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最終更新日:2004年2月27日

 

平成16年2月県議会定例会における知事議案説明要旨


 

 本日ここに、平成16年度当初予算案を初めとする信州・長野県の重要案件に関する御審議の機会を得ました。220万県民の代表たる皆様の御出席に、心より感謝申し上げます。
 提出議案の説明に先立ち、新年度の県政運営に向け、私の所信をお話しさせていただきます。

 

 平成16年(2004年)年初の職員に向けての挨拶で、「現在の長野県という名称を、『信州』に変更しよう」と、私は述べました。
 私たちが暮らすこの自治体は、ご存じのように、「長野県」という名称に加え、「信州」あるいは「信濃」と三つもの名称が存在し、それらは何(いず)れも多くの方々の間で認知され、そして評価もされているという、全国的にも類を見ない地域であります。
 そして、南北に長く、全国4番目の広さを誇るこの自治体には、220万人の大変に向上心に溢(あふ)れた方々がお住まいでいらっしゃる。と同時に、この地を愛し、訪れて下さる年間1億人にも上る国内外の方々は、多くの観光パンフレットが表記するように、「信州」の安曇野であったり、「信州」の善光寺平、あるいは「信州」の軽井沢、上高地、伊那谷という言葉の響きに魅力を感じて下さっているのだと思います。
 1月21日付けの毎日新聞は、第1面下の「余録」欄で「廃藩置県で3府302県が置かれたのは1871年(明治4年)、現行制度がほぼ整ったのは1888年(明治21年)。「県」とは明治政府の地方統治機関だ。「県」が管轄する区域も県の名で呼ばれた。県名より先に県庁名があったのだ。旧国名は歴史をさかのぼる。官僚による新県名の押しつけは、多くの人々を歴史から切り離した。近代が持つ野蛮さのひとつの例だ。宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」は名前を取り戻す物語でもある。湯婆婆(ゆばーば)は千尋から名前を取り上げることで千尋を支配した。千尋は名前を取り戻すことで自由を回復した。」と指摘しております。
 信州・長野県は、お節料理の年取り魚が、中南信地域では鰤(ブリ)、東北信地域では鮭(サケ)であるように、それぞれに異なる風土、気質(かたぎ)、習慣の地域で構成されている自治体なのです。905年、藤原時平を中心に編纂 (へんさん)が始まった延喜式と呼ばれる律令格式(りつりょうきゃくしき)の中でも「信州」には10郡が置かれたと記され、江戸時代にも10藩が割拠した私たちの地域は、長いものには巻かれない、との良い意味での反骨精神に満ちた歴史を有します。中央集権の富国強兵ではなく、地方分権の経世済民を目指す「信州」は、平安時代の昔から“自治共和国”として存在してきたのです。私は、歴史ある「信州」という名称こそが、この土地に住まわれている意欲ある方々の心の拠 (よ)り所であり、この名称を使うことを通じて、明治以来の中央政府により奪われた名前を取り戻し、この地に暮らす私たちの自己同一性(アイデンティティ)をつなぎ止め、より確かなものとすることが可能であると考えています。
 去る2月10日には、中長期的なビジョンとして、「未来への提言〜コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命〜」を総合計画審議会からご提示いただいております。
 改めて申し上げるまでもなく、真に豊かな社会を目指すとき、その中心に置かれるべきは、「一人ひとりの市民」であり、その人々が暮らす「地域」であり、地域や人々の絆 (きずな)で結ばれた「コモンズ」であります。コモンセンスとも同根の「コモンズ」と言う言葉をあえて私どもが使うのは、地域にある伝統的なもの−例えば「入会(いりあい)」や「結い(ゆい)」といったもの−を出発点としながらも、さらにひろがりのある社会−コミュニティを、すなわち、閉鎖的、因習的なものでない、単に過去に戻る復古ではなく、いわば未来志向としての温故知新 (おんこちしん)とも呼ぶべき地域のありようを想定しているからであります。「コモンセンス」とは、因習や風習の鋳型(いがた)の中に人々を押し込めがちな「常識」ではなく、一人ひとりの良心に基づく「良識」を意味します。
 「信州」という言葉も、同様であります。未来志向の県民のアイデンティティを取り戻す拠(よ)り所なのです。昭和60年(1985年)3月、冬季オリンピック招致を提案する代表質問が県議会で行われ、「積極的な取組みをしたい」と往時の県知事が表明し、「開催地を巡って、県内都市間の争いにならないよう県、県会の対応が大事だ」と付け加えた翌日に当たる3月5日付の信濃毎日新聞は、「九六年冬季五輪の信州招致、県、正式に支援表明」と第一面で見出しを打っています。「信濃」でも「長野」でもなく、まさに「信州」なる呼称の下に県民総参加の気運醸成を確立し、世紀の祭典を実現しよう、との心意気の現れです。
 「コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」とは、これまで、ややもすれば軽んじられ、損(そこ)なわれてきた地域の「大切なもの」を自分たちの手に取り戻し、守り育 (はぐく)んでいくことを通じて、真に豊かな社会を未来に向かって創り出していこうとする運動であります。それは、中央集権的な政策から、地域に軸足を置いた「コモンズ」を中心とした地域からの政策の流れへと変え、地域の再生を図ることであり、信頼で結ばれた自律的な人々の活動により、協力社会を創造していくことであります。そして、それは人間性を回復させ、美しい自然を取り戻し、この信州の地に優れた文化を育み、新たな経済の発展を生み出していくことでもあります。
 知事を務める私をはじめ、公僕として県民に奉仕する県職員一人ひとりが、信州に暮らす私たちの「大切なもの」を育(はぐく)む原動力となり、意欲に溢(あふ )れる県民とともに「コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」を推し進める。このたび議会の皆様に提案させて頂く議案の数々もまた、私どもの決意の第一歩であります。

 

 さて、最近の国内の経済動向に言及いたします。
 日本経済は、世界経済の回復を背景に、徐々に企業収益が改善し、設備投資と輸出が伸びたことに加え、個人消費も持ち直していることから、民需を中心とした緩やかな回復を見せるに至りましたが、一方で、依然として緩やかなデフレの中にある状況でございます。県内においても、輸出が増加し企業の設備投資も緩やかながら持ち直しているところですが、他方で、個人消費は引き続き弱い動きとなっており、また、雇用面では、有効求人倍率が上昇しているものの、雇用所得は未だ低水準で鈍い動きとなっております。
 このような状況下、国会において審議されている平成16年度の国の予算案を見ますと、税収は、税源移譲による影響があるにもかかわらず、前年度に比べ0.09パーセントの減少に抑えられておりますが、一方で、公債発行予定額は、昨年度に引き続き30兆円を大きく超える36兆5,900億円で、公債依存度も過去最悪の44.6パーセントの水準となっており、我が国の財政状況が依然として厳しい状況であることに変わりはありません。
 また、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方に関する、いわゆる「三位一体の改革」が予算案に反映されておりますが、国庫補助負担金の廃止・縮減等は1兆円にとどまるとともに、地方への税源移譲は、一部の国庫補助負担金について国の所得税の一部を地方へ譲与するほか、特例的な交付金により財源措置が講じられるといった暫定的なものとなっております。その一方で、来年度の地方財政計画において歳出の徹底的な抑制が図られ、地方交付税については、交付税の一部が振り替えられた臨時財政対策債と合わせ、前年度に比べ12パーセントもの急激な削減が行われております。
 こうした中にあって、平成16年度の本県の歳入状況は、まず、税収については、法人関係税が増収となる一方で、個人県民税等の落込みにより、総額では1,975億円、前年度に比べ26億円、1.3パーセントのマイナスとなる見込みであります。また、税源移譲による増収分が59億円程度と見込まれるのに対し、地方交付税は、臨時財政対策債を加えても2,750億円にとどまり、前年度に比べ287億円、9.5パーセントのマイナスになると見込まれております。こうしたことにより、約370億円もの大幅な財源不足が生じており、本県は未曾有の財政危機に直面していると言わざるを得ません。
 私は就任直後から、本県は極めて厳しい財政状況である、との認識を抱き、平成15年(2003年)2月に財政改革推進プログラムを策定し、これに基づき、歳入、歳出両面にわたる大幅な見直しを行ってまいりました。仮に、こうした改革への取組みが行われていなかったとすれば、来年度には約670億円にも及ぶ財源不足が見込まれたところです。今回、同プログラムによる事務事業の見直し、投資的経費の削減、人件費の削減等の取組みを引き続き推進することに加え、さらに、寒冷地手当の全額減額、事務的経費の徹底した見直しなどを行うことにより、財源不足を約280億円まで圧縮いたします。残る不足額については、基金からの取崩しで対応いたします。
 なお、県債残高については、新規の発行を抑制してきた結果、残高のピークを越え、平成16年度末見込では1兆6,254億円と、県債残高は平成15年度末に比べ271億円減少する見込みでございます。

 

 ところで、今回の地方交付税等の減額による多額の財源不足の発生には、本県のみならず、全国の地方公共団体が等しく直面しているところであります。
 私たちは昨年6月、全国の都道府県に先駆けていち早く、補助金削減の提言を行いました。時代の実情に即さなくなった補助金を具体的に列挙し、県としては1,290億円、全国では9兆円規模の補助金削減を行い、その分を税源移譲すべきであるとしました。その後、私たちの提言に触発される形で、他の幾人かの知事も同様の提案を行うに至りました。
 にもかかわらず、自由民主党、公明党の連立政権である小泉純一郎内閣は、国庫補助負担金の見直しや税源移譲も十分でない中で、国レベルにおける痛みを伴う行政改革など、歳出削減に向けての国の取組みも殆(ほとん)ど具体的には示さぬまま、地方の実情を把握しようともしない頭でっかちな霞が関官僚の権益を温存し、半(なか)ば闇討ち的に地方交付税と臨時財政対策債を大幅削減しました。まさに今回の混乱は、迷走する国の財政再建の責任を地方へと一方的に転嫁するものであり、全国知事会の梶原拓会長が会見で慨嘆(がいたん)したように「三位一体の改革」とは名ばかりな「三位バラバラの改悪」であります。
 国に対しては、知事会などを通じ、言葉ばかりが独(ひと)り歩きしている「三位一体の改革」の具体的内容を早期に明らかにするとともに、地方の意見を十分に反映させること、また、地方の実情を十分に踏まえた的確な財源保障を確実に措置するよう要請しております。
 しかしまた一方、来年度以降も、地方交付税の削減などが進むことは必至の状況です。国の動向を注視しつつ、さらなる歳出の見直しなど、財政構造の見直しを引き続き行う決意でございます。
 このような県財政の厳しい状況の中で、喫緊の課題に対応するために必要な財源確保の手段として、超過課税の導入を検討してまいりました。その状況について御説明申し上げます。
 これまで、副知事の阿部守一を座長とした政策税制検討委員会で検討を重ねてまいりましたが、今議会において提案をしております「信州ふるさとの森林づくり条例案」の基本理念にのっとり、森林の持つ多面的な機能が持続的に発揮できるように、森林の整備を促進する施策をはじめ、信州の美しい景観を守る取組みに対する支援などを、今以上に積極的に行うためにも財源が必要と考えております。
 超過課税の税額として、例えば、個人県民税均等割で年額1人当たり1,000円程度、法人県民税均等割で5パーセント程度の上乗せを行うとすれば、年間約11億円程度の税収となります。
 これらの税収の使途や超過課税の内容につきましては、新たに県民に負担を求めるものでありますので、政策税制検討委員会において引き続き検討し、具体案ができた段階で県民の皆様に公表し、御意見をお聞きした上で、平成17年4月の導入に向け取り組んでまいります。

 

 それでは、今議会に提出しました平成16年度の当初予算案とその他案件に関して、御説明申し上げます。
 平成16年度の当初予算総額は、一般会計8,758億1,193万2千円、特別会計2,314億4,156万円、企業特別会計429億4,164万9千円であります。
 特別会計は公債費特別会計など10会計、企業特別会計は病院事業会計など5会計であります。
 先ほど私は、政策の流れを中央集権的なものから、地域に軸足を置いた「コモンズ」を中心とした地域からの流れに変えると述べました。日本の地方自治は一大転換点を迎えようとしています。明治期以来の中央集権的な政治の流れ、即ち画一的な制度や補助金に頼る他律的“お上頼み”から、経世済民的発想に基づく住民自治へと転換し、住民一人ひとりが人間的尊厳を保ち、自律的に判断し、意欲を持って行動する社会を今こそ築かねば、最早 (もはや)、この国に未来はないとも言えます。
 全国4番目の広さを誇り10の広域圏に自律的な220万県民が暮らす、言わば「信州自治共和国」とも呼び得る長野県は、その先駆者・ヴァンガードたり得る存在です。真の地方主権社会の実現に向け、ともに自治を担う対等協力のパートナーとして、市町村とともに多様な自治が輝く信州・長野県を創って参りたいと存じます。
 平成16年度は、昨年9月に策定いたしました「市町村『自律』支援プラン」に基づき、合併を選択する・しないにかかわらず全ての市町村が、住民自治の一層の充実を図り「自律する自治体」を目指していくことが何よりも重要であるとの認識に立ち、必要な支援に努めてまいります。
 既に地方事務所に設置しました、「市町村『自律』支援チーム」による総合的・機動的な支援に加え、「自律町村支援のための県職員派遣制度」を創設し、コモンズサポート派遣員として県職員を派遣するほか、町村連合の設置、特例事務受託などについて意欲ある町村とともに具体的に研究・実践してまいります。集落の活力を将来にわたって維持し、住民の絆 (きずな)を深め、新たなる「コモンズ」を創出していくことが市町村の活力となり、ひいては信州・長野県の活力につながるとの視点から、「集落創生交付金制度」を創設し、自律的な地域づくりを支援してまいります。
 また、平成15年度から「集落どこでも農声部」として、農政部職員が農村集落に直接赴いて地域の課題を話し合う機会を設けてまいりました。この試みを充実させるべく、その延長線上として、農村集落の自律に寄与する活動や環境の保全・循環社会の形成に寄与する活動に対する支援を行ってまいります。また、農家と住民が協働して自ら行う水路・農道等の工事や維持管理活動、広葉樹の植林など地域の方々が自主的に行う森林の整備活動などを支援し、集落の活性化を目指してまいります。
 著しく増加している鳥獣による農林業被害については、地域の被害状況に応じた防除対策を、地域住民とともに考え、実施する地域に対して助成するとともに、NPO等との連携による「野生鳥獣被害対策チーム」を結成し技術的なアドバイスを行ってまいります。

 

 未来志向の地域のありようを考えるとき、より良い方向へと新たな試みに意欲を持って取組む人に対する積極的な支援が必要であると考えております。
 平成15年度から実施している「新規就農里親支援事業」のさらなる充実や、信州林業(しんりん)担い手グローイングアップ事業などにより、地域において農林業などに取り組もうという意欲ある方々を支援してまいります。
 また、平成15年度から実施している「森林(もり)の里親促進事業」、信州アジール事業などにより、新たなる信州を築こうという意欲のある民間企業や都市に住む人々とともに、豊かな森林や農山村を再生する仕組みを整備してまいります。
 また、NPO活動は、行政や企業と共に社会を支える力として、ますます重要な役割を果たしていくものと期待されています。財政基盤が脆弱な団体もありますので、NPOの立上げ資金を融資する民間主導の「NPOバンク」に対して資金提供するなど活動を支援してまいります。
 県内2万人に及ぶ外国籍の県民もまた、ゆたかな信州を創り出すパートナーです。今年度までの支援事業に、新たに医療通訳養成講座の開設などを加えるとともに、人材育成を中心に国際的な協力関係を築く国際パートナーシップ事業にも取組んでまいります。

 

 地域に住む方の重要な生活基盤である公共交通についてでございます。
 地域にお住まいの方々のニーズに沿った移動手段の確保のため、バス、タクシーをはじめとする公共交通機関の再構築が必要であることから、住民が参画して策定した交通計画について試行実験を行う市町村を支援し、その成果を新たな施策づくりに生かしてまいります。
 信州唯一の空の窓口である松本空港につきましては、修学旅行に対する支援やチャーター便利用への補助を行うほか、路線・ダイヤに応じたキャンペーンの実施などによる利用促進を図るとともに、信州まつもと空港への名称変更も見据えて、認知度の向上を目指してまいります。
 しなの鉄道経営健全化について申し上げます。
 しなの鉄道は、人件費の削減や企画列車の運行などにより積極的に損益の改善に取り組み、平成14年度決算において初の減価償却前黒字を達成するなど、自助努力の成果が上がり始めております。しかし、なお、資産の帳簿価額が高いために減価償却費が大きく、当期損益ベースでは、依然として赤字の見込みです。そのため、国において新たに制度化される減損会計を導入し、その基準により資産評価額を見直すことにより、減価償却費を圧縮し、当期損益ベースでも黒字化できる体質への改善を目指すとしており、県としても、県民の皆様の理解を得て、この方針を受け入れてまいりたいと考えております。上下分離方式を採用した英国の鉄道改革は、安全運行に対する責任が曖昧(あいまい)となり、痛ましい事故が多発する悲劇を生みました。他方、沿線市町村に固定資産税収入をもたらす減損会計に基づく上下一体による経営は、責任が明確となり、自律的な経営を実現します。社長を務める杉野正氏とともに、市町村長を始めとする地域の皆様へ、こうした方針の御説明を行ってまいります。

 

 環境についてであります。
 信州は、日本の背骨に位置し、峻険(しゅんけん)な山々に囲まれ、ゆたかな森林と、数多くの清冽(せいれつ)な渓流、河川、湖沼といった、日本全国でも有数の厳しくも美しい自然環境に恵まれております。この自然環境が、人々の生活と共存し、また、地域に生活する人々により、長い年月にわたって育 (はぐく)まれてきたことは、広い地球上を見回しても大変に独特な、誇りうるべきものと考えております。自然環境は世代を越えた貴重な財産であり、私ども現在を生きる者は、その保全と育成を、将来、また過去の世代から信託されているともいえます。
 一方、私たちはまた、気候の温暖化、生物種の多様性の喪失など、地球環境問題という、私たち人類全体の生存に関わる緊急課題にも直面しております。
 それぞれの地域において、自然環境を適切に管理し、利用してきた、例えば里山に象徴される仕組みこそは、伝統的なコモンズの典型であります。私どもは、こうした歴史的なコモンズを、地球環境問題にも対応したグローバルな視点から再構成しなければならないのです。
 平成16年度、組織の改編により、新たに「環境保全部」を創設いたします。「環境保全部」を中心に、自然保護研究所と衛生公害研究所を統合して創設する「環境保全研究所」による科学的、また、技術的なサポートを得ながら、地域に生活する人々の持続可能なシステムを目指して施策を展開してまいります。
 最初に廃棄物対策でございます。
 環境の世紀、21世紀にあっては、大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会から、いかに脱するかが至上命題であります。このため、製造者責任、排出者責任、汚染者負担の原則を明確にし、環境、健康、また財政への負担を軽減するべく、廃棄物の発生抑制と資源化を推進することを基本的な理念とする、新たな条例の制定を進めております。この条例は、県民の生活にも直接関係することから、骨子公表の後、県民、市町村、関係団体等幅広い方々の御意見をお聞きしたうえで、平成16年度中の施行を目指します。
 中信地区廃棄物検討委員会につきましては、住民参加と情報公開により、廃棄物処理施設の候補地選定に関する事項及び廃棄物の減量に関する事項について、精力的に検討を重ねてまいりました。引き続き、これまでの成果を生かし、産業廃棄物に係る減量化施策や、廃棄物処理に係る危険度管理・リスクマネジメント、住民関与による施設の運営ルール等、条例の目指す新たな廃棄物行政のモデルとなるよう取組んでまいります。
 阿智村に計画しております廃棄物処理施設の建設につきましては、環境負荷の増大、受入廃棄物の見直し、建設運営費の大幅な増嵩(ぞうこう)等新たな課題が幾つも生じたことから、関係市町村、団体の皆様等の御意見をうかがいながら、早急に今後の方向を示したいと考えております。
 なお、廃棄物処理施設については、既存施設の再生・延命化調査に着手するなど、緊急の課題にも対応してまいります。
 廃棄物の監視・指導体制の強化につきましては、不法投棄監視体制を強化するとともに、廃棄物焼却施設周辺のダイオキシン類調査や排ガス行政検査などを実施するとともに、不法投棄通報基本協定等に基づく情報収集体制の整備や、近隣県との合同車輌点検の実施など関係機関との連携強化に努めてまいります。
 豊かな自然環境の保全についてであります。
 近年、山岳地域における自然公園などでは利用者が集中することにより、動植物の生態系など山岳環境への様々な影響が懸念されています。このため、昨年に引き続き乗鞍岳山頂マイカー規制の実施、霧ケ峰でのシャトルバスの運行、また、上高地における観光バス等の通行規制に向けての抜本的取組みなど、地域住民、交通事業者、行政などが一体となって持続可能な山岳環境の利用を実現してまいります。また、美ヶ原地域では、この問題に関心を持つ方々とともに、在来の高山植物などを復活させる自然再生事業にも着手いたします。さらに、本年1月1日付けで施行された「長野県希少野生動植物保護条例」に基づき、総合的かつ計画的な野生動植物保護施策を展開してまいります。  次に水環境の保全についてであります。
 日本の背骨に位置し、数多(あまた)の水源を擁する最上流域にある信州は、多くの国民に対して、また、未来の世代に対しても、この豊かな水環境を保全し、継承する責務を負っております。そこで、新年度、健全な水循環を確保する観点から、環境保全部に新たに「水環境チーム」を設置し、昨年策定した第3次長野県水環境保全総合計画等に基づいて、意欲ある県民の皆様とともに、水環境の保全を総合的、計画的に推進いたします。また、水環境チームには、生活排水対策室を設置して、下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽の整備等の事業を一元的に所管し、市町村の将来にわたっての財政負担など多くの課題への対応を図ってまいります。
 地球環境問題を含む総合的な環境施策についてでございます。
 昨年策定いたしました「長野県地球温暖化防止県民計画」の速やかな実現に向けて、地域における活動拠点づくりを進めるために、長野県地球温暖化防止活動推進センターの活動を強化するなど推進体制の整備を行います。また、県内の優れたリサイクル製品を認定し県工事等に積極的に活用するなど、率先して温暖化防止活動を実践いたします。
 さらには、次代を担う子どもたちの環境への高い意識を醸成するための環境教育、県の事業における環境負荷の低減、民間事業者等の環境に配慮した事業活動の促進を図ってまいります。

 

 「福祉」・「医療」についてであります。
 福祉分野における行政の基本的な役割は、家族やコミュニティでの共同作業や相互扶助で営まれている県民の皆様の生活に対して、社会的な安全網・セーフティネットを張ることです。このセーフティネットは、それぞれが暮らす地域の実情に応じた、いわばオーダーメードのもので、これまで家族やコミュニティにおいて無償の労働で営まれてきた共同体の機能を代替し、あるいはサポートするための地域社会の誰もが享受できる普遍的なサービスであろうと考えております。
 福祉サービスは、人間と人間との自発的協力による結びつきに基づいて行われる相互扶助的なものであり、最も重要なことは、人間と人間との継続的なふれあいがそこにあり、サービスが家族や共同体的絆(きずな)と不可分に結びついていることでありましょう。私たちは、それぞれの地域において人間の絆(きずな)により支えあうシステム、すなわち「コモンズ」の観点から、福祉政策を進めてまいります。
 このため、平成16年度にあっては、社会部と衛生部を福祉健康部として統合し、福祉分野と保健医療分野を、高齢者、障害者、子どもといった施策の対象別に一元化し、また、宅幼老所などのコミュニティケア拠点を中核とした総合的な地域ケア推進の担当部署を設置します。そして、地域において人間の絆(きずな)により支えあうシステムを構築しようという観点から新たな地域福祉の推進策を立案いたしました。
 移動の困難な障害者等の福祉移送サービスについては、平成16年度からNPO法人等が福祉目的で行う有償サービスが認められる見通しとなったことから、これに合わせ、NPO法人等が実施する福祉移送事業の運営費に対し助成することにより、地域の足の確保を図ってまいります。
 高齢者の福祉サービスとして、高齢者が介護や支援を必要とする状態になっても、できるだけ住み慣れた地域で暮らしていくことができる福祉コミュニティづくりを進めるため、高齢者を地域全体で支える地域ケア体制の拠点として、宅幼老所の整備を積極的に進めてまいります。さらに、宅幼老所職員の養成研修を充実し、地域交流の促進、広域的に整備される特別養護老人ホームなど各種施設との連携を図り、地域に根ざした多様な福祉サービスの提供を促進してまいります。
 障害者福祉においては、利用者の主体的なサービス選択の確保が重要となることから、各種相談、情報提供、サービス利用援助等を行い、身体障害者、知的障害者、精神障害者の3障害全てに対応できる「障害者総合支援センター」を10圏域ごとに設置し、障害者の地域生活を支援してまいります。
 西駒郷利用者の地域生活への移行支援につきましては、生活の場としてのグループホームとともに、日中活動の場である通所授産施設や共同作業所等の働く場について、市町村等と連携しながら充実を図ってまいります。
 また、西駒郷の居住環境改善のため、当面60人程度の生活の場である居住棟を1棟建設するとともに、既存棟の改修を行ってまいります。
 精神障害者を対象としたサービスとしましては、住まいの確保を円滑に促進するため「精神障害者グループホーム施設整備事業」を創設するとともに、家庭で精神障害者を一時的に介護できない場合等において、障害者とその家族が求める短時間かつ日常的な援助ニーズに柔軟に対応するため、新たに「精神障害者タイムケア事業」を実施することとしました。

 

 医療分野につきましては、医療提供体制を整備するべく、自治医科大学卒業医師の配置方針を見直し、平成15年度から実施した県内3箇所のへき地診療所への医師の派遣を、さらに追加して実施いたします。
 また、小児初期救急医療体制整備事業につきましては、地域の小児科医等の協力により一定の場所で小児初期救急医療を提供する、いわゆる「センター方式」が効果的と考えられますので、県単独事業により、他の圏域における「センター方式」としての機能を確保する取組みに対し助成することといたします。
 心と身体の健康づくりの推進では、県民の参加と協力による「たばこによる害のない社会」を目指し、禁煙・卒煙への支援体制の整備及び受動喫煙防止に向けた環境整備を促進してまいります。

 中国帰国者に対する施策でございます。
 国家間の戦争である先の大戦の災禍(さいか)により、多くの方々が本人の意思に反して中国に残留を余儀なくされ、その後、幾多(いくた)の困難と辛苦(しんく)を経て帰国されました。私たちは、歴史の過(あやま)ちと哀しみから目をそらすべきでありません。昨年9月、県議会からいただいている請願も踏まえ、今回「中国帰国者愛心使者(あいしんししゃ)事業」を実施することを通じ、これらの方々への慰藉(いしゃ)の意を表すこととしました。
 スペシャルオリンピックスにつきましては、本日から2004年第3回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム長野が開催されます。海外からの参加者を含め、総勢1,000余名が長野に集い、知的障害のあるアスリートの皆さんが日頃のトレーニングの成果を発表されます。また、1年後には2005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会・長野が開催されます。両大会ともに、障害者への県民の理解を深める絶好の機会でありますので、本県の持つ様々な経路・チャネルを利用しての広報活動や、実行委員会への職員派遣などにより、積極的に大会を支援してまいります。

 

 教育についてであります。
 教育とは、一人ひとりの子どもが有する多種多様な先天的、後天的資質をできるだけ生かし、その能力をできるだけ伸ばし、発展させ、立派な一人の大人になって、個人的にも、社会的にも、幸福な、そして実り多い人生を送ることができるように成長することを助けるものであります。もちろん、こうした目的は学校教育だけによって達成されるのではありません。地域に生きる人によって伝承されたものや自然環境といったものを大切にしつつ、一人ひとりの子どもの尊厳を尊重し、また、開かれた人間的な絆 (きずな)を育もうとする体温が感じられる地域があることによって初めて達成できる、すなわち「コモンズ」があることによって成り立つものでありましょう。
 そのような考えから、教育委員会事務局を「信州教育振興庁」へと改組し、就学前の子どもに対する教育とそれに関連する分野を統合するなど、縦割りによる弊害を排した総合的な施策立案と事業実施が行える組織づくりに着手いたします。
 このうち、就学前の教育に関しましては、子どもの発達や子どもの権利の視点から、子ども自身の育ちや、家庭・地域での子育て支援を充実してまいります。核家族化の進行や多様な就労形態に伴う様々な保育ニーズに対応するため、特別保育事業や、保育所以外での交流や集いの場を提供する子育て家庭地域支援事業などを創設してまいります。また、一定の基準を満たしている自由保育所に対する助成を充実していくことといたします。さらに、絵本の読み聞かせや紙芝居等を行う「おはなしドキドキぱーく事業」を実施し、読書活動の推進を図 (はか)るとともに子どもたちの夢を育(はぐく)んでまいります。
 義務教育に関しましては、引き続き一人ひとりの子どもたちに目が届く、きめこまやかな教育を推進してまいります。特に、平成14年度から小学校1年生で導入し、平成15年度に小学校3年生まで拡大した30人規模学級については、市町村との協働事業として小学校高学年への拡大を進めてまいります。
 県立高等学校に関しましては、高等学校改革プラン検討委員会において、魅力ある高等学校づくりなどの検討を進めてまいります。また、昨年12月に採用した2人の民間人校長を、この4月からそれぞれ高等学校に配属し、民間感覚を取り入れた学校運営を行ってまいります。
 自律教育に関しましては、若槻養護学校への高等部設置や若槻・寿台の両養護学校への通学制導入などを実施し、養護学校の体制整備を図ってまいります。
 稲荷山養護学校の改築につきましては、本年1月に実施設計を終了し、来年度より本体工事に着手いたします。地球環境保全の世紀に相応(ふさわ)しい、温(ぬく)もり溢(あふ )れる県産材を利用した教育環境を提供するべく、学校の管理運営や工事の安全管理にも配慮した結果、事業工程期間を総合的に見直して3か年とし、開校予定を平成19年4月といたしました。
 また、通常の学級で学んでいるLD(学習障害)・ADHD(注意欠陥/多動性障害)児等を支援する体制整備を図るなど、一人ひとりの状況に応じた教育を行ってまいります。
 さらに、不登校児童生徒やその家庭への支援を行っている「子どもサポートプラン」につきまして、フリースクール関係者等と連携して、引き続き実施してまいります。

 

 産業政策について申し上げます。
 地方行政が産業政策を担うにあたっては、その地域に伝えられてきた技術や叡智(えいち)を生かすこと、すなわち、産業がその地域にある必然性を追求することにより、地域における持続可能な産業、さらには地域文化が再生されるという視点が不可欠であると考えております。
 このような考えから、新たに「コモンズ新産業創出事業」を創設し、中小企業やNPO法人、創業者、市町村等が行う、健康・福祉、環境、教育分野などでの先進的・独創的な事業で、地域経済の活性化と雇用の創出が見込めるものに、助成を行います。
 知的財産を積極的に活用することが、競争力のある持続的な企業経営のためには有効であることから、平成16年度も引き続き「特許コンシェルジュ」が県内の研究開発型中小企業等を訪問し、研究開発成果の目利きを行うとともに、特許手続をアドバイスする等、知的財産への戦略的な取組みを支援いたします。
 また、企業間取引のグローバル化に伴い、海外取引に関する支援が重要となっております。財団法人長野県中小企業振興公社の海外取引コールセンターが各種相談に応じるとともに、県の海外駐在員とも連携し、中国からの発注情報の収集や県内企業へのあっせんなどを行ってまいります。
 中小企業融資制度資金につきましては、厳しい経済情勢や金融機関の不良債権処理の加速化の中で、経営環境が悪化しつつある中小企業の再生への取組みを支援するため「再生支援融資制度」を創設いたします。
 企業立地につきましては、本年度創設した県営産業団地の貸付け特約付分譲制度などを積極的に活用して進めてまいります。

 

 意欲ある人々の能力を高め、能力が最大限に発揮できる環境を整備することが産業政策として重要であることは申すまでもありません。
 民間企業や業界団体等が構築した資格制度を県が認定する「資格認定制度」を創設し、産業界で働く方々の意識を高めるとともに、資質の向上を図ってまいります。
 また、「若者向けデュアルシステム訓練」で、技術専門校と民間企業が一体となって人材育成を展開し、企業が求める職業能力を備えた若年者の職場定着を促進してまいります。
 県内の有効求人倍率が依然1倍を下回り、完全失業率も高水準で推移するなかで、県民の生活を支える雇用の確保に、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 就業支援として、まず、若年者の就業をサポートするべく、松本市に「若年者就業サポートセンター(仮称)」を設置し、若年失業者の就職意識と知識の向上による就業支援を行ってまいります。さらに職業能力開発を通し、信州・長野県の将来を担う人材を養成してまいります。
 一方で、本年3月から職業安定法の改正により地方公共団体でも無料職業紹介が行えるようになりました。これを契機に、障害者や母子家庭の母、中国引揚者など就職に困難な状況にある方々に、生活自律支援と職業紹介サービスを提供いたします。
 障害者の就業についても、産業現場における実習や法定雇用率達成の要請を行うとともに、障害者雇用支援センターに対し、助成してまいります。
 また、「長野県トライアル雇用(試行的雇用)事業」については、終了者のうち約8割が常用雇用され、雇用創出効果が現れていることから、引き続き実施してまいります。

 

 高速な情報通信ネットワークが、これからの産業を支える基盤であることはもはや誰も疑わないところです。
 現在策定中の「長野県高速情報通信ネットワークの整備・運営に関する方針」に基づき、民間活力導入による高速情報通信ネットワークの整備を進め、県民誰もが自律的に利用できるネットワークの実現を目指してまいります。
 電子自治体の推進に関しては、住民の個人情報が守られていることを大前提としながら、住民サービスの向上、行政事務の高度化・効率化を図ってまいります。

 

 農業、林業また農山村に関わる政策についてであります。
 信州にお住まいの方の多くがお判りのとおり、農業、林業の営みは、経済的、産業的範疇(はんちゅう)としての産業を遙(はる)かに超えて、すぐれて人間的、社会的、自然的な意味をもっております。すなわち、自然環境をはじめとする様々な社会的共通資本を持続的に維持しながら、村という社会的な場を中心として、自然と人間との調和的な関わり方を可能にし、文化の基礎をつくり出してきたのです。即ち、農山村自体が一つの重要な社会的共通資本の構成要因であり、これら部門における生産活動に関して、生産、経営単位としてとらえられるべきものは、一つひとつのコモンズとしての農山村であります。
 こうした考え方に基づき、農業分野については、持続可能な自然と共生し、自律可能な信州農業への転換を目指し、事業展開してまいります。
 化学肥料や農薬を多用した従来型の生産から、環境に対する高い理念を共有する生産者、消費者の相互理解に基づき、これら資材の使用量50パーセントの削減を目標に掲げて、平成16年度は新たに「信州農業再生戦略プロジェクト事業」を立ち上げ、化学肥料や農薬を削減した大規模な栽培実践農業者との協働事業を展開いたします。
 安全・安心な農産物の供給として、平成15年度、県下611校で実施した「地域食材の日」につきましては、食べ物の旬(しゅん)に配慮した上で、全ての小中学校、県立養護学校で毎月実施し、更に県産食材を100パーセント利用した郷土食などを入れた学校給食を年2回実施するとともに、児童・生徒自らが栽培をしたり、食事をつくる取組みに支援してまいります。
 国内及びアジア各地で発生している高病原性鳥インフルエンザ対策は、緊急の課題であります。ウイルスの県内農場への侵入予防、農場段階での早期発見と被害拡大を防ぐべく、「高病原性鳥インフルエンザ防疫対策事業」により検査の拡充など監視体制の強化を図り、安全な畜産物の安定的な供給を確保いたします。
 また、コイヘルペスウイルス病発生による、県内のコイ養殖業の支援対策としては、「信州生まれ、信州育ち」の養殖コイ生産への転換を図り、生産者自らが行うコイ種苗生産の支援や試験場での種苗供給を進めてまいります。


 森林の整備についてであります。
 信州の78パーセントを占めている森林は、現在を生きる私どもの豊かな生活の基盤であるばかりではなく、森林を適切に管理し、次の世代に継承することは、将来を生きる人々に対する責務であるのです。そこで、「信州ふるさとの森林づくり条例案」を今回提案いたしました。この条例は、多くの人々の主体的な参加によって森林整備を進める上での森林・林業政策の根拠となるものであり、条例制定により、平成16年を新たな森林づくりスタートの年にしてまいります。
 このため、平成16年度においては、「環境」と「雇用」に配慮した「森(しん)世紀ニューディール政策」を引き続き重点的に実施するとともに、地域の方々が行う奥山から農村、そして市街地までの広葉樹を主体とした緑の回廊づくりへの支援や、県有林を活用し、希望する全ての学校が学校林を持ち、子どもたちによる広葉樹の森林づくりを推進することを内容とした「コモンズによるみどりのアクション推進事業」など、コモンズの主体的な活動による新たな森林整備を展開してまいります。

 

 産業政策を考えるとき、これまでの本県の政策は、いわゆる川上、生産者への支援に重点を置いてまいりました。しかし、産地間競争の激化に加え、豊かな社会における消費者の価値観の多様化等に的確に対応するため、従前の生産振興中心から一歩踏み出して、消費者の皆さまの信頼を得て、信州のブランド化を推進し、本県独自のマーケティングを推進することが重要であると考えております。
 原産地呼称管理制度をはじめとする「信州農産物マーケティング推進事業」、からまつをはじめとする県産の針葉樹を使った家具のブランド化を目指す「森(しん)世紀ブランド流通促進事業」、温泉を核とした滞在型旅行の提案や昨シーズンからスタートした「スキー王国NAGANO構築事業」といった観光振興など、消費者に支持される信州ブランドの確立を目指して、各種事業を推進してまいります。

 

 安全、安心の確保についてであります。
 信州に住まわれる方が、安心して暮らせるような基本的な条件を確保することは、行政機関として最も重要な役割のひとつであります。
 地震への備えとして、地震発生の際に避難所の開設や救急医療などの応急対策を行う県有施設のうち、昭和56年以前に建設され、また、東海地震に係る地震防災対策強化地域内にあるものについて、平成17年度までに耐震診断を行ってまいります。またその他の地域についても、順次耐震診断を実施いたします。
 また、県民の皆様ご自身のお住まいにつきましては、耐震診断・耐震改修を推進する「すまいの安全『とうかい』防止対策事業」の対象地域を、市町村と連携して、東海地震を想定した地震防災対策強化地域から全県へと拡大することといたしました。また、戸建て木造住宅の他にもアパートや避難施設となる建物等を対象に加えることといたしました。
 土砂災害対策といたしましては、土砂災害危険地域からの住宅移転などにより安心を提供する「災害危険地域移転支援モデル事業」を実施いたします。これは、土砂災害基礎調査を継続して土砂災害特別警戒区域の指定を進めることと併せ、危険地域に住まわれる方の声をつぶさに伺いながら、危険地域からの移転に向け、きめ細かに事業を実施するものであります。さらに移転促進に関する条例の制定も目指してまいります。
 安心できる県民生活を確保するソフトパワーとして、治安情勢の悪化や、新たな警察業務の増加などに対応するべく、長野県の警察官定数を80名増員いたします。また今回、県警察本部の深い御理解と御協力の下、県職員から県警察官に採用する制度を設けました。地域を愛し、安全を守るプロフェッショナルとして、犯罪防止に向けた総合対策を筆頭に、交通死亡事故の抑止対策の充実などを図ります。
 このほか、大規模災害時の迅速かつ確実な情報の収集・伝達を確保するための防災行政無線を、データ通信や秘話性の確保などの新たな機能を付加したデジタル方式により再整備いたします。

 

 公共事業についてであります。
 今回の地方交付税等の大幅な減少に伴う財源不足に対応するため、県単独事業費については、平成17年度の削減率を前倒しいたしました。
 そこで、限られた事業費を有効に活用するため、県政の重要課題や県民の生活に直結した事業などにメリハリを付け重点配分することを徹底いたします。
 入札制度につきましては、昨年4月に長野県公共工事入札等適正化委員会から提言いただいた「長野県の入札制度改革−中間とりまとめ」に基づき、入札制度の抜本的な改革に向けての様々な試行を重ねております。透明性、競争性、客観性、公平性、公正性が確保される入札・契約制度の確立に向けて、引き続き努力してまいります。
 一方で、意欲ある建設業者の皆様が、経営強化や業種転換などを自律的に行うことに対して、昨年6月に建設産業構造改革支援プログラムを策定し、支援しております。平成16年度も引き続きプログラムを実施し、建設産業の構造改革を支援してまいります。
 このほか、住民や市町村と協働して新たな社会資本整備を進める仕組みを設けるなど、公共事業における新たなモデルを築くべく引き続き改革を進めてまいります。
 治水、利水に関してであります。
 長野県治水・利水ダム等検討委員会に諮問の上、何(いず)れもダムによらない計画を進めることと決定しました9河川につきましては、浅川・砥川等の河川整備計画の早期認可をめざし、「諮問河川の治水対策促進事業」を実施し、地域にお住まいの皆さまとの対話を繰り返しながら、河川改修の促進と、流域対策や土砂対策のさらなる検討を進めてまいります。
 また、浅川の流域対策の一環として「雨水の各戸貯留施設設置支援事業」及び「県有施設雨水利用貯留タンク設置事業」を実施し、住宅等に雨水貯留施設を設置しようとされる浅川流域にお住まいの皆様に対して助成を行うとともに、県有施設にも雨水貯留施設の設置を行い、住民参加、また流域一体となって、治水安全度のさらなる向上を図ってまいります。
 さらに、利水対策の一助として「地下水保全対策モデル事業」を実施し、硝酸性窒素による地下水汚染が問題となっている豊丘村をモデルに、貴重な水資源としての地下水を保全するための検討を行ってまいります。

 

 行政改革についてであります。
 私は、先ほど、政策の流れを中央集権的なものから、地域に軸足を置いた「コモンズ」を中心とした地域からの流れに変えていこう、と申し上げました。  そのためには、県行政の進め方も根本的に変えねばなりません。これまでの県行政は、ともすれば県本庁舎の職員のみが政策を企画・立案し、現地機関の職員は伝達された方針に従って事業を黙々と実施する、という図式でありました。しかも、その企画・立案された政策は、ともすれば無意識のうちに霞が関の意向を窺(うかが)いながら、その枠の中で形作られる。そうした傾向が、なきにしもあらずでした。
 私たちは今回、こうした上から下への流れを変えていこうとしております。すなわち、各地域のコモンズに軸足を置き、問題解決型の意識を抱いた職員が、縦割り行政の従来発想を超えて、そこに暮らす意欲溢(あふ)れる県民の方々とともに現場で議論し、発想し、問題を解決すべく行動しながら、事業の仕組みを変えていこうというものです。無論、事業実施に当たっては公正な評価を行い、行政としての説明責任を果たすべきことは、改めて申し上げるまでもありません。県本庁舎は、こうした的確な認識、迅速な行動、明確な責任の下に問題が解決されるよう積極支援を行う仕組みへと変革を図ります。
 県民の皆さんと日常的に接している現地機関や、自身の担当業務を越えて自由な発想力を有する意欲ある職員一人ひとりが事業を提案できる「新規事業等直接提案」、県民の皆さんの柔軟なアイデアや発想を活(い)かすためにも協働による政策づくりを推進する「県民参加の政策づくり推進事業」。これらを今回実施したのも、その一環でございます。
 「知事の事務部局の組織に関する条例の一部を改正する条例案」で御提案した新しい組織は、この方向をさらに具現化するものであります。
 すなわち、施策を実施していくための基本となる職員、予算、行政資産を、県民益を実現する上で有効に活用する活力創造局、また、地域のコモンズを支援する部局横断的な施策を担う組織として地域政策局を設置いたします。また、福祉・医療、環境、教育という、自律的で持続可能なコモンズを支える基本となる分野の施策を充実させるべく、福祉健康部、環境保全部を設置し、また、教育委員会事務局の信州教育振興庁への改組を行います。また、県政の改革をより戦略的かつ迅速に行うため、これまで企画局、経営戦略局が担ってきた機能を再編し、信州経営戦略局といたします。
 このほか、平成16年度には、部局長による政策立案機能の強化や、チーム全体で業務を執行するため、「係制」を廃止してチームリーダーの判断により柔軟にグループ編成ができる体制とフラットな組織の試行を全庁的に行うなど、組織の柔軟性や機動性、意思決定の迅速性を高めるべく、業務執行体制の見直しにも取組んでまいります。
 組織は、それ自体が瑞々(みずみず)しい感性を持つことによって、刻々と変化する環境に柔軟に対応し、市民の思いや願いに適切に応えていくことができます。私どもは、「コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」の実現のために、さらなる改革を進め、平成17年度には、現地機関を含む抜本的な組織の改革を目指してまいります。

 

 外郭団体の見直しについてであります。
 昨年12月26日、長野県出資等外郭団体見直し専門委員会の最終報告書がまとまり、行政機構審議会での審議・承認をいただいた上で、去る2月2日に答申をいただきました。
 この見直しについては、去る1月10日にNHKスペシャル「自治体破綻(はたん)を回避せよ−外郭団体・300日の攻防−」でも放映され、大きな反響を巻き起こし、私の手元にも多数の感想や、激励が寄せられております。
 長野県出資等外郭団体見直し専門委員会は、真の県民益を創出する観点から、県が出資又は関与する57の外郭団体に関する、まさにゼロからの見直しを、小倉昌男会長以下4名の委員の方々の献身的な活動により進めてこられました。審議は、外郭団体、市町村などからのヒアリングも含めて23回にも及び、また、現地に赴いての調査などにより外郭団体の実態を十分に把握された上で、報告書をまとめていただきました。委員の皆様の並々ならぬ熱意と改革への信念に心から敬意を表するとともに、これに甘えることなく、さらに踏み込んだ見直しを行うことが私に課せられた責務と考えております。
 平成16年度当初予算におきましても、専門委員会の御指摘を踏まえた歳出の見直しを行う一方、今後、抜本的な改革基本方針を早期に策定するとともに、それぞれの外郭団体改革の処方箋 (しょほうせん)を早急に描き、抜本的な改革を行ってまいります。
 また、企業局の事業のあり方につきましては、昨年12月に「企業局事業の民営化計画」を策定いたしました。引き続き、関係市町村及び関係機関の皆様の御理解を得ながら、県民の皆様の顧客満足度向上を目指して、この計画を進めてまいります。

 

 条例案は、新設条例案4件、廃止条例案2件、一部改正条例案29件です。
 先ほども申し上げたとおり、これまで、ややもすれば軽んじられ、損なわれてきた地域の「大切なもの」を自分たちの手に取り戻し、守り育(はぐく)んでいくことを通じて、真に豊かな社会を、未来に向かって、私たちは創り出していかねばなりません。このためには、問題調整型とも言える役人的発想を超 (こ)えた、人間の体温が感じられる新しい制度や仕組み、ルール作りが必要となってまいります。
 例えば、適正な土地利用を確保することは、私たちが郷土を愛し、持続的にこの地に暮らしていく上で最も基本的で重要な条件であり、それは未来を担う世代に対する私たちの責務でもあります。「信州土地利用基本条例案」は、こうした社会的共通資本としての土地利用のあり方について、その理念を示すものであります。
 また、「信州の美しく豊かな風景を育成する条例案」は、これまでの景観条例をさらに充実させるべく提案するものです。それぞれの地域に住む人々が持つ文化や風土、また、歴史的背景などに支えられた美しい風景を、総合的かつ長期的な視点から育成していこうとするものです。この条例では、市町村長や地域住民の意見を聞いた上で、景観育成アドバイザーを置くことにより、数値のみでは評価し得ぬ私たちの郷土に対する想いを、風景の育成に反映させる仕組みを提案しております。幸いにして、景観審議会においても深い御理解を賜りました。この信州・長野県に生まれ育った方々、戻り住んで下さった方々、そして、移り住んで下さる方々、さらには訪れて下さる方々。いずれの方々にとっても魅力的な信州を育成する条例であります。
 その他「高等学校授業料等徴収条例の一部を改正する条例案」などにより、県立高等学校等の授業料の値上げを提案しております。これは、財政改革推進プログラムに基づく財政構造改革のために、国の地方財政計画算定の基礎額及び他の都道府県との均衡に配慮して改定させていただくものです。
 

 事件案は、町村の境界変更についてなど15件でございます。
 このほか、専決処分の報告は、道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告など7件でございます。

 

 私は、日本列島の背骨に位置する広い県内各地で今、この瞬間も実直に働き、学ぶ、多くの県民の方々のための奉仕者として尽くす人生を与えられたことに悦(よろこ)びを感じ、誇りを抱いています。
 4年間の任期付き任用としての部課長級職員の募集には、海外からも含めて767名もの方々が呼応して下さいました。書類選考の上、70余名の方々と面談いたしましたが、想像を遙(はるか)かに超えて、素晴らしい知識と経験、勘所(かんどころ)、さらに人間としての体温を持った逸材に、幾人も巡り会いました。その彼らや彼女らは異口同音に、閉塞感に充ち満ちた日本の政治や社会を慨嘆し、形骸化した手続民主主義に拘泥しがちな「日出ずる国」を変革する可能性を、私たちの信州・長野県に見出さんとしているのでした。私は深い感動を覚えました。全国の心ある人々の期待に応えるべく、有為な県職員と向上心溢(あふ)れる220万県民、さらに願わくば県民の代表たる県議会の皆様とともに、「コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」の共通認識の下、日本の改革を信州・長野県から推し進めてまいる覚悟です。

 

 以上、今回提出の議案に関する御説明を申し上げました。ご審議及び議決のほど、お願い申し上げます。


(2004年2月27日)

 

<お問い合わせ先>

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Tel 026-232-2002
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