医療では半永久的に発病を防ぐことが可能です。しかし、一旦発病したなら、残念ながら手遅れなのです。即(すなわ)ち、感染した後の潜伏期間に判明させ、対処することが極めて重要なのです。
 本県のHIV感染者報告数は2005年(平成17年)、全国28位でした。他方で、エイズ患者報告数は2005年(平成17年)が全国ワースト3位、2004年(平成16年)はワースト1位なのです。それは、概(おおむ)ね10年前後と言われる潜伏期間を経て、発病後に初めて医療機関に駆け込む県民が圧倒的であることを示しています。
 加えて、発病者を含む本県に於(お)ける感染原因の79パーセントは異性間の性的接触なのです。国家的犯罪だった血液製剤に因る感染、或(ある)いは同性間の性的接触に因る感染とは比較にならぬ割合です。即(すなわ)ち、本県に於(お)けるエイズ問題とは最早(もはや)、一部の人々の問題ではないのです。
 さらに本県では、判明しているHIV感染者の中で日本国籍の方が占める割合は3分の1であるのに対し、既に発病したエイズ患者の中で日本国籍の方が占める割合は65パーセント、全体の3分の2に達しているのです。即(すなわ)ち、早期発見の検査機会を逸(いっ)し、残念ながら根治の可能性は無きに等しい状態の中で闘病生活を送る、それも長野県で生まれ育った県民が数多く存在するのです。ごくごく普通の、恐らくは気立ても良く、親切で優しく、仕事や勉学に励む、あなたの周囲の隣人であったりするのです。彼等や彼女等は潜伏期間中に、愛する家族や恋人や友人や、或(ある)いは母子感染を通じて未来の子どもにも、負の連鎖を与えてしまっているかも知れないのです。
 一連の数値は、何を物語っているでしょうか? 
 SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)を始めとする感染症の専門病棟を擁する県立須坂病院の担当部長は、語ります。「HIVが猛威を振るうアフリカでの最初の状況と酷似している」と。
 私たちは、この現実から目を背けてはいけません。これは、信州人に与えられた試練なのです。従来の差別意識と似通った「排除」の発想では乗り越えられません。共生の意識を抱くと共に、早期発見で発病を防げる、まさにリビング・ウイズ・エイズの時代に生きる信州人として、HIV並びにエイズに対する正確な知識を共有し、一人でも多くが検査を受ける“県民運動”を展開すべき、と考えます。
 県内全ての保健所と県内8か所のエイズ治療拠点病院で、無料・匿名のHIV迅速検査を実施します。県民各位が冷静に現実を受け止め、エイズ及びHIV感染の予防と蔓延(まんえん)の防止にご協力頂けることを願っています。
 去る5月、ポジティブリスト制度が施行されました。これは、食品中に残留する農薬、動物用医薬品及び飼料添加物に関し、農薬等が一定量を超えて残留する食品の販売等を原則禁止するものです。本制度に伴い、食品中に残留する農薬等の規制が強化されました。新たな基準値や対象農薬の増加に対応するべく、環境保全研究所に高精度のガスクロマトグラフ・質量分析計を整備し、食品の安全性を確保してまいります。
 情報基盤の整備です。信州・長野県で暮らす県民が、デジタル・ディバイド(情報を持つ者と持たない者との格差)を抱えることなく、等しく情報を享受できる環境の整備は、県民としての一体感の醸成に留(とど)まらず、地域の特性を育(はぐく)む上でも引き続き取り組むべき課題です。木曽広域連合が当初計画を前倒しして実施するケーブルテレビ施設の整備。天龍村が実施する携帯電話用鉄塔施設の整備。これらの事業を、国の助成制度と連携し、支援します。
 教育施策の充実です。障害のある子どもたちの「社会の一員として働きたい」という思いを実現し、民間企業への雇用の拡大を図る必要があります。就業支援フェアの開催に留(とど)まらず、自律学校教員のスキルアップ、職場実習中の現場に於(お)ける支援の充実や、学校の教職員が職場開拓のための企業回りを行い、自律学校卒業生の社会進出を応援する施策を総合的に展開します。
 松本青年の家、小諸青年の家は、去る3月末日で県による運営を終了し、施設は閉所後、それぞれ松本市と小諸市に譲与します。両施設は建築から既に30年余を経過しており、後利用のためには施設の改修が必要です。新たに管理する両市が行う施設改修に要する経費について支援をします。
 地球温暖化対策の推進に関し、3月30日に長野県地球温暖化対策条例を公布しました。条例では、県が率先して再生可能エネルギーの利用を推進するための必要な措置を講ずるものとされ、省エネルギー型の施設や設備を積極的に導入するとの目標を掲げています。これを踏まえて、須坂病院で行われている大規模改修に併せて、太陽光発電システムを導入し、より具体的に地球温暖化防止の取組を実行します。
 生活交通の確保です。5月30日に長野以北並行在来線対策協議会が設立されました。新幹線の建設に伴い全国各地で経営分離される並行在来線の多くは、自律的な経営の維持が極めて困難な路線です。こうした問題を抱えるのは、長野以北の現信越本線とて例外ではありません。2014年度末に予定される経営分離後を見通す上でも、協議会が実施する長期需要予測等の調査経費を負担します。
 人件費に関し、説明を加えます。平成18年度当初予算では、地公労共闘会議に当初提案した内容に基づく所要額を減額して計上していました。先ほど申し上げました関係職員団体との交渉結果等を踏まえ、給料の減額措置の提案取り下げによる所要額16億円余のほか、わたりの是正、諸手当の見直し、更には2月県議会定例会に於(お)ける議員提案での条例修正に伴う特別職報酬等の所要額を合わせて55億円余を計上しています。
 このほか、合併した市町村に対する交付金、県立総合リハビリテーションセンターに於(お)ける訓練機能の強化、交通信号機の増設等に要する経費を計上いたしました。
 以上申し上げました一般会計補正予算案の財源として、県税10億8506万円、国庫支出金9億4329万5千円、繰入金15億円、繰越金20億9259万1千円、諸収入849万7千円、県債1900万円を見込み、計上いたしました。
 本年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと、8306億592万4千円となります。
 特別会計補正予算案は、流域下水道事業費特別会計に於(お)ける、企業債の借換えの経費を計上しました。
 また、企業特別会計補正予算案は、病院事業会計など3会計であり、関係職員団体との交渉結果等を踏まえた人件費及び企業債の借換えのための経費等を計上しました。

 次に、条例案は、一部改正条例案10件です。
 「一般職の職員の給与に関する条例の一部を改正する条例案」は、職員の諸手当に関し、勤務実態や社会情勢等を踏まえて抜本的な見直しを行うべく、現在支給されている19の特殊勤務手当の内の7つの手当を廃止し、農林業改良普及手当等についても、所要の改正を行うものです。
 また、「信州に安全・安心・安定をもたらす県民を応援する県税の特例に関する条例の一部を改正する条例案」は、信州・長野県に安全・安心・安定をもたらす取組を積極的に行う県民を応援するため、環境負荷の少ない自動車について、県独自の自動車税の軽減策を講じるほか、所要の改正を行うものです。

 事件案は、交通事故に係る損害賠償を始め、計9件です。
 人事案は、空席となっております教育委員1名と、任期満了に伴う公安委員1名の選任に関してです。
 教育委員は、上田市に位置するNPO法人侍学園スクオーラ・今人(いまじん)で理事長を務める長岡秀貴(ひでたか)氏であります。管理教育の中で自分の居場所を見付け出せずに悩む多感な青少年が目を輝かせて集う時空を塩田平の地に設けた長岡氏の実践活動は、国に於(お)いても高い評価を受けています。今年度、厚生労働省の委託事業「若者自立塾」の塾長に任命されています。
 公安委員は、長野市に位置する中央タクシー株式会社で代表取締役社長を務める宇都宮恒久(つねひさ)氏であります。タクシー業界の近代化に尽力されてきた宇都宮氏は、長野日本大学中学・高等学校同窓会長でもあります。
 お二方共に、県民益の更なる充実に向け、献身的に寄与して頂けるものと期待しています。

 専決処分等の報告は、平成17年度長野県一般会計補正予算の専決処分報告など計16件です。

 以上、今回提出の議案に関して説明申し上げました。ご審議の上、ご議決をお願い申し上げます。

 最後に、この8月31日で県知事二期目の任期を迎える私 田中康夫の、信州・長野県を想(おも)う気持ちを暫(しば)し、述べさせて頂きたく存じます。
 昨年度の医療費の速報値が昨日、国民健康保険中央会から発表されました。全国の高齢者1人当たりの医療費は前年度を3万円近くも上回る81万9千円余に達しています。こうした中、日本列島の背骨に位置し、数多(あまた)の水源を擁し、森林面積が8割近く、農家戸数が日本で一番数多い信州・長野県は引き続き、全国47都道府県で最も低額の67万4千円で推移しています。最高額の福岡県は101万4千円。約1.5倍の違いです。
 信州・長野県は、既に少子高齢化社会から少子社会・高齢社会へと突入したニッポンの“輝ける星”なのです。
 改めて申し上げるまでもなく、高齢者の就業率も女性の就業率も、共に全国第1位です。生涯現役で、生きる悦(よろこ)びを日々、実感する信州人の平均寿命は、男性が全国第1位、女性も全国第3位です。
 日本茶を愛飲する議論好きな信州人は、豚肉や鶏肉を好んで食する県民でもあります。無論、野菜や果物にも恵まれています。県下一円に出店しているスーパーマーケットのデータに拠(よ)れば、金額ベースで豚肉が43パーセント、鶏肉が40パーセントを占めています。同じく長寿県の琉球・沖縄県民が、豚肉と鶏肉を、そしてゴーヤに代表される野菜を多く摂取するのと似通っています。加えて、全県的な減塩運動、食生活改善運動が、功を奏しました。
 図らずも県議会から不信任決議を受けて一期目の途中で失職し、再選を経て今日に至るまで、全国4番目の面積を誇る県内各地を訪れ、数多くの老若男女と言葉を交わす度、私は感じ入るのです。その誠実で勤勉で向上心に溢(あふ)れる信州人の心根に。而(しか)して、その県民が生まれ、育(はぐく)まれたのは、急峻(きゅうしゅん)なれど物さわなる信州・長野県の類(たぐ)い希(まれ)なる山河が存在したればこそなのだ、と。
 私たちは、コモンズの共有財産としての信州の山河を、これから生まれ来る未来の県民、国民のためにも、護(まも)り育(はぐく)まねばなりません。それは、信州に暮らす者に課せられた、誇るべき責務なのです。公共事業の 進め方、税金の用い方を今や超えて「『脱ダム』宣言」が語る精神は、脱物質主義の21世紀に生きる私たちが歩むべき社会の在り方そのものなのだと考えます。
 誇るべき県民と共に、誇るべき山河を護(まも)り育(はぐく)み、持続的な信州・長野県を更に確たる物とすべく、県民の皆様からの信託を8月6日の投票日に頂戴(ちょうだい)したなら、「信州から日本を変える」と5年8か月前の知事就任当初に申し上げた気概を抱き続け、サーヴァント・リーダーとして県政改革を担わせて頂きたく存じます。
 「マニフェスト」を日本で一番最初に掲げたのは、出直し知事選に於(お)ける私であった、と過分な評価を下さったのは、元三重県知事の北川正恭氏です。
 想(おも)えば、この間にゼロ予算事業を含めて事業化してきた、又、今後も更に押し進める数限りなき施策は、何(いず)れもマニフェストの成果であり、目標です。無論、総合愛情産業、総合奉仕産業に従事するパブリック・サーヴァントとしての意識に覚醒(かくせい)し、献身的働き振りを見せてくれた多くの職員が存在したればこその改革です。
 その貢献に感謝し、世界的な経済学者として知られる宇沢弘文氏を始めとする6人の碩学(せきがく)が纏(まと)めて下さった「未来への提言 コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」を拳々(けんけん)服膺(ふくよう)し、着実に迅速に改革の道程を歩みます。信州型木製ガードレールを始め、今までに県議会へご提案申し上げた予算、条例等も、それらは全(すべ)て今後も実現すべきマニフェストです。市町村との水平協働の精神に則(のっと)り、共有財産である水と緑と土と空気を護(まも)り育(はぐく)むべく県議会に上程中の「廃棄物の発生抑制等による良好な環境の確保に関する条例案」も、その一つです。
 この山河、この暮らしを育(はぐく)み、未来へ。誰もが誇らしく語れる、信州・長野県をさらに。
 その自然を愛(め)でるべく、国内、国外からも数多くの方々が訪れて下さる信州・長野県の知事として奉仕させて頂く人生を、私に与え、支えて下さった全(すべ)ての方々に感謝を申し上げます。
 

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