| 信州知事 田中康夫
お待たせ申し上げました。それでは時間がまいりましたので、「日本の義務教育を守る緊急共同提言」の会見を開催させていただきます。私は本日の賛同立会人として出席をさせていただきます、長野県で県知事を務めております田中康夫でございます。皆様お手元のほうに既に「日本の義務教育を守る緊急共同提言」というものがあろうかと思います。
本日はジャーナリストの櫻井よしこさん、そして京都大学の経済研究所長の佐和隆光さん、本日京都の方で急なご用事が入られましたが、後ほど佐和さんからのメッセージもお伝えさせていただきます。東京フォーラムの社長でいらっしゃいます鳥海巖さん、ご存知のように丸紅の元会長であられ、また、東京都の教育委員も務めてございます。国際基督教大学教授の教授でいらっしゃいます藤田英典さん、また、経済アナリストの森永卓郎さん、以上の5名の方による緊急共同提言でございます。それでは、この緊急共同提言の文章もご作成いただき、また、5名の方々のご了解を得た文章でございます。ジャーナリストの櫻井よしこさんから、この提言を踏まえてお願いいたします。
ジャーナリスト 櫻井よしこ氏
皆様こんにちは。私は仕事柄、日本の改革と言われることを沢山取材してまいりましたけれども、どの問題を見ましても、構造的に同じ要因が原因としてあるのではないかなあということを感じております。その共通要因というのは何かというと、やはり日本人の質というものを考えさせられるんですね。日本人がここでもうちょっとしっかりしていたらとか、ここでもう少し国際的な視野を持っていたらとか、ここでもう少し長期的な視点を持っていたらとか、もっと未来に投げかける視線を持っていたらとか、いろんな意味で、日本人さえしっかりしていれば、例えば金融問題も教育問題も、外交問題も科学の問題もずいぶんと問題解決が早いんじゃないか、もっと容易なんじゃないか、私たちの社会は本当にもっと素晴らしい方向にすごいスピードで変わりうるんじゃないかというふうに感じております。
私は私たちの社会の未来に対して、何が一番大事かといえばやはり教育だろうと思うんですね。子どもたちにしっかりといい教育を与える。どの子どもにも、この子が都会に生まれようとも、田舎に生まれようとも、等しく教育の機会を与えて、どの地域の学校にも子どもたちが読むことができる沢山の本があって、子どもたちの好奇心とか、知的冒険心というものを満足させるような生き生きとした授業が行われて、そして先生が本当に賢い教育をすることができれば、どんなにいいかなあと思っていました。ですから、教育こそ私たちがうんとお金を投入して、人材を投入してすべての力を結集して、多様な素晴らしい人材を育てていくという役割にあるわけですから、教育こそ大事にしなければならないと思っておりました。
小泉さんの構造改革でいろんな改革が言われまして、その中の三位一体改革の中で、税源移譲いたしますと、地方自治体に考えてくださいと言ったときに、これはいいなと思いましたけれども、その次の段階で何が起きているのかを見ましたら、何か3兆円補助金を削りなさい、その3兆円をなんと2.5兆円の義務教育費であらかた埋めましょうかというふうな議論になっていることに、正直言ってびっくりしました。このようなことに賛成する知事の方々は、いったいこの国の未来をどう考えているのだろうかと疑問に思いました。そこで明日、全国知事会が開かれるそうでございますので、森永さん、鳥海さん、藤田さん、その他の方々のご賛同を得まして、今日とにかく緊急会見をして、こんな馬鹿な補助金を削る方法、そこに義務教育を入れるなんていう馬鹿なことは、絶対にやめて欲しいということで、世の中にアピールをしたいと思う次第であります。そして今日、ここに集いました。私のほかにも、いろんな方々のお話があると思いますけれども、今一番力を入れなければならない教育費を削るということほど、私たちの国の未来の可能性、一人一人の子どもの可能性をつぶすことになるんだということを強く訴えたいと思います。
信州知事 田中康夫
はい、ありがとうございます。続きまして、株式会社、先ほど、東京国際の国際を抜いてしまったかと思います、大変失礼いたしました。株式会社東京国際フォーラムの代表取締役社長であられ、また、丸紅株式会社の理事、経済同友会の顧問、そしてまた、東京都の教育委員会の委員でもあられます、鳥海巖さんでございます。よろしくお願い申し上げます。
株式会社東京国際フォーラム代表取締役社長 鳥海巖氏
この問題、櫻井さんが話されたことで尽きるわけでございますけれども、私もちょうど東京都の教育委員になりましたのが5年前でございまして、そこでもってですね、教育の現場というものに来て、また教育委員会の中がどういうふうになっているかってことが分かり、これは日本の将来というのは非常に大変なことだなあというような感を強くしているわけでございます。今私以外の教育委員というのは、将棋の米長さん、それから作家の内館さん、それから東京都の副知事格の横山教育長、そのほかに早稲田の総長だった清水先生が委員長をやっておられますし、それからまた、文部事務次官を昔やっておられました國分さんが入って、計6人で教育委員をやっているんですけれども、実は5年前に石原知事が誕生しましたときに、石原知事は「心の東京革命」というのを実は提唱いたしました。実はそこに20人ぐらいで知事を囲む東京の未来を考えるというような懇談会を実は作ったわけでございますけれども、そのときから知事は非常に東京、あるいは日本の教育のいわゆる非常におかしなものになっているということに非常に憂いまして、知事の基本的な考え方は、なんで今の子どもたちが、問題児も出てきたし、いろんなことが起こったのかということを知事は、われわれと話しているんですけれども、その中で、やはり我々大人たちが半世紀以上に渡って生きてきたこの生き様そのものが、今の子どもたちのやはり行動になって現れているんだろうという、実は我々自身に対する反省から、知事は教育を改革していこうということで、「心の東京革命」ということを行ったわけです。これは言ってみますと、大人は毅然とした態度を取って、それから子どもたちにはきまりをきまりとしてきちっと守らせるという非常に単純なことを、いわゆる当たり前のことを申し上げているわけなんですけれども、これから実は始まったわけです。
今度の教育のいわゆる問題、特に義務教育の問題については、非常に危機感をもっております。この間米長さんは、新聞にも既に考え方を表明しておりますけれども、東京都の教育委員会の考え方も知事の考え方とほとんど同じであると私は理解しております。いずれにしても、私がこの5年間で教育の現場におりまして考えましたことは、日本では本当に市民社会があるのだろうか。市民社会が成熟していないなというのは、実は私の海外でのいろんな経験から出てきた結論でございました。これだけ市民社会が成熟していないときに、こういうようなところに手をつけていくということは非常に危険であると、これはもう櫻井さんが申し上げたとおりだと思うのですけれども、そのような考え方をもっております。この間もう知事はテレビでもって、知事の立場というものをもう表明しておりますけれども、私自身も同じような考え方を持っているということを申し上げたいというように思っております。
信州知事 田中康夫
はい、どうもありがとうございました。それでは、ICU、国際基督教大学の大学院教育学研究科の教授であられます、藤田英典さんでございます。
国際基督教大学教授 藤田英典氏
私も基本的に先ほど櫻井さんが言われましたように、この義務教育の問題は日本の未来の可能性、そしてまた、子どもの可能性をそいでいくものだというような観点から、そして具体的に言いますと、これが一般財源化されれば、明らかに地域格差の拡大と水準の低下と、そして、地方の子どもたちの教育の機会が奪われていくということから、佐和先生たちと一緒に「日本の教育を考える10人委員会」というものを設置しまして、すでにこういう報告書も出しております。色々資料もつけてこの問題がいかに重大かということを報告しているところですが、もう一つこの問題でこれも先ほど櫻井さんが言及されましたけれども、はじめに義務教育費国庫負担の一般財源化ありき、という形で議論が進んでいると。そして本来ならば国と地方の役割分担のあり方を含めてきちっとそれを検討した上で進めるべきでありますし、そして義務教育は基本的には国の責任においてナショナルスタンダードの維持とそして基本的な枠組みの設定は私は国がやるべきことだというふうに考えております。具体的に言いますと、財源と事業の推進のこの2つを国がやるべきか地方がやるべきかということで考えますと、選択肢は3つ大きく分けてあると思うのですが、一つは両方とも国がやる。2番目は、財源は国が保障するけれども、具体的に事業をどう推進するかは、地方の裁量に委ねる、地方が自由にそれを行う。そして3番目は、両方とも地方が行う。今、今回一般財源化という方法は、基本的には両方とも地方が行うべきであると。そういう方向に義務教育は動いていくべきだということですが、基本的にそうなったときに、先ごろ河村大臣の河村プランの中においても、六三制の見直しを含めて地方の裁量に委ねるという案も出ておりましたが、そういったことを含めてすべてこれを地方に移していったときに、国の中における基本的なナショナルスタンダードや国の根幹がそれで維持できるのかということを考える必要があると思います。
それからもう一つ地方に財源を移していったときに、既にもう財政赤字は国だけではなくて地方も非常に厳しい状況にあるわけですから、基本的に財政はない、そして自由だけ与えられる。これで本当にきちっとしたことができるのか。本来ならば財源はきちっと保障される。しかし、それを具体的にどうするかは地方がそれぞれの実情の中で考えて工夫をしてやっていくべきだと。そうするとこの義務教育費国庫負担制度は維持し、そして、総額裁量制が既に入っておりますが、その使い方については地方が自由に裁量できるようにしていくという、そういう改革こそ必要であって、それを今一挙にこれを両方とも地方に委ねるという動きが進んでいるわけですけれども、その結果は日本の将来、そして子どもたちの未来が歪んでいくと。そして、それはまた、経済を含めて活力の低下やいろいろな問題につながっていくという意味で、これは非常にゆゆしい問題だと思いますので、ぜひ懸命な判断が知事会において、そしてまたそれ以降の政治的なプロセスにおいてもなされるようにご尽力をお願いしたいというふうに思います。
信州知事 田中康夫
はい、ありがとうございます。それでは、経済アナリストの森永卓郎さんでございます。
経済アナリスト 森永卓郎氏
私は普段政治的なこういう活動は一切しないことにしているんですけれども、今回こうして出てまいったのは、今回の義務教育費の国庫負担金を原則廃止する、特に中学校について廃止するということについては、教育の機会の均等を保障した憲法に極端に言えば違反するひどい改革だと思っているからなんです。私はもともと小泉構造改革には反対してきましたけれども、実はこの三位一体改革については、割といいことを考えているなと本来は思っていたんです。そもそも公共事業をやるときに道路を作るのに国の基準なら2車線作る、でも地方に行ったらそんなのはいらないから地方の工夫で、ここは1車線でいいのではないかというような選択をしていけば、事業の効率化ができるので、より効率的な公共事業の執行ができるでしょう。その結果として、効率化ができれば必要な予算も減りますから、国全体として財政状況も良くなるでしょう。それは、確かにそういう面というのは沢山あって、それは地方の選択で地方がきちんとデザインをした公共事業をすれば、効率化するっていうのは、なるほどそうだよなっていうふうに思っていたんです。ところが実際出てきたのが何かっていうと、公共事業のほうにはほとんど手をつけないで、実際には義務教育費を削る。この義務教育費を削ったときに何が起こるか、それは地方によって税収を得る力っていうのは違うわけですね。地方のアンバランスは地方交付税で調整しますって言うのですけれども、そんなことが実際にできるのか。実は今年の予算を見てみれば明らかなように、地方交付税は大幅にカットされているわけです。しかも現実に何が起こっているか。例えば今年度すでに三位一体改革で1兆円の削減をしました。公立保育所の補助金を廃止しました。その結果何が起こったかっていったら、公立保育所の保育料があがっているわけです。あるいは、先生の退職金の補助金を廃止しました。そうすると地方だってない袖は振れないですから、でも人件費はなかなか削れないので、経費にしわ寄せがいくわけです。だから学校の図書が買えなくなったりするわけです。結局、最終的に何が起こるといったら、地方の財政力のないところに生まれた子どもっていうのが、教育の機会の均等というものが保障されなくなる。親の負担が増えるという面もあるでしょうけど、基本的には機会の均等が保障されなくなるわけです。地方に生まれたというだけで、最低限の義務教育を同じ質のものを受けられないという国にしていいのか。私はそれは本当にひどいことだと思います。戦後の日本がなぜここまで発展できたのか。実は私、小学校時代をアメリカとオーストリアとスイスで3ヶ国で過ごしたのですけれども、正直言って日本の初等中等教育の水準というのは、私はかなり高いものだと思っています。きちんと読み書きそろばんができる。この日本人の初等中等教育のしっかりした教育が今まであったから日本はここまで経済発展ができたのに、これをどんどん崩していく。ここからは、他の皆さんと意見が違うと思うので、私だけの個人的な意見として聞いていただきたいのですが、私はこういう事をしてどんどん地方の教育を切り捨てていくことによって、地方に生まれた子どもたちをどんどん馬鹿にしていこうとしているんだと思っています。そうやって馬鹿にしていって格差をどんどん開いていく、所得格差を開くような政策をしていく中で、お金持ちがろくな教育も受けられなかった子どもたちを召使として使うっていうようなひどい世の中に変えていくっていうのが、私は本当の目的ではないかとさえ疑っています。とにかく日本国憲法で教育というのは、権利であり義務であるわけです。それをないがしろにするような改革というのを私は個人的には絶対に許すことができませんし、それをまんまと国の戦略に乗っかって、義務教育の国庫負担金というのを廃止する方向の改革に賛成してしまう知事については、私は県民に対しどういう説明をするのかっていうのをきちんとして欲しいなというふうに思っています。
信州知事 田中康夫
ありがとうございました。
本日所用により、ご欠席であります、京都大学経済研究所長の佐和隆光さんは、皆さんのお手元に森永卓郎さん、また、藤田英典さんのそれぞれ新聞に載りました原稿、また、佐和隆光さんの雑誌に上下で連載されました「義務教育の地域格差は国を滅ぼす」というものもお届けしております。佐和先生は先ほどもまさにこのような地域格差を生むということは、日本の経済を滅亡させることだと、ひいては日本という国やそこに暮らす人々を滅亡させることだという想いでこの声明に参加しているというお話でございました。
私は本日賛同立会人でございますが、本日の緊急共同提言というものは、この提言と同じ想いを先ほど鳥海巖さんもお話になりましたが、大変深い憂慮をお持ちの石原慎太郎東京都知事ともご相談のうえ、本日開催させて頂いております。大変に全国知事会の議論、前回も参加いたしましたときに例えば、このような補助金を削減し、税源移譲をしないと教育の充実が図れないというような意見がございました。これに対して私が申し上げましたのは、例えば、長野県は起債制限比率は私が就任したときに既に、全国でワースト2という状況でございます。しかしながら、県民や国民が望むことに税金を投入するという観点から、現在、本県では、小学校4年生まで30人規模の学級を行っております。また、同様の想いを更に充実させたいという市町村とは、そうした想いの市町村に関しては、現在小学校6年まで、30人規模学級を導入いたしております。無論、教員の資質の向上も欠くべからずことではございますが、即ちそれぞれの自治体のやる気と首長の覚悟と、あるいはそこに暮らす方々の理解というものによって、今回のような改悪を行わずとも充実は図れるわけでございます。
そして、これは石原慎太郎都知事も先週の金曜日の知事会見でおっしゃっておりますが、当初は小中学校と言っていたものが、とりあえずは中学校で8千億円というような話は、これはまさにもう本末転倒といいますか、御為倒の話でございます。そもそも、数兆円と言っていたものが、いつのまにか4兆円になり、3兆円になり、そしてこれは藤田先生もお書きでございますが、3兆円をそれぞれ本来、永田町の政治主導によって各省庁で見直しを行うべきのところ、これが各省庁の省益の中で、難しいと見るや、まさに政治主導という意味での政治主導を行わず、地方六団体、地方自治体に丸投げのような、丸下げのような、丸上げのような、まさに責任転嫁をしてきたのもだと私は思っております。そして、現在、全国知事会等では、この投げられたボールは3兆円きちんと枠の中を埋めて投げ返さねばならないというような議論が行われております。私は中部圏知事会議でも申し上げましたが、投げてきたボールがそれがフォークボールであれ何であれ、投げ返すのかと。あるいは投げ返すにしてもそこに「アッカンベー」と書くということもありうるわけでありまして、まさに永田町や霞ヶ関の責任を放棄しているものを受けてその3兆円を埋める。こうした中から、まさにそのほかの福祉であったり公共事業であったりすると、百家争鳴であるという中で、義務教育費は2.5兆円だということで、ならば残りの5千億円は痛み分けも多少は省庁も飲もうというような、極めて低レベルな政治ならぬ、治めるならぬ、政治の「こと」という字の方の政治の一種として扱われているということに大変危惧を抱いております。まさに、佐和先生がおっしゃっているように、日本のこの勤勉さ、あるいは誠実さ、そしてそれは日本の冠たるものづくりや経済の荒波を乗り越えてきたものにあるわけでして、私たちの社会を滅ぼす改悪でしかないと思っております。明日の知事会議では、無論石原慎太郎知事のみならず、同様な想いの良識ある全国の都道府県知事が少なからずいらっしゃいます。そうした方と共に私も今日の提言を受け発言をするつもりでございますし、仮に多数決というような採決を行うというときには、私は47の都道府県知事はそれぞれそこの住民から付託を受けているわけでございますから、それぞれの県知事が都道府県知事が記名投票をすると、また、私としてはそれに先駆けて、例えばそれぞれの都道府県知事が400字1枚に今回のような義務教育費の改悪に関して賛成なのか、反対なのか、その理由は何なのかということをきちんとしたため、それを全国の方々に示したうえで記名投票をし、それはまさに近い将来における後世の人々によってそれぞれの47人の判断というものが、歴史の審判に耐えうるものであったかどうかということを明確に書き記すべきではなかろうかと思っております。
それではご質問を受けます。本日賛同立会人が私でございますので、長野県における知事会見のコードに従い、ご所属なさる、あるいは主たる表現活動の媒体名とお名前をフルネームで最初いただき、またご質問のご指名があればその方のお名前を併せてお願いします。挙手いただければ私たちの係員がマイクをお持ち申し上げます。はいどうぞ。
信濃毎日新聞 宮坂重幸氏
長野県の信濃毎日新聞の宮坂重幸と申します。全部で2点ございまして、最初はどなたにお答えいただいてもいいのですが、先ほど藤田先生が若干触れられましたが、現状の国と地方が2分の1ずつ義務教育費を負担するという制度そのものに対する評価については、それぞれの方の共通認識というものがなにかあるのか、あるいはさらに、例えば生活保護の場合は国の負担は3分の2まであるんですけれども、その程度まで引き上げるべきだという声も一部にはあるのですが、どのように改善していくべきなのかという点をどなたでも結構ですが、お答えいただきたいと思います。
もう一点、田中知事にお伺いしたいのですが、長野県が昨年、三位一体改革について緊急提言を国に行って知事が片山総務大臣とお会いになっていらっしゃるのですが、そのときは義務教育費は削減すべきだという主張をされたのですけれども、今回お考えが変わった理由をご説明いただきたいと思います。
信州知事 田中康夫
それでは、藤田先生の方から先に。
国際基督教大学教授 藤田英典氏
第一点目に付きましては、佐和先生たちと10人委員会の提言書の中にも書いておりますが、基本的には私どもとしては、全国が現在、それぞれ自治体の自主財源で30人学級なり、そういったことを実現しようと努力しているわけですが、国が30人学級の実現に向けて、あるいは、また望ましい教員配置に向けて適切なサポートをすべきである。ただ財政事情が厳しいという事態は、将来的にも変わるとは思えませんので、2分の1の負担率を上げるべきだとは必ずしも考えていません。しかし、私ども10人委員会の意見のときは、基本的には30人学級にするということ自体がすでに財政支出の国の負担が増えることになりまから、それから関連してお手元の資料で、各国の教育財政事情が出ておりますが、この中で、我々教育研究者の間で世界的に常識になっておりますのは、州の独自性の強いアメリカとドイツが今教育問題では一番大きい問題を抱えているというのが、この領域の研究者の間では常識になっております。それから、ドイツのGDPに占める比率が日本に次いで2.9%ですが、ドイツのこの数字を見る場合に注意する必要がありますのは、ドイツの場合中等教育は、半分がマイスター、徒弟制という形で企業が相当に教育費を負担しておりますので、いわゆる学校教育についての予算というのは、事実上これより、日本より多いと言っていいという数字があります。
信州知事 田中康夫
私の方の質問に関してでございます。これは、「過ちを改むるに如くはなし」というか、「至らなさを改むるに如くはなし」ということであります。これは私が以前医療に関しての改革に関しても鴻池祥肇大臣と、当時の、お目にかかる際にも、さらに改革すべき方向性というものの変更点というのは述べているところでございます。その理由に関しては、今日4名の方々、また、本日の緊急共同提言、あるいは私でありましたり、石原慎太郎知事でありましたり、あるいは片山善博鳥取県知事が繰り返しお話しているということが、まさに国民、県民、日本のために今回のような形ではならないという考えからでございます。
その他のご質問がありますればお願い申し上げます。はいどうぞ。一番前の方。
中日新聞 梅本秀基氏
中日新聞の梅本と申します。まず櫻井さんにお聞きしたいのですが、今回の提言というのは、地方には教育の水準を守って自由裁量で最低限の基準を守るのは無理なのだという立場なのでしょうか。地方の独自で教育水準を守るというのは不可能だと。今までのように国が守っていかなければ無理なんだという立場なんでしょうか。それともう一つ、現状を憂いておられますけれども、そういった状況を作ってきたのは、現行の制度ではなかったのでしょうか。それを肯定されるというのは、何か矛盾を感じるのですが。
ジャーナリスト 櫻井よしこ氏
今二つの点でお尋ねを頂きましたけれども、正確に二分してお答えするものではないと思いますので、一緒の形で答えさせていただきたいと思います。今私たちが直面している教育の矛盾、例えばゆとり教育に象徴されるような学力の低下、それから心の荒びと言いますか、心の教育というものをなおざりにしてきて、人生の成功というのは、いい会社に入ってお金を沢山儲けることというふうな価値観というものの中に、私たちもいましたし、その中で子どもたちを育ててきたことだと思うんですね。ゆとり教育の学力低下の問題に関しては、去年の夏、文部省はゆとり教育が間違っていたとは正式には決して認めませんけれども、実態として遠山さんのときに「学びのすすめ」といったんですかね、指導要領に書かれていること以上のものを学びなさいということをおっしゃいました。学習指導要領に書かれていたことは、それまではそれ以上教えてはいけないという上限だったわけですけれども、今は180度文部省が転換いたしまして、最低そこまで教えなさいということになりました。まさに大転換をしたわけですね。そしてその流れの中でいろんな学校が新しい試みをしていて、例えば朝、本を読ませるとか、数を100マス計算をさせるとか、いろんな新しい試みをしている中で、学力の充実ということに関しては、私は今までの過ちを改める方向での転換がなされつつあるというふうに思います。もちろん全国の学校が文部省の号令一つで明日から全部変わるということはありえないわけでして、全部実態として変わっていくにはまだ時間がかかると思いますけれども、そのような形で義務教育における学力という意味では方向転換がなされてきたと思います。またここに鳥海さんがいらっしゃいますけれども、各地でやはり私たちは子どもたちにモノによる幸せであるとか、モノを持つことによる成功ということばかりしか教えてこなかった。もっと心の教育をいなければならないのではないか、国際的なスタンダードも大事だけれども、日本人であることの原点も忘れているのではないかという、いろんな反省が行われてきて、その面でも私は各地での教育方針というものは変わりつつあると思うんですね。ですから、今この場にいることは、今までの教育を肯定するという立場では全くございませんで、むしろ今までの教育の欠点を否定した上に、新たにやってみようという新しい試みを肯定する立場でここに望んでおります。
そしてじゃあ、地方は、地方自治体は国がやらなければできないと思っているのかというお尋ねでございましたけれども、それは全く違うのでありまして、私たちがここに集っていて、義務教育費を削ってはならないと言っているのは、お金は国が保障しなさい。教育であるとか、福祉であるとか、本当に国民全員に保障すべき最低限のことは国がお金を出しなさい。ただ、そのお金を使ってどういうことをするのか、どういう先生をお願いするのか、どういうカリキュラムを組むのかということについては、それぞれの地方に優れた先生がいらっしゃるでしょうし、優れたリーダーがいらっしゃるでしょうし、その土地の文化というもの、伝統というもの、もっと大げさにいえばその土地の文明というものがあると思うのですけれども、そういったものを十分に尊重しながら、その土地、その風土に合った歴史を見ながらその風土に合った教育を地方自治体がイニシアティブを取ってやったらいいんじゃないかと思うんですね。私たちが国に希望しているのは、そういう教育を行うためのお金は国の責任できちんと担保しなさいよということです。それ以上、それだけのことで、地方自治体がその能力がないというのではなくて、地方自治体には多分お金を作り出す能力はないだろうという意味では、地方自治体の力は今信用するわけにはまいりませんですけれども、一つだけ例題を差し上げたいのは、2年間ほどいろんな小学校を取材してみて、非常に多くのことを感じたのですが、その中の一つが図書が全く足りないということだったんですね。子どもたちの読む本が圧倒的に足りないんです。もうある本といえば古い本とか汚い本とか、いい本があると鍵がかかっていて子どもたちが行ったら読めないみたいな状態になっていて、どうしてですかと聞きましたら、物理的に本が足りないのですと。なぜ、足りないんですか。図書費があるでしょうと言ったら、お金も全然足りないんですと言うんですね。どうして図書費がなくなったのかというと、これが交付税になっているわけですね。そうすると地方交付税になって図書費が全国で6百何億円本当はあるはずなんですけれども、地方自治体でこれが図書費の分だったんだけれども、今交付税としていきますよとなったら、何か全部他のことに地方自治体が使っちゃっているんですね。ですから、義務教育費を補助金でなくして、自由な形にしたときに、義務教育費が本当に教育の場に全部使われるのではなくて、もっと他の公共事業にいくかもしれませんし、他のことに流用されてしまう心配があります。それを私は心配しています。
信州知事 田中康夫
よろしゅうございますか。そのほか、森永さん、鳥海さん、藤田さんの方から加えてご発言があれば。よろしゅうございましょうか。
先ほどお手元お配りしましたカラーの資料でございますが、一枚目の方の40道府県で財源不足というのは、文部科学省が試算したものではございます。この東京都のところでございますが、東京と書いてございますように東京都だけではなく、東京都23区、また、市町村を合わせたものでございます。今、それぞれの方がおっしゃったように、東京都の改革案、税財政改革に関しての案の中にも明記されていますが、生活保護あるいは義務教育というものがそれを実行する主体が誰であれ、これはまさにクオリティーオブライフ、人間の尊厳というものを保障すべきものであって、これ関してはネーションステートである日本という政府がその財源を全額保証すべきであるという言葉にまさに尽きているのではなかろうかと思います。
それでは、取り立ててのご質問がなければ以上でございます。本日は大変お忙しい中をご参集いただきありがとうございました。この緊急共同提言は明日の全国知事会でも私のほうから各都道府県知事にお配りをする予定でございます。以上でございます。どうもありがとうございました。
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