平成14年2月県議会定例会における知事提案説明要旨
本日ここに、平成14年度予算案をはじめとする、長野県政の重要案件に関する御審議の機会を得ました。心より感謝申し上げます。
提出議案の説明に先立ち、最近の経済動向、長野県財政の状況等について、お話し申し上げます。
最初に、経済状況について申し上げます。世界経済が減速する中で日本経済も、企業における生産活動の減少の度合いは多少緩やかになったとは言え、依然として設備投資が減少を続けています。さらに、12月の完全失業率が5.6%と過去最悪を更新するなど、景気、雇用情勢とも悪化を続けており、他方でデフレが進行しています。IT関連産業が牽引役を果たしている長野県においても影響は大きく、雇用面では、12月の有効求人倍率が0.66倍とオイルショック以来の最低水準となっております。今後の見通しとして政府は、民需中心の回復に向けて来年度後半には緩やかに動き出すことが期待され、実質経済成長率は、平成13年度のマイナス1%に対して、平成14年度は0.0%になると予測しております。
このような経済状況を踏まえ、国においては先般、構造改革を加速しつつデフレスパイラルに陥ることを回避するため、第二次補正予算が決定しました。厳しい財政状況の中ではありますが、長野県はこの国の予算を最大限活用しながら必要な施策を講ずべく、本日、平成13年度補正予算案を提出いたしました。その内容に関しては、後ほど申し上げます。さらに、平成14年度予算案においても、雇用と産業振興の分野に財源を重点的に配分することといたしました。景気の動向は、県民生活をはじめ県財政にも大きな影響を及ぼします。今後とも細心の注意を払いながら、雇用や産業振興対策について最大限の努力をいたす所存であります。
さて、平成14年度の国の予算を見ますと、税の減収など一層厳しさを増す中で、公共投資の10%削減をはじめ、現行制度の見直しによる歳出の効率化に努めるなど、一般会計総額では対前年度比マイナス1.7%となっております。また、来年度の地方財政は、国の予算と同一基調による投資的経費の削減などにより、地方財政計画の規模はマイナス1.9%と、地方財政計画の制度始まって以来初の減額となり、引き続き大幅な財源不足への対応が重要課題となっております。
平成14年度の長野県財政に関して申し上げます。県内景気の一層の悪化を反映して、県税収入は対前年度比マイナス16.4%、約400億円の減収と、落ち幅では戦後最大の低い税収が見込まれます。また、地方交付税についても原資となる国税収入の減収などから、2年連続のマイナスとなることが予想され、一般財源を確保することが大変厳しい状況にあります。歳出面では、元金や利子の支払いに要する公債費の増加に加え、介護保険関係費等の増大なども見込まれ、結果、平成13年度を上回る大幅な財源不足が生ずることは必至であります。
このため、長野県は平成14年度を本格的な財政改革の初年度として位置づけ、予算案の策定に当たっては、かつてないほどの徹底した事務事業の見直し(平成14年度当初予算における歳出の削減と歳入の確保(PDF形式7KB/1ページ)を行いながら、支出の削減と効率化に最大限努めました。事務事業の見直しでは、廃止168事業などにより約50億円を縮減するとともに、一般行政職員を70人削減いたします。また、特別職の給与等に引き続いて、管理職も給料の特別調整額を10%削減することといたしました。これらは財源の捻出(ねんしゅつ)にとどまらず、県職員が率先して厳しい県財政の状況に立ち向かう姿勢を、ささやかながらも表したものです。さらに、土木・農政・林務の県単独事業やふるさと農林道など投資的経費についても、財政状況を勘案して財源配分いたしました。なお、公共事業については、必要な社会資本の整備を着実に進めるため、平成14年度予算案と今回の平成13年度補正予算案を一体的に編成し、平成13年度当初予算額の約98%相当額を計上いたしました。
こうした状況の中で、今後も県民ニーズに的確に対応しながら、持続可能な財政運営を行っていくためには、県財政の改革が急務であります。過日、中期的な財政改革基本方針の素案を策定し、県民の皆様の御意見等をいただくべく、公表いたしました。
これによりますと、今後も公債費など義務的な経費の増嵩(ぞうすう)が予想される一方で、景気の回復による税収等の大幅な増加も期待できないことから、従来からの財政運営を続けた場合には、頼みとしてきた基金が早くも平成15年度には底をついて巨額な財源不足が生じ、まさしく崖縁(がけっぷち)に立った財政運営を余儀なくされることが予想されます。今後の収支の改善を図るために必要な目標の設定を、本年秋までの時期に可及的速やかに行うなど、財政再建団体への転落を回避しつつ、中期的な収支の均衡を図るべく、不退転の決意で財政の改革に取り組んでいかねばなりません。
まず、歳出面では、県組織の効率化とスリム化を進め、必要な分野や部署には人員を配置しながらも、県民から理解の得られる県行政を目指して、職員定数の更なる削減をはじめとして、人件費総額の抑制を図ってまいります。外郭団体についても、そのあり方や財政支援の必要性、運営の効率化など、抜本的検討を加えてまいります。
また、投資的経費の縮減や公共的施設の運営の効率化などを図るとともに、補助金をはじめとする行政経費全般について、市町村や関係機関、団体等と忌憚(きたん)なき意見交換を行い、原点に立ち戻ってその緊急性や必要性を再度点検し、いま一段の事務事業の見直しを行います。あわせて、県債発行の抑制などによる財政の弾力性の確保に留意しながら、財源を真に県民ニーズの高い分野に重点配分し、県民益にかなった支出構造としていくことが肝要だと考えております。
歳入の確保については、景気の低迷などにより累積する県税未収金の解消に向けて、職員とともにより一層取り組み、県税の増収に努めてまいります。加えて、使用料や手数料などの見直しを行い、県民の皆様にも適正な負担をお願いするほか、各種基金の活用や、未利用の県有地の処分などを進めてまいります。
しかしながら、こうした長野県の自主的な取組みをもってしても、おのずと限界も存在します。国からの税源の移譲など安定的な財源の確保をはじめ、国庫補助制度における地方の超過負担の解消など、地方税財政制度の改革についても、引き続き積極的に世論喚起を行い、国へ提言してまいります。
とまれ、実のある財政改革の第一歩を踏み出すべく、財政改革基本方針に基づき、財政健全化に向けた具体的な対策に着手してまいります。県民の皆様の御理解と御協力をお願いする次第です。
県政改革ビジョンに基づく「県庁の自己改革」に関し、平成14年度に行う主なものについて申し上げます。
まず、県の組織の再構築や外郭団体の見直し(平成14年度県の組織改正について(PDF形式:15KB/3ページ))についてです。ますます複雑・多様化する県民ニーズや新たな行政課題に的確に対応できるよう、外部の有識者や県民の皆様からも御意見をいただきながら、庁内の行政管理検討委員会を中心に検討を進め、できる限り早期に、県民の目線に立った、あるべき姿を明らかにしてまいります。このため、4月には行政改革推進室を新設し、行政改革に専心、取り組んでまいります。
県の行う施策等について積極的に説明責任を果たし、県民とともに県政を育むため、引き続き車座集会などあらゆる機会を通じて、私自ら県民との対話を重ねてまいります。また、県庁の電子化を進め、県のホームページもより一層使いやすくなるように改良・充実させるとともに、公文書目録をホームページ上で常時公開し、県民が利用しやすい情報公開を一層推進してまいります。
さらに、県民と県職員が協働して政策を検討する場を設け、多彩なアイデアや発想を政策形成の初期段階から生かしていくとともに、県政世論調査の充実や政策マーケティング調査の実施などを通じて、県民の満足度やニーズを総合的かつ的確に把握し、今後の政策形成に反映させてまいります。
市町村との連携については、事務事業の配分のあり方を含めた幅広い観点から、県と市町村の適切な役割分担などについて検討を進めるとともに、県内各地域で動き出した自主的な市町村合併に向けた取組みを積極的に支援してまいります。また、地方事務所を中心に、地域が自らの創意と工夫による事業の選択・実施を主体的に行えるよう「地域づくり総合支援事業」を新たに創設し、市町村との協働による政策形成を進めてまいります。
さて、今県議会に提出いたしました平成14年度の予算案、その他の案件に関して、御説明申し上げます。
平成14年度の予算案の総額は、一般会計1兆47億1,462万2千円、特別会計392億7,837万8千円、企業特別会計499億7,372万9千円であります。
特別会計は、公債費特別会計など11会計、企業特別会計は、病院事業会計など5会計であります。
平成14年度予算案においては、第二次長野県中期総合計画の基本的な方向性を踏まえながら、県政改革ビジョンに基づく県政改革を積極的に推進するとともに、現下の財政状況に鑑(かんが)みて思い切った支出の削減と効率化を図りつつ、県民にとって真に豊かな生活を営む上で必要とされる分野に、限られた財源の中でも重点的に配分いたしました。具体的には、福祉・医療、環境、教育そして産業の振興に力点を置くとともに、雇用対策についても財源を重点的に配分しております。
重点分野の第一が、福祉・医療です。
既に県民の5人に1人が65才以上の長野県は、全国的に見ても高齢化が進行しています。他方で、高齢者の就業率は高く、いわゆる健康余命も長い、健康・長寿県であります。その特性を生かしながら、理想的な高齢社会を実現する先導的役割を与えられているとも言えます。保健・福祉・医療の連携を一層緊密に図りながら、子どもから高齢者まで安心して生き生きと暮らせる社会を目指してまいります。
最初に、高齢者福祉(平成14年度に充実を図る主な高齢者在宅福祉施策(PDF形式10KB/1ページ))について申し上げます。
来年度から新たに、高齢者や子どもたちが住み慣れた地域において、家庭的な雰囲気のもとできめ細かなケアを受けながら暮らせるよう、NPOなどが運営する宅幼老所の開設に助成するなど、地域での自発性を生かした在宅福祉を進めてまいります。
介護保険サービスに関しては、低所得者の利用料の負担軽減を図りながら、ホームヘルプサービスやデイサービスなど、希望に応じて多様なサービスの利用ができるよう支援を進めるほか、特別養護老人ホームなど必要な施設等の整備を充実・促進してまいります。介護予防・生活支援の面においても、生活習慣病の予防など寝たきり防止のための施策を進めながら、地域や個人の実情に応じたサービスが行えるよう、生活を支える保健・福祉サービスを拡大してまいります。また、家族介護者につきまして、新たに、痴呆のある高齢者を抱える家庭に支援員を派遣して、介護の負担を減らすためのメニューを追加します。
このような施策により、来年度の高齢者の在宅福祉サービス予算額は、前年度に比べ約39%と大幅に増額いたします。長野県では今後とも、介護する人・される人、双方の精神的・肉体的負担を軽減する施策プログラムを市町村とともに提示し、自主的に介護サービスを選択できるよう、施策の一層の充実に努めます。なお、重度要介護高齢者家庭介護者慰労金については、このような在宅支援を重視した高齢者福祉を積極的に推進した上で、県民や市町村長らの意見も踏まえ、平成14年度は金額を半減して継続し、15年度から廃止することといたしました。これにより、一年に一度慰労金を差し上げる方法とは別の形で、介護に当たる方々の自由な時間が確保され、また、負担の軽減が図られていくと捉(とら)えています。これは、重度心身障害者介護慰労金についても同様であります。
障害者に関する施策について申し上げます。
障害者の在宅福祉サービス(充実する主な障害者在宅福祉サービス(PDF形式21KB/2ページ))については、タイムケアの利用限度時間を倍増するなど、大幅に拡充するほか、新たに、就業や日常生活に関する様々な相談・指導を行うため、就業・生活支援センターを設置するなど、地域の中で暮らす障害者の生活を積極的に支援してまいります。施設面では、身体障害者デイサービスセンターや身体障害者自立生活支援センターなどを増設するほか、雇用されることが困難な障害者の生活に必要な就業を確保するための小規模通所授産施設の運営や、知的障害者のグループホームの整備などに、新たに助成してまいります。これにより、障害者の在宅福祉サービス関係の予算は、対前年度比約28%の増加となります。また、西駒郷は、今後のあり方や施設整備に関する基本構想の策定に着手してまいります。
精神障害者について(充実する主な精神障害者在宅福祉サービス(PDF形式23KB/2ページ))は、円滑な地域生活が営めるよう、生活訓練施設や地域生活支援センターなどの計画的な整備に助成するとともに、地域に働く場を確保するため、新たに小規模な通所授産施設の整備に助成してまいります。また、地域での生活を支援するため、同じく新たにホームヘルプとショートステイのサービスを開始するとともに、ともすれば家の中に孤立しがちな精神障害者が交流や相談を行える憩いの場を確保するなど、精神障害者の自立生活と社会復帰を促進してまいります。精神障害者への福祉サービス関係予算は、前年度比40%以上増額いたします。
次に、子育て環境の整備(平成14年度に充実を図る子育て支援施策等について(PDF形式16KB/2ページ))についてです。地域全体で子育てを支える社会を目指して、「長野県子育て応援プラン」に基づき、子どもたちの健やかな成長のために必要な施策を実施してまいります。母子保健では、国に先がけて、子どもの聴覚障害を早期に発見し、適切なケアを行うため、新生児の聴覚検査体制を整備するとともに、今後の療育のあり方などについて検討をしてまいります。また、保育サービスについては、新たに、1才児保育における、国の基準を超えた保育士の加配に助成するほか、乳児保育や延長保育、子育て支援センターなどの特別保育を一層拡充してまいります。また、人口5万人未満の市町村に対し、「ミニ・ファミリー・サポート・センター」の制度を創設するほか、児童クラブについては、障害を持つ児童も一層利用しやすい環境となるよう、新たに支援してまいります。
深刻化、複雑化を増しております児童虐待問題は、児童相談所の相談体制を強化しながら、緊急に保護を必要とする児童の一時保護所となっております中央児童相談所を通年で開所するなど、即応体制の充実を図ります。
母子福祉については、ただ今申しましたような子育て環境の一層の充実に加え、新たに、パソコン操作や介護ヘルパーなど、就業に有利な資格などを取得できるよう就業支援講座を開設し、母子家庭等における就労の促進を図ってまいります。加えて、母子寡婦福祉資金など経済的支援の充実とともに、保育、家事などの世話に当たる家庭協力員の派遣日数を2倍に拡充いたします。なお、母子家庭等児童福祉金については、児童扶養手当など国の施策が見直される中、その動きを見極める必要がありますので、経過的に金額を半額にして3年間継続し、平成17年度から廃止することといたしました。今後、国の動向を注視しながら、母子家庭等の自立支援を図ってまいります。
保健、医療についてです。
健康や医療に対する県民の関心が高まる中で、昨年策定した「健康グレードアップながの21」をもとに、生活習慣病の予防など、県民の健康づくりを総合的に支援するとともに、長野県の保健・医療のグランドデザインともなるべき新たな保健医療計画を策定してまいります。また、じん肺による健康障害に関し、新たに、保健所や医療機関において必要な検査や診断を実施するなど、粉じん作業従事者をはじめとする方々の健康の維持・増進とじん肺の予防を図ってまいります。
なお、長野県総合健康センターは、健康づくり事業団にその業務を委譲することに伴い、旧長野県産業教育センターを改修し、新たな県民の健康づくりの拠点として整備してまいります。
医療供給体制の整備に関しては、民間医療施設の整備等を促進するとともに、県立須坂病院における脳神経外科の新設に伴う新棟の工事が年度内に完了いたしますので、西棟の改修に着手してまいります。なお、県立病院の経営は依然として大変に厳しい状況にあります。県立病院室を新たに医務課に付置し、経営健全化計画に沿って、経営の合理化や収益の確保など一層の経営改善を図ってまいらねばなりません。
県民が質の高い医療サービスを受けるために必要な人材の確保に関しては、小諸市に設置される看護師養成所の整備に助成するほか、新たに医療施設内の、国の基準に満たない小規模な保育所についても県独自の助成を行い、看護師の確保に努めてまいります。また、県立木曽病院と阿南病院の医師住宅の改修を進め、不足しております医師の確保を図るなど、地域の方々が安心できる医療体制を築いてまいります。
重点分野の第二は、環境です。
日本の背骨に位置し、数多(あまた)の水源と全国的にも誇るべき第一級の自然環境を有する長野県は、かけがえのないこの貴重な財産を守り、後世に残していくために最大限の努力を払わねばなりません。他方で、地球の温暖化など世界的規模で取り組むべき課題は残念ながら、さしたる進展を見せず、また、私たちの身近な問題でも、廃棄物の不適正処理や不法投棄が後を絶たないなど、環境への負荷はますます大きくなりつつあります。このため、廃棄物の減量化やリサイクルの普及などを積極的に推進して、持続的発展が可能な循環型社会を目指してまいります。
まず、自然環境の保全についてです。希少野生動植物の宝庫とも言える長野県における保護対策のあり方について、総合的な対策や条例の制定に向けた具体的な検討を進めるとともに、レッドデータブックの植物編に続いて動物編の作成を進めてまいります。また、国庫補助の対象とならない小規模な山小屋のし尿処理施設や、中山間地域における自然や地域との共生を体験する拠点施設の整備に、新たに助成してまいります。
国土や環境の保全、心身の癒(いや)しなど、様々な公益的機能を持ち合わせた森林の整備(平成14年度森林整備予算のポイント(PDF形式7KB/1ページ))についてです。県土の約8割を森林が占める長野県は、現在民有地において4:6である広葉樹と針葉樹の比率を、100年後に6:4のバランスのとれた混交林へと変えるべく、計画的に森林整備を進めてまいります。このため、間伐など森林整備のための施業に必要な歩道の整備作業などを行う森林所有者等に対して交付金を給付するほか、信州の原風景を構成する里山の整備について支援策を講じ、水道水源地域などの森林や保安林について、その公益的機能を高めるため、効率的・計画的な整備に努めてまいります。これらの新規施策を含め、森林整備については、全般的に投資的経費を抑制する中においても引き続き重点的に実施することとし、今回の平成13年度補正予算案と合わせ、13年度当初予算に比べ、約18%増額いたしました。
昨年開設した「信州きこり講座」は、予想を上回る受講希望者や、現場からの実践的な技術力を更に求める声に応え、講座修了者に対して更なる習熟度を高めるための研修を実施してまいります。
森林整備を進めるためには、日常生活での県産材の利用を促進せねばなりません。このため、WWF(世界自然保護基金)と協力して、環境保全に配慮された森林であることを世界的に証明する、FSC森林認証に向けて積極的に取り組み、県産材の流通の促進などを図ってまいります。また、県産材を活用した学校や保育所の木造化や、学校の机やいすの導入に助成し、民間住宅については、現行の金利水準のもとでは当初の5年間が無利子となる、低利な融資制度を新たに設けてまいります。
なお、「あぐり指南役」として長野県農業の改革のために御尽力いただいております田崎真也氏と玉村豊男氏の御両名より、森林整備に役立てて欲しいと、大変にありがたい寄付の申し出をいただきました。これを元として長野県は、「グレース(厚志)の森」として民有林を選定し、ボランティアなどの協力を得て、管理してまいります。
廃棄物対策についてです。廃棄物処理事業団による処理施設整備は、阿智村における施設の建設に向けて引き続き努力をしてまいります。豊科町に当初予定しておりました施設に関しては、中信地区・廃棄物処理施設検討委員会において、引き続き施設整備のあり方等について鋭意検討を進めてまいります。また、ダイオキシン類に対する県民の不安を解消し、良好な生活環境を確保するため、産業廃棄物焼却施設について新たに排出ガスの直接検査を実施するほか、周辺の大気や土壌等の調査を強化してまいります。さらに、廃棄物監視指導室を新設し、廃棄物の排出事業者等に対する指導体制を強化するとともに、不法投棄を防止するため、夜間のパトロールを実施するほか、森林組合等関係団体や隣接県などとの連携・協力を強化して、監視の強化を図ってまいります。
地球温暖化の防止に関して、県庁自ら率先して温室効果ガスの排出の削減に努めるべく、庁舎における節電・節約を徹底しながら、公用車への低公害車の導入を計画的に進めてまいります。また、県民総参加のもとで地球温暖化の防止に取り組むため、新たに地球温暖化防止県民計画を策定してまいります
また、新たに環境保全モデル地区を設定し、住民がNPOや来訪者等とともに行う様々な環境保全活動を支援するほか、リサイクルや省エネルギーなど環境に配慮したエコホテルの認証制度、低公害バスの導入の促進など、地域の個性を生かした自主的な取組みを支援してまいります。
重点分野の第三は、教育です。
向上心に溢(あふ)れる長野県民は、世代を問わず学ぶ意欲が高く、さらには進取の気性にも富んでおり、こうした県民性は、これからの時代にふさわしい新たな教育を進める上で、貴重な財産です。県民の関心が極めて高い教育問題につきましては、個性と自主性のある学校教育や少人数規模での効果的な学習を実現するとともに、不登校や障害のある児童等への対応などを充実してまいります。
義務教育における少人数学級についてです。義務教育では、小学校低学年時に、学習習慣や学校での生活習慣を身につけることが重要です。そのため、今年入学する1年生から35人を上限とする学級編制を行うこととし、加えて30人以上の学級にはティームティーチングのための教員を配置し、30人規模によるきめ細かな学習指導などが行えるようにいたします。また、平成13年度から導入した少人数学習集団編成事業も対象学年を広げるなど、児童・生徒の学習環境の向上に積極的に取り組んでまいります。
また、各学校が自らの説明責任を果たして地域とともに課題を共有し、生徒や保護者、地域の声を反映しながら、主体性を持って学校を運営し、質の高い、個性ある教育サービスを提供できるよう努めてまいります。このため、各校の教育目標に基づいた計画と実施状況を自己評価できるシステムについて具体的検討を進めます。また、県立の学校には全校に学校評議員制度を導入するとともに、これらの制度を活用しながら、学校長が自らの責任と裁量において執行できる予算を配分してまいります。
さらに、生徒の国際感覚や幅広い視野を育むため、農業科や林業科などを有する県立高等学校に、来年度はタイ、ネパール、中国からの留学生を受け入れるほか、飯田風越高等学校に国際教養科を、穂高商業高等学校に会計科を設け、また、多部制単位制による高校のあり方に関して検討を進めるなど、個性ある高校づくりに努めてまいります。
来年度から本格的な学校週5日制が実施されることに伴い、子どもたちが休日を有意義に過ごせるよう、家庭や地域とともに取り組んでいくほか、高等学校においては、地域からの要望を踏まえ、土曜日・日曜日における学校図書館の開放を、県下各地に対象校を拡大してまいります。
不登校や問題行動など、児童・生徒の指導上の課題についても、引き続きスクールカウンセラーを増員するなど、相談・指導体制の充実を図ってまいります。
障害のある子どもたちへの教育は、養護学校高等部へ職業教育等のための教諭を増員するなど、教職員体制を充実するほか、通学の利便性を高めるため、スクールバスの配置を増やしてまいります。施設面では、教室の増設や、老朽化した校舎の改修を促進しながら、車いす対応のトイレの改修やエレベーター、自動ドアの設置、冷房設備の充実など、子どもたちが一層安心して快適な学校生活を送れるよう、教育環境の改善に努めてまいります。稲荷山養護学校については、県下初の知的障害児と肢体不自由児の併置校として、全面改築を目指して必要な調査等を行ってまいります。
私立学校の振興に関しては、父母負担の軽減を図るため、高等学校や幼稚園などの運営費に対し、引き続き所要経費の2分の1を補助する方式などにより助成するほか、個性豊かな私立学校づくりのため、校舎の整備等に対し支援してまいります。
重点分野の第四は、雇用(平成14年度雇用対策関連予算の概要(PDF形式8KB/2ページ))と産業の振興です。
先ほど申しましたように、現下の雇用情勢はかつてない厳しい局面を迎え、中でも、中高年齢層を中心とした離転職者や若年層の就職が困難な状況にあります。
このため、長野労働局など関係機関との連携を一層密にしながら、離転職者や新規学卒者、障害者などの雇用の確保に全力を注いでまいります。また、12月県議会において設置いたしました緊急雇用創出特別基金を活用した事業を、来年度においては最大限前倒しすることとし、県、市町村を合わせて、延べ22万人日を超える新規雇用を生み出してまいります。
離転職者等の再就職は、個々のニーズと適性に適合した職業訓練を紹介して雇用のミスマッチを解消するため、職業能力開発コーディネーターを増員するほか、多様な職業能力開発の機会を提供するため、民間機関や事業主などへの委託訓練については、福祉、観光、警備、建築など個性と能力に応じたきめ細かな訓練コースを設定するなど、その内容、対象者数とも一層充実して実施いたします。また、長野労働局やハローワークと共同し、ワンストップサービス化を図った再就職支援相談会を県下各地で開催するほか、雇用保険を受給していない離転職者についても、企業の協力を得て、県独自に職場体験型の職業訓練を実施します。
このほか、技術専門校における訓練機器の一層の充実とともに、CAD(自動製図機械)の技能習得コースを提供するなど、時代の要請に応え、専門的な技能・知識を備えた人材の養成に努めてまいります。
これらを含めた雇用対策関連予算として、対前年度比12%増額いたしました。
商工施策に関してです。県内企業が現下の厳しい状況から一日も早く脱却し、県民が安定した雇用のもとで安心した生活が営めるよう、様々な支援を行ってまいります。このため、中小企業支援センターや創業支援センターなどにおいて、創業や経営革新を行う意欲ある事業者等からの相談にきめ細かに対応してまいります。また、制度資金は、昨年9月から緊急的に実施している経営安定特別資金等の貸付利率の引下げを、平成15年3月末まで1年間延長するなど、厳しい経営環境に置かれている県内中小企業の円滑な資金調達を引き続き支援いたします。昨年の暮れには、上田商工信用組合が破綻し、地域経済に少なからぬ影響を及ぼしました。このような金融機関の破綻や大型倒産などにより、中小企業の事業活動に支障が生ずることのないよう、信用保証協会によるセーフティネット保証の円滑な実施を促します。
ものづくり産業に関しては、「信州ものづくり産業戦略会議」において引き続き議論を深め、将来展望や振興策を明らかにするとともに、産業界が大学や試験研究機関の知恵と技術を活用して、新製品や新ビジネス等を連鎖的に生み出す「産業クラスター」の創生を目指し、具体的な行動計画の策定や産・学・官の共同研究などを推進してまいります。また、生産拠点の海外移転に伴い、産業のいわゆる空洞化が進む中で、積極的に市場開拓や技術提携、人材交流などを行っていくことが必要です。このため、新たに海外取引アドバイザーを設置するほか、比較的活況を呈しているアジア地域での見本市や企業交流会等への参加や情報提供など、発注先や販路の拡大と開拓のために総合的な支援を行ってまいります。
商業に関してです。今年度県下各地で開催してまいりました賑(にぎ)わい創出研究会の成果を生かし、各地域におけるまちづくりの若手リーダーを育成するほか、中心市街地での先進的な商業基盤の整備に助成するなど、地域での自発的・自主的なまちづくりを促進していきます。
観光分野は、ホスピタリティ研究会の成果を生かして、観光産業に従事する人から地域住民まで広く視野に入れて、ホスピタリティ向上のための人材育成システムを構築してまいります。また、観光客の誘致を図るため、花き生産地としての長野県の魅力を全国に情報発信していく「信州の花まつり〜善光寺花回廊〜」の実施をはじめ、シルバー世代を対象とした観光戦略や、アジアを中心とした海外からの誘客宣伝活動、スキー王国としての長野県再構築のための戦略会議やモデル地区の設定などの事業を積極的に展開してまいります。さらに、個々の観光客のニーズに合った情報をインターネット上で案内するボランティアガイド「旅のコンシェルジュ」を構築してまいります。なお、東京における商工観光部門は、組織、場所ともに新たな装いのもとで、本県の観光や物産等の県外拠点として機能を一層充実してまいります。
農業に関してです。自然や生活環境にも配慮しつつ生産・加工などの基盤整備を促進するとともに、本県農業の基幹である園芸作物については、新たに4産地を重点産地に指定し、園芸王国づくりを進めます。また、地域営農システムの構築を促進するため、集落での合意形成活動を促し、集落営農組織の育成を図るほか、本県の特色ある農産物や農産加工品のPRにも努めるなど、個性と魅力ある農業の振興を図ってまいります。昨年、牛海綿状脳症の発生により打撃を受けた県産牛肉については、正確な生産情報を提供する「安心シール」の普及を促進するなど、消費者の信頼確保と消費の回復を図るとともに、公共牧場への放牧を奨励し、草資源を活用した、安心で信頼される畜産物の生産・供給を推進してまいります。また、苦しい経営環境下にある牛の飼養農家に対しては、引き続き資金面を含め支援してまいります。
重点分野の最後として、県政改革ビジョンの県民益創出プログラムに掲げる施策のうち、これまで述べてまいりました施策を除き、来年度に実施する主な施策について申し上げます。
まず、県民の意欲を生かすための施策について申し上げます。
NPOについては、協働事業を推進するための指針を策定するとともに、推進体制を強化し、NPOに関する情報の一元化を図ります。また、福祉をはじめ様々な分野で先駆的・独創的な事業を行うNPOなどに対して、新たに助成金を交付するなど、その活動を支援してまいります。
また、信州農産物のマーケティング戦略を進め、プロジェクトチームにおいて検討をしてきました、ワインなど5品目に加え、来年度は新たに、米、くだもの、野菜の3品目についても検討し、意欲ある農業者を支援してまいります。また、きのこや花き、乳製品のブランド化とイメージアップに努めながら、原産地呼称管理制度を確立するため基準の作成、審査方法など具体的検討を行います。農業の意欲ある担い手の確保については、県の農業大学校に就農コーディネーターを設置して、Iターンなど就農希望者への情報や研修の提供、就農候補地の斡旋(あっせん)など、積極的な対策を講じてまいります。
次に県民の生命と財産を守るための施策についてです。
防災関係では、雨量・河川情報など緊急かつ必要な気象情報の提供の充実に努めるとともに、これらの情報の提供先を防災ボランティアなどにも広げ、防災体制の裾野の拡大による初動体制の充実強化に努めてまいります。消防防災ヘリコプターにつきましては、長期間の機体点検等により運行ができない期間、民間のヘリコプターを借り上げて業務に支障のないよう万全を期してまいります。また、地震災害などに備えて防災対策推進計画を策定するほか、飯伊地域を中心とした地震防災対策強化地域において、戸建て木造住宅の耐震化を促進するため、耐震診断などの普及に努めるとともに、耐震改修の必要な住宅に対して助成してまいります。
治水・利水対策につきましては、現在、長野県治水・利水ダム等検討委員会において鋭意検討が進められており、浅川、砥川の両河川に関して、地域住民の参加を得て部会での議論が進んでいます。残る河川についても、引き続き調査審議を行っていただくこととなります。これらの審議状況を踏まえながら、順次、多角的・総合的な対策を講じてまいります。また、土砂災害から県民の生命を守るため、土砂災害警戒区域等の指定のための調査を引き続き進めてまいります。
交通安全対策につきましては、昨年は一年間の死者の数が200人を下回ったものの、死者、事故件数、負傷者ともに、前年より増加する残念な結果となっております。このため、木曽地域を始め、交通安全施設の整備を進めながら、シートベルト着用の徹底、高齢者の事故や飲酒運転の防止の啓発を進めるなど、交通事故の抑止に一層努めてまいります。
利用者の減少など非常に厳しい経営環境にあるしなの鉄道については、昨年12月に経営改革検討委員会から経営改革に向けての提言をいただきましたので、これを踏まえて、鉄道会社としての経営再建に向けた極限までの自助努力を強く求めながら、ワンマン化による省力化の促進など経営上必要な支援を行ってまいります。あわせて、経営改革評価委員会(仮称)を設置し、しなの鉄道の経営改革の監理等を行ってまいります。また、住民生活に必要なバス路線については、国庫補助制度の改正に伴い対象外となった広域的な生活バス路線に対し、その維持確保を図るべく、県単独の助成制度を創設いたします。
米の生産調整については、これをプラス志向にとらえ、環境にやさしく安心・安全な有機栽培や低コストの直播(ちょくは)栽培を促進するなど、一定の生産調整目標を達成しつつ、水田を本来の姿で活用する新たな手法について研究し、農地の遊休荒廃化を防ぎながら田園景観の維持に努めてまいります。
次に、県民の支え合いを応援する施策についてです。
経済社会のグローバル化の一方で、地域における人と人のつながりや、身近なところで生活を支え合うコミュニティの重要性が見直されております。こうしたコミュニティづくりの一手法である地域通貨を介して、心の通うコミュニティづくりを支援します。
また、県内で暮らす外国籍の人々が、同じ長野県民として県の行政サービスを等しく受けられるよう、各種相談機関等に通訳を派遣するための制度を創設します。また、県行政と外国籍県民とのパイプ役として「地域共生コミュニケーター」を委嘱するなど、国籍の違いを越えて支え合う地域づくりを進めてまいります。
県民の食生活の面においては、地元でとれる新鮮で安心できる農産物への消費者志向の高まりを受けて、シンポジウムの開催や、地元農産物の生産・流通・販売等について調整・推進を行う地域流通推進委員会を設置するなど、「地産地消」を促進しながら、青果物など県産農産物の消費拡大に努めます。
県民益創出プログラムの最後として、公的サービスに対する県民の信頼を高めるための施策について申し上げます。
公共事業に関して、発注見通しや、入札、契約に関する情報などの公開を進めるとともに、予定価格の事前公表を行ってまいります。また、新たに入札監視委員会を設置して、入札や契約について第三者の意見を反映させ、県民からの談合情報に適切に対応するなど、入札・契約制度の透明性と信頼性の一層の向上を図ります。さらに、真に必要な公共事業を厳選するため、事前・事後評価制度の創設や再評価制度の見直しなど、事業採択から完了後までの評価システムの構築に向けて検討を進めてまいります。
福祉や介護サービスについては、その質の向上を図るため、事業者等に対して、自己あるいは第三者による評価システムの導入について普及・啓発等を行ってまいります。また、県立病院においては、患者の要望等に対応して、診療内容の説明や診療録の開示など、診療情報を積極的に提供するほか、木曽病院においては、第三者機関による病院機能評価を行うなど、県民が安心して医療サービスを受けられるよう努めてまいります。
以上の重点分野における主な取組みのほか、来年度実施いたします主要な施策について申し上げます。
子ども未来センターに関しては、南箕輪村の大芝高原での設置を前提に、検討委員会から実行委員会へと組織を改め、専門的な意見や県民意見も反映させながら基本計画を策定してまいります。また、青少年の健全育成に関しては、新たに青年団体等が行う地域づくりのためのモデル事業に助成し、青年自らによる主体的な社会参加活動を推進してまいります。
広域行政に関しては、県下4広域において引き続き広域連携型の地域づくりを支援するとともに、過疎対策についても過疎地域自立促進特別措置法に基づき、過疎地域の振興と自立を促進するための様々な支援を行ってまいります。
また、より多くの県民が文化活動に参加できるよう、文化会館や信濃美術館の充実を図りながら、県民の芸術文化活動を支援してまいります。県立長野図書館の購入図書も、選定に際して外部の委員から意見を求めるなど、図書館改革を進めます。
高速交通網関係について申し上げます。北陸新幹線の長野・上越間に関して、平成14年度には、用地取得事務を一層進めながら工事を促進いたします。リニア中央新幹線につきましては、引き続き早期建設を求めて国等に働きかけてまいります。また、昨年10月に発足いたしました松本空港活性化検討委員会を中心に、空港の活性化について多角的検討を進めながら、利便性の向上や利用促進などに取り組んでまいります。加えて、中部横断、中部縦貫、三遠南信の高規格幹線道路は、それぞれ建設促進あるいは整備計画区間への格上げに向けた調査等を行うとともに、木曽川右岸道路も事業を計画的に促進してまいります。その他の生活関連道路については、県民要望を踏まえて整備を進めてまいります。
住宅関係では、長野県住宅マスタープランに沿って、住まいに関する様々な情報の提供や相談の充実、木造住宅の普及・促進などを図ってまいります。県営住宅においても、間伐材の活用や建設廃棄物の再資源化に先駆的に取り組み、計画的に既存住宅の建替えを進め、高齢者や障害者に配慮した住宅の質的向上を図ってまいります。
男女共同参画の推進は、県民がともに理念を共有しながら、県、市町村、事業者等が連携し、真の男女共同参画社会の実現を目指して一体となって取り組むため、必要な条例の制定に向けて検討を進めてまいります。また、配偶者からの暴力、いわゆるドメスティック・バイオレンスに対しては、新たに婦人相談所を「配偶者暴力相談支援センター」に指定し、関係機関とも連携を密にして、必要なカウンセリングや情報の提供、一時保護など、被害者の適切な保護、支援等を行ってまいります。
今年度末をもって、同和問題に関する特別措置法の期限切れを迎えます。この間のさまざまな対策事業により同和地区の環境改善は進展を見ましたが、差別事象が根絶されたわけではありません。今後も同和問題にとどまらず、強きが弱きを挫(くじ)くがの如(ごと)き差別の解消に向け、人権が尊重される公正な社会づくりに意を尽くしてまいります。
条例案は、一部改正条例案28件であります。このうち、「特別職の職員等の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例案」は、先ほど申し上げましたように、長野県財政の健全化の第一歩として、2,000人を超える管理職員に支給される給料の特別調整額を、本年4月から平成16年12月までの2年9か月間、10%削減するものです。また、「一般職の職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例案」は、事務事業の見直しにより、出張に伴う日当を廃止するとともに、宿泊料等を原則実費支給に改めるものです。
事件案は、包括外部監査契約の締結についてなど、12件であります。
次に、平成13年度の補正予算案(平成13年度2月補正予算案(国第二次補正関連分)の概要(PDF形式5KB/1ページ))について申し上げます。
先ほど申し上げましたように、国における第二次補正予算を活用して事業の実施を図るべく、総額244億円余を追加いたします。
岡谷、長野に続いて松本の情報技術試験場内に創業支援センターを設置するほか、当初予算とも併せて国道19号木曽路における信号機10か所、高輝度はみ出し禁止標示などの交通安全施設、児童福祉施設の整備、加えて、平成14年度の公共事業を前倒しして実施するための経費を計上いたしました。また、ケーブルテレビの整備や、山小屋や国立公園などにおけるトイレの整備、県産材を利用した公共施設の整備のための助成費、直轄事業負担金などを増額いたしました。
なお、これにあわせて、公共事業等に係る国庫支出金の決定や事業の確定に伴う減額などを行うこととしております。
このほか、専決処分の報告は、道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告など4件であります。
最後に、21世紀における長野県が目指すべき未来を語りたく思います。
日本という社会が急速な勢いで少子高齢化を迎える中で、性別や年齢、肩書や経歴、さらには国籍や障害の有無に拘(かかわ)らず、生きる意欲を有する人々を分け隔てなく迎え入れ、公正なチャンスが一人一人の県民に開かれている長野県を目指したい、と私は考えております。
思えば、長寿県として今や知られる長野県も嘗(かつ)ては、主たる死因として塩分の摂りすぎによる脳卒中が指摘されていました。佐久総合病院や諏訪中央病院、国保直営診療所に象徴される意欲溢(あふ)れる医師は、一日の勤務後に保健婦と共に集落を訪れ、塩分控えめな食生活を、と夜遅くまで熱く語り合ったのです。議論好きで理屈っぽいとも言われがちな長野県民は、けれども、腑(ふ)に落ちる説明を受けたなら極めて素直に熱心に実践する県民性でも知られています。
老人医療費が全国で最も低い長寿県ナガノの今日は、行政側の指導のみならず、自律した県民一人一人の自己判断と自己責任の賜物(たまもの)なのです。
同様の成果は、産業界でも顕著です。世界に冠たる高品質の生糸で知られた製糸工業から精密工業へ、さらにはIT関連へと地元資本の企業が大転換を成し遂げられたのも、行政側の指導や規制によってというよりも、自律した企業としての自己判断と自己責任が経営者に存在したればこそでした。
こうした自律した県民意識や企業家精神こそが、21世紀の社会を構築する基本であると私は考えます。
"量から質へ"、"画一性から多様性へ"。つまりは"成長から成熟へ"。私たちの社会は、物質主義から脱物質主義へと大きな時代の変わり目に差し掛かっています。
「コペルニクス的転回」を200余年前に唱えた哲学者のイマニュエル・カントは、自己の欲望や他者の権威に依存することなく、自らの意思で普遍的・客観的な道徳法を打ち立て、行動を律する重要性を説いています。21世紀初頭の変革期に求められるのも、こうした自律の認識の上に成り立つ、創造性に満ち溢(あふ)れた活力です。
真の構造改革とは、一人一人の県民、一つ一つの地域が、それぞれに自分らしく、地域らしく生きていける社会を再構築することです。こうした再構築によってこそ、私たちが暮らす美しき長野県は、真に心の豊かさを実感し得る社会となるのです。これこそは、分権型社会にふさわしい長野県が目指すべき未来だと考えます。
それは、硬直化した年功序列制から、適性や能力や意欲に応じて多様な働き方や生き方が選択可能な社会への変換を意味します。まさに相手の尊厳ある生き方を支える福祉や教育や医療や環境といった領域が、長野県の創造力や活力を育む上でも重要となってくるのです。
県民としての個人や企業の皆さんがお納め下さる税金によって成り立つ長野県の行政も、問題調整型指向から問題解決型志向へと、コンピュータで言うところのOS(オペレーティング・システム)を変換せねばなりません。
この変換に当たっては、「クールヘッドでウォームハート」な"冷静な頭脳と温かい心情"を抱いて、「ハードヘッドでソフトハート」な"効率性の原理と公正の原理"を常に、肝に銘じてまいります。大きな政府VS小さな政府、権力VS反権力、管理VS放任といった従来の枠組みでの二元論を超えて、より多くの県民とこれからも議論を重ねながら、私は邁進(まいしん)いたします。
今回提出いたしました予算案も、日本という社会をリードする長野県の改革を結実させるための原資であります。県民の皆様、議員の皆様の御理解と御協力を賜りたく存じます。
以上、今回提出の議案に関する御説明を申し上げました。御審議及び議決の程、お願い申し上げます。
(2002年2月21日)
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