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最終更新日:2005年01月06日
 

知事会見 「『脱・記者クラブ』宣言」

平成13年5月15日(火)
14:00〜15:10
県庁議会棟 第1特別会議室

長野県知事 田中康夫

 長野県とりわけ、長野県庁におきます、従来からあります記者クラブ、長野県の記者会見及び報道のあり方に関して、新しい方向を「『脱・記者クラブ』宣言」という形でお伝え申し上げます。

  お手元にお配りいたしておりますが、念のため、全文を読ましていただくことから始めたいと思います。

  <全文朗読>

  これが、「『脱・記者クラブ』宣言」の全文であります。

 この中で、既にお伝えすべきことはございますが、とりわけ付け加えますならば、近時永田町の国会でいわば審議をあえて申し上げれば、形式的ともいえる審議を重ねております「個人情報保護法」というこの呼称、名称とはおよそ対極に位置する奇妙な法案が審議を重ねられているわけであります。これはある意味では、発言力あるいは資本力という点においては、少なからず大きな存在であります新聞社、通信社、放送局を結果的には庇護する形となり、対して雑誌、ミニコミ、インターネットを始めとするそれら以外の新たな、また様々な媒体、あるいは先程申し上げたフリーランスで表現活動に携わる市民から、知る権利あるいは報ずる権利というものを奪い取りかねぬ大変に憂慮すべき方向が「個人情報保護法」という名称と実態がいささかならずかけ離れた形で現在動いております。

  これは、あるいは、私が手前味噌といささかなるかもわかりませんが、現在、長野県知事という職務を勤めているわけでして、これは、明らかに広い意味での権力という名の装置の一翼を担っているわけでありますが、同時に私は、従来もまた現在も、表現という営為を個人で続けているわけでございます。そうした立場を持つ人間として考えますと、やはり、きな臭い世の中の動きには抗い続けるということこそが、これもまた真の県民益を長野県に、あるいは真の市民益を日本へもたらすという私の抱くべき気概でもありますし、またそうした責務も少なからず私にはあると考えております。

  何れにいたしましても、ある意味で言いますとこれはすべての表現がより良い意味での自由競争になるということであります。表現者という者は、まさにすべての市民が表現者であります。そして、それはすべての市民が表現者であるということは、グーテンベルグがある意味では閉ざされた言語空間というものを非常に多くの市民が共有するものとなったわけでありますが、近時におけるインターネットを始めとする様々なそれはツールというものを超えた新しい表現活動というものもすべての生きている人間が表現者であるということであります。生きている人間すべてが表現者であるということこそが、民主主義を今までのようなある意味で言えば、組織あるいは権威というものに立脚しがちだった検証、あるいは検討とそうした過程からすべての表現者が民主主義を話し、試し、そして築き上げていくという形になっていく、それが現実にこれはインターネットを始めとするものが日本以上に先進的かつ充実的である地域にとどまらず、この私たちの日本、そしてまたこの日本の背骨にある長野県においても、おきていることであります。

  それに対して県民からの税金を頂戴する形で県民益をもたらすということに従事している私を含む長野県の職員また長野県と、ある意味では記号としての形態は、開かれた自由競争、しかもまた自分の意志に基づく表現活動を行う方々に広く門戸を開放する、それが長野県の民主主義をより優れたものとしていくということであると思っております。

  それは、皆様も表現者であられますし、私もあるいは県の職員もそうでありますし、それは222万人の今この瞬間も様々な場所で様々に学び、働き、考えていらっしゃるすべての方々が例え数多の軋轢が生じたり、あるいは時には身体に危険を感じようとも、まさに是々非々の精神を抱き続けて表現に携わっていくということこそが民主主義を形づくっていくものだと思っております。

  それは、まさに、今回の「『脱・記者クラブ』宣言」を発表いたしました私及び長野県もまた強きを守り、弱きを挫くような事態を避けるためにも、また真の規制緩和と構造改革といった惹句を惹句で終わらせないためにも、この宣言をひとつのまた新たな「長野モデル」のメンタリティとして県民のために尽くす必要があると考えております。

  その他いくつかの点に関して、この宣言に基づいてお話を申し上げたいと思いますが、この宣言は何れにしても、私どもが既存の記者クラブを構成していた、もちろんそれ以外の様々な報道をする機関の方々も、長野県庁を訪れ、あるいは県内の各地を訪れ、報じてくださっているわけですが、そうした方々へのある意味で言いますと私たちの甘えた依存型ではなくて、まさに同じ目線での県民ともまた表現者とも共生していく形を目指すものであります。その意味で今までの記者クラブという形に依存する記者会見の在り方をまずは見直し、そして記者クラブの枠を超えて、すべての表現者が自由に取材や報道できる仮称としてのプレスセンターの開設を行い、またその中において長野県が主催する記者会見を実施していくということであります。

  こうしたすべての表現者というのは、先程から、繰り返し申し上げておりますように、すべての生きてらっしゃる方々であります。ですから、新聞、通信社あるいはテレビ、ラジオといった媒体にとどまらず、雑誌、もちろん雑誌にも様々な形態がございます、あるいは、どのくらいの部数をもってミニコミ誌というのかという議論もありますが、いわゆる世間一般で概念として確立しておりますミニコミ誌あるいはフリーペーパー、あるいはインターネットといった形の表現これらの表現に携わる方々はすべて仮称としてのプレスセンターをご利用いただけますし、また県主催の記者会見にご出席いただき、お名前をフルネームでおっしゃっていただくことによって、その場で発言、質疑を行うことが可能だということであります。

  そして、最後の方でも申し上げましたが、その天変地異というのは、私たちの予期を超えて突如として起こる可能性がございますので、これらに関しては、もし、皆様が同じ人間として、長野県内あるいは近県を含む天変地異が起きた際にそれを一人一人のまさに生きて考えている方々にお伝えしていただく意思がおありなのであれば、そうした方々には、深夜、早朝あるいは休日であるやもしれぬ緊急記者会見のお知らせを、そしてまた緊急記者会見開催のお知らせを、またそれに伴う資料の提供等をお届けするために提出していただく所定の様式(ご連絡先等を含む)を今後いかなる様式にするかということも表現者の方々と検討した上で設け、その様式にお書きいただく形で事前にお届けする形を目指したいと考えております。

  そして毎日、これはある意味で言いますれば、午前中に、つまり昼から午後にかけてから夕方にかけて表現をなさろうとする方々のために、午前中に一度、午前中までのその時刻までの段階で、前日から県が広くお伝えすべきということを、印刷の形でプレスセンターに掲示させていただきます。同時にこの内容に関してのプリントは希望される方には無料で頒布いたします。そして夕刻も同様のプレスリリースを発行させていただきます。

 主としてこれは夕刻を想定いたしておりますが、その日の県政、県政は決して県庁あるいは県の機関だけではなく、すべての県民の営みが県政でありますから、県政に関しての御質問を受ける場をそこで設けるということであります。これを担当する人間は政策秘書室の人間が担当いたします。

  そして同時に広く表現をなさる方々にお伝えすべき内容がある場合は、宣言の中にも記しましたように、部課長をはじめとする、そこには当然私も含まれるわけでございますが、そうした人間がプレスセンターで御説明をし、質疑を受けるという形をとります。ですので、記号としての長野県としては、毎日、会見はあり得るということでありまして、表現に携わる方々は午前と午後のその時間帯にお越しいただければ長野県が県民のみならず広くお伝えすべき内容はそこで入手することが可能だということであります。

 そして、もちろん1分1秒のタイムラグがないという形は物理的な問題も含めていささか困難だとは思いますが、そこでプレスセンターで掲示いたしました内容は速やかにホームページ上にもアップいたしますので、足をお運びになれない方々もホームページ上でその内容は、隈なく、ご覧いただくことができます。

 記者会見は、県主催という形で週に1回、おおむね1時間を想定する形で、知事記者会見が行われます。これもまた、6月末を目途に現在の3階の記者クラブ室から御退去、御撤去いただいた後に、ここに、本日お座りいただいているのはテーブルがないイスでありますが、折りたたみ型のミニテーブルがついたイスをその部屋に設ける、ですから会見等が行われない時間帯においては、ここで皆さまは表現者の方々は御自由にこの空間を御利用いただくことができます。ファックスとコピーに関しては機械を設置し、常駐するスタッフが実費でこの作業に当たらせていただきます。

  そして宣言の中にもありましたように、多くの県民の方が記者会見を行いたいという場合も、政策秘書室にあらかじめ時間をお知らせいただく形で、これは重複して同じ時間帯を希望なさる方が想定されますから、この点に関しての調整は政策秘書室が担当いたしますが、すべての県民の方は3階のプレスセンターの場で、仮称としてのプレスセンターの場でそうした形の会見を行うことが可能であります。

そうした時間は、プレスセンターの開かれている時間というものも、これからこれは6月末以降、また室内の改装等を伴いますので、また準備等の設備も伴いますので、いささか6月末から7月のいずれになるかは具体的に決まった段階で改めてお伝えする形にはなりますが、この開かれている時間帯で、こうした作業が行われる時間は、全体の中では、それは半分の時間には満たないと現時点では想定いたしておりますが、この他に先程申し述べたように2階の現在の記者クラブの部屋は同様のテーブルのついたイスを置き、そこで表現者の方々はその空間を御自由に御利用いただくこともできるようになります。

 そして、先程も述べましたように、記者会見、それは往々にして1時間以上に及ぶわけですが、また「ぶらさがり」というものも立ち止まってお話しするという形も従来から必要に応じてとってきておりますし、この部分は更にその精神を私自身の中で引き続いて行うということであります。

 その上で、これは表現者であられる方々から週1回の記者会見、「ぶらさがり」、あるいは通常夕方に想定されている政策秘書室の報道担当者のプレスリリース配布の際の会見への知事の出席以外にも、時間をとって県民の方、あるいは市民の方にお話しすべきであるという御要望が表現者の方からあった場合に関しては、これは個別に判断を行い、そうした今想定して申し上げているようなあらゆる形の私、また県がお伝えする機会以外にも設ける必要があると判断した場合においては、その可能性を排除しないということであります。

  そして、従来も頂戴いたしておりません、プレスセンターは表現者の方はどなたでも入れますから、そこにおける光熱水費等の様々な運営は県が負担をするものです。

 駐車場に関してはすべての表現者、それはすべての県民であり、すべての生きていらっしゃる方でありますから、この県庁の建物に訪れられる方は、従来、記者クラブ、3つの記者クラブの側に提供していた駐車スペースはすべての方が御利用いただけるということに実質的にはなると考えております。

 また、この最後に書きましたように、人間はいかなる完璧な想定を考えてもなお、人間の想像を超えた事が起こり得るわけでして、であればこそその表現というものに携わる方が職業として数多くいらっしゃり、またその表現されたものを数多くの方が関心をもってお読みになるわけですから、今日ここの「『脱・記者クラブ』宣言」の中で述べております方向の部分、またそれ以外の今後想定しうる部分も、これは文章の最後に記しましたようにすべての表現者との開かれた話し合いを踏まえて、更なる詳細を決定してまいりたいというふうに考えております。

 また、現在、臨時的任用職員という者が3名、3つの記者クラブに関して私ども県の費用負担で3名を任用しておりますが、これらの3名に関しましてはそれぞれの雇用期間が終了するまでは引き続きその雇用を保証すると。ただし、現在の形の記者クラブ室というものが撤去された段階においても、雇用の保証はするということを併せて申し上げておきたいというふうに思います。ですので、従来は特別会議室において週1回の記者会見等は行われておりましたが、これは現在の3階の記者クラブ室が新たな形になった段階においてそちらで行うようになるということです。そして記者会見に関しては、本日のこの記者会見から、長野県が行うすべての記者会見は、長野県の主催の元に行うという形になります。

 お伝えすべきことは、概略以上であります。

 御自由に質疑を行います。

 お名前はフルネームでおっしゃっていただき、もし、差し支えのないのであるならば、ご自身が表現者として主たる場所として活動していらっしゃるところの広い意味でのあらゆる媒体の形の名前というものも併せておっしゃっていただきたく思います。

 自由に質疑を受け付けます。

  その前に、ホームページ上でアップいたします記者会見というのは、御発言をいただいた方のフルネームもまた御質問の文面もアップを文章においてもいたしますし、動画においてもその音声は隈なく流れる形になります。また、こうした形の会見に御参加なさった表現者の方がその記者会見における内容を活字若しくは動画あるいはスチール写真等ですべてをお伝えになるということは、これをいささかも妨げる用意は長野県にはありません。

 

信濃毎日新聞 高森和郎記者

 会見の主催についてなんですけれども、現在報道側が主催しているものを、県あるいは知事の側が主催するということになるということで、たとえば知事がシステムとしてそういう形とするということで、知事が今後、代わられた時に、例えば週1回という知事の会見が維持されるのか。あるいは、県にとって、知事にとって都合の悪いことがあった場合に、県側の判断で会見が延ばされたりとか、そういう恐れが完全に排除できないのではないかと思うのですが、その点についてはどういった担保というか、考え方があるのか伺いたいと思います。

 

長野県知事 田中康夫

 少なくとも私が長野県知事の職にある限りにおいては、今、この宣言、また、その後の私の口頭での説明のとおりでありまして、いささかならず、1番表現者の方々からのご質問に対しては、手前味噌ですが、公人と呼ばれる中においては、少なくともまず時間においては、またその姿勢においては、最も開かれた形をとってくるように心がけてきたといういささかの自負がございます。それはその精神も含めて、いささかも変更する用意はございません。

 ただ、例えば想定されることで、私もこういう職に就いておりますから、私の両親や妹等もそれなりの覚悟はしていると思いますが、通常たとえば会見の5分前に、何か身内における予期せぬ事態が生じたということによって、その会見の時間が遅れる、あるいは順延させていただくという可能性をもすべて排除することは、これは生きていてこその表現者でありますから、そこまでをご要望になる方がいても、今この場でその点に関してすべてをお約束することはできないと思います。こうした形、非常に極めてまれな形を除いては、少なくとも私の知事である限りは(会見を)行い続けるということであります。

  他方で今御指摘がありましたような県知事が他の人間に代わった場合において、長野県という記号としての組織としてはにどうするかということでありますが、これは検討せねばならないことであります。これは何らかの都合の悪いこと、都合の悪い場合に会見が開けないという形を防ぐ手だてということは、開かれた形ですべての表現者の方と話し合っていく中で生まれてくるのであろうというふうに思っております。

  ただ、ひとつ最後に申し上げれば、県の側が主催する会見であるから、県にとって都合のよい時にしか開かないという可能性が高まるのではないかというご質問ですが、これは今までプロフェッショナルとして、表現者として禄をはんでこられた方々が記者クラブを構成されておりますから、そうした形は現実には起きていないわけですが、これは理論的に言えば、記者クラブにとって都合の良いときには会見を求めるが、都合が悪いときには会見をあえては求めず、ということも論理的には成立しうるわけですから、まさにこの点は、私たち長野県もまさに報じる義務、伝える義務があるわけでございまして、また、伝える権利もあるわけでございまして、表現者の方も報じる権利と同時に、報じる義務もあるわけでございまして、それは双方が、それを先ほど言ったようにどちらか一方が報じる側で、どちらか一方が伝える側あるいは聞き取る側、受け取る側という形ではないということが、今のインターネット始めとするメディアの状況であることは十分にご存じでしょうから、これはある意味では、少なくとも私が知事である間は、この点に関しての明文化がなくとも、それはある意味での信義則というものが成立うるというふうに考えております。ただこれも、開かれた話し合いをしていく中で、何らかの文書化したう上での手だてが必要だという見解に達すれば、それを躊躇するものではないということです。

 

信濃毎日新聞 高森和郎記者

 それからもう1点なんですが、現在の任意団体としての記者クラブというものは存在するわけですけれども、その記者クラブから会見の申し入れがですね、例えば今後、知事が考えるような新しい制度に移行したとして、クラブ側から会見の申し入れがあった場合には、どのように対応されるおつもりなのですか。

 

長野県知事 田中康夫

  クラブとして申し入れがあるということですか。

 

信濃毎日新聞 高森和郎記者

  そういう仮定をした場合のことです。

 

長野県知事 田中康夫

 すべては起こりえますし、すべては排除し切れませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、週1回の会見、県庁のみならず現場を視察したときでも、その場にお越しいただき、質問を発していただければ、ぶら下がりにお答えしてきておりますし、また、私どものプレスセンターに足を運ぶ政策秘書室、関係部課所の面々はお伝えすることを今後も行うわけでありますから、私が現時点で、あるいは私どものスタッフが想定しているのは、それらの今、私ども長野県の側から(会見を)ご用意させていただくと明言している中で、おそらくは、大半、いやおそらくは、限りなくすべては対処しきれるものというふうに現時点では考えております。

 先ほど申し上げましたような突如の天変地異というような予期せぬことの場合を除けばです。ただ、それも先ほど申し上げているように相互、ミューチュアルな形でありますから。

 

信濃毎日新聞 高森和郎記者

  先ほど言われたような緊急な場合とかに、表現者という言われ方をされましたが、そういった者の方からの要請があった場合には排除しない、まぁ排除しないというか、個別に検討されるということだと思うのですが、そういうものと同列というか、そういうものの一つという理解でしょうか。

 

長野県知事 田中康夫

 おそらく記者、あなたがご質問になっているような形の可能性がゼロである、そういった可能性が決してありえないというふうに申しているわけではありません。

 ただ、私どもが長野県という側としてご提示申し上げているあらゆる形でのお伝えする機会、あるいはお聞きいただく機会、ご質問いただく機会という形の中で、突然の天変地異以外の場合は対応しきれる、とりわけ県知事に対しての質疑応答に関しては、従来も45分、あるいは1時間と申し上げても延長する形が多かったわけですから、十分に対応しきれるというふうに考えております。

 

信濃毎日新聞 高森和郎記者

 この中でですね、1500万円/年間というものがありますけれども、これの積算のデータは公開というか資料提供いただけるのですか。

 

長野県知事 田中康夫

  それはそれぞれのスペースできわめて正確を期すように按分いたしておりますが、冷暖房費や電気代が下何桁に至るまで正確かどうかということはわかりませんが、3.14を3にするだのしないだのご時世ですから、その推計に関しては概略当たっていると感じておりまして、厳正価格ということですね。

  これに関しては、ご要望があればご提供申し上げる用意がございます。

 あとあわせまして、県庁舎内には10階に長野県警察本部への取材を主たる活動となさる記者クラブがございますけれども、これは今回の「『脱・記者クラブ』宣言」の適用外であります。

 

共同通信社 伊藤豪記者

  県政の記者クラブでは県民の記者会見も開いておりますが、県が県と例えば対立している団体あるいは個人の方が、このプレスセンターでの記者会見の申し込みをした場合、それを排除しないという担保を何かお考えになってらっしゃいますか。

 

長野県知事 田中康夫

 担保は長野県の良心、長野県の今までの姿勢でございますとか、私の今までの表現者の方々への姿勢からご判断いただくしかないともいえますけれども、いずれにしても、少なくとも私が県知事である限りにおいては、今ご指摘があったような形は、可能性としては杞憂であるとはっきりと申し上げられると思います。

 ただし、例えば、会見を123時間59分やりたいというようなお申し出があっても、これは決してすり併せというような形ではなくて、そこはまたすべての表現者の空間でもございますから、それは事務局として、その場合は政策秘書室が会見でご利用いただく時間に関してご相談申し上げるという形はあると思います。そして、一義的に申せば、この建物の管理者というのも私どもの長野県、とりわけ管財課になるわけでありますから、そこにおいて強権的であるような、まあ世間を騒がせている土地収用法改正、改革かよくわかりませんが、そのような形の強制執行というような形は現時点ではまったく考えておりません。

  ただそれは、真の表現者であられるのであるならば、記者会見をなされたいということに関しておのずと記者会見に要する時間というものをよい意味での経験によって、それぞれがお分かりいただけていくようになると思っております。当初は混乱があると思っております。ただ、それはよりよい場所へと私たちがさらに到達する上では混乱を恐れてはいけないということです。

 それは記者会見を行いますプレスセンターが物理的に一杯となってしまうほどの、例えば1500人の方がおいでになったならばこれは入れませんから、その場合において、私たちが物理的に、その日、議会棟の講堂が空いていれば、そこにスピーカーを設け、あるいはすぐにご用意させていただけるかわかりませんが、画面で会見の内容をご覧いただけるようにするのか、こうした点はさらに今後詰めねばなりませんし、現にそれは私どもの情報公開条例のもとで、例えば「脱ダム」宣言後に関して県に対して届いた1000通に近いeメールをすべて公開請求なさった報道テレビ機関というのもあるわけでありますから、それに関して私どもは労力としてそれぞれのメールをお送りいただいた方の個人情報を保護するための徹夜に近い作業を多くの県の職員が行ったわけでありまして、その1000通に近いメールの情報開示をお求めになったものが、結果として報道にどのようにどの程度生かされたかということを私はつまびらかには存じ上げませんが、けれども、そうした作業もまた、それ以上の混乱もまた恐れてはいけないということです。そうした労苦や混乱を恐れるがために、より開かれたすべての表現者に知る権利のみならず、報ずる権利や報ずる義務や、あるいは尋ねる権利や尋ねる義務ということが、より広い形でより開かれた形で一人一人の表現者に与えれていくのであれば、そうした労苦や混乱を、県民からの税金によって個人としての生計も立てており、そうした県民のために従事するために、その職にある私たちは回避してはいけないということです。

 

共同通信社 伊藤豪記者

  先日の記者クラブ主催の記者会見で、知事は「記者クラブはメルトダウンである」とおっしゃたと思うのですが、その前に大手新聞社の報道姿勢に対してかなり批判的なことを述べた後で、「メルトダウンである」とおっしゃっておったと思うんです。それで、その関係と今回の「『脱・記者クラブ』宣言」というものは関係があるんでしょうか。

 

長野県知事 田中康夫

  よく記者と呼ばれる方々に聞かれんですが、「いつそれは決めたんですか」というふうにおっしゃいますが、人間はそのように突如、まあリトマス試験紙が変わる瞬間というのはございますけど、例えばの話、皆様が「いつその人と付き合うつもりになったんですか」、「いつ旅行に行くことを決断したんですか」、「いつ結婚するいうことを決めたんですか」、「いつ離婚すると決めたんですか」といって、「いついつでございます」という風には伝えられないのと同じでございまして、つまり私たち県の職員、表現者の方も含めて、すべての自分が見たり聞いたり感じたり触ったりした中でおいて、それぞれの行動というのは決まっていくわけですから、今、記者からご質問があった点は、それもまた一つの、つまり私が見聞き経験してきている事は、すべての今日のこの会見をも、あるいはその他のこともすべて、それは規定しているとかですね、という言葉はちょっと似合いませんけれど、その上に立っているわけですね。すべての上に立って(今の)瞬間があるわけで、その瞬間の上に立ってまた次の瞬間があるわけですから。

  ただ、「メルトダウンしている」と申し上げたのは、とりわけ今回のような「『脱・記者クラブ』宣言」という形がでますと、まあ冒頭で護送船団方式という言葉を申し上げましたが、私は人の耳が閉ざすことができないように、耳が肉体的な条件によって不自由にあられる方を除けば、あるいは口もそうした形で不自由であられる、あるいは目もそうした形で不自由であられる方を除けば、人の目を閉ざすことも、人の口をつぐませることも、人の耳を閉じさせることも、これはなんびともできないということです。とするならば、あらかじめ横一線である報道あるいは情報あるいは数値かもしれませんが、それを解禁するという日時を指定するというようなことは、表現に携わる人間としては、それは一時の調和を重んずるがあまりに表現者としての自殺行為とまでは申しませんが、まさにメルトダウン行為であると私は思います。

  ですから、私は今後、この点も、少なくとも県の多くの職員や表現者の方との話し合いの中でさらに詳細は形作られてくると思いますが、私は改めて、祝い電報のように日時指定である情報を表現者の方々にお伝えするという形は、今後長野県においてはないと考えておりますし、従来、長野県を通じてそうした日時指定の情報というものの提供を依頼されてきてた機関があるとするならば、今後そのような日時指定というような形では行い得ないということをお伝えする展開になると思っております。

  同時に、これは大変僭越ですが、一人一人の表現者の方の資質が問われてくるという時代ということでであります。これこそがまさに真の意味での自己責任でありまして、私が繰り返し申し上げておりますが、勘性−感覚の“感”ではなくて勘所の“勘”−というものが、表現者の中でもとりわけ表現者であることにプロフェッショナルの誇りを持ちたいと思ってらっしゃる方々は厳しく問われてくる時代であると。

  そしてそれは、記者会見の内容はホームページ上でも文言でアップするわけですし、近く動画でもアップすると思いますし、あるいは本日お越しの表現者の方々の中にもこれを一部始終を動画でお流しになる方もいらっしゃるでしょうし、それは質問の部分も流されるわけでございますから、それらをいくつかの同じ一つの会見に関して、いくつかの表現された媒体をご覧になった一人一人の市民という表現者の方は、そのいずれが的確に伝え、そのいずれが歪んでおり、また、そのいずれが編集権という作業を超えた編集を行っているか否かということを、まさに一人一人の受け手としての表現者の方が判断できる時代が、今までもそうした兆しはありましたが、とりわけこの長野県から確たる形で進んでいくということであります。

  ですから、それは今日お集いの表現者の方も、あるいはこの瞬間においても、他の表現活動に携わっている方々にも、今回の「『脱・記者クラブ』宣言」がもたらすものというものは、私は極めてよい意味でのラディカルなものであると思っております。ただ、そのラディカルさは必ずや多くの一人一人の市民のための市民益につながる改革であるというように思っております。ゆえに今日、これもまたひとつの「長野モデル」として発信すべきものとしてこの場を設けたわけです。

 

テレビ信州 松岡隆記者

  この宣言の中で「排他的な権益集団と化す可能性」とわりと総論ではありますが、記者クラブのことを言っておられますが、実際に就任後、長野県政の記者クラブについてこういう感想を持っていられるのですか。

 

長野県知事 田中康夫

  もう少し具体的な、コンクリートなご質問を頂戴できると大変うれしく思います。

 

テレビ信州 松岡隆記者

  「排他的な権益集団」という感じ方を長野県県政の記者クラブについて感じておられましたか。

 

長野県知事 田中康夫

 従来から私の記者会見でご質問なさったり、あるいは、県庁内の記者会見のみならず、私のダム現場をはじめとする、あるいは養護施設等をはじめとするさまざまな現場にもお出かけになり、私の発言や行動というものをご覧になってこられた方々からすると、今のような「どちらか」というような、まぁ大変僭越ですが、択一的な答えを求めるような質問に対しては、私は択一では答えられないと繰り返し申し上げてきていると思いますが、それは手前味噌ですが、必ずしも優柔不断というか、lack of determination だから、そのように答えているということではないと思っております。

  「排他的な権益集団と化す可能性を拭い切れぬ」というのは、まさにその意味においてはこの文言どおりでありまして、排他的な権益集団と化す可能性を新聞社と通信社、放送局を構成員とする『記者クラブ』というものにはそうした可能性を拭い切れないと言うことでありまして、それ以上でもそれ以下でもありません。

 そしてですね、会見を30分ほど遅らせてから開催するようになりましたが、本日、同じく、まあある意味では表現者であられますサンパウロ ニッケイ新聞の高木社長という方が1500から1520でお目にかかって、表敬訪問ではなく、取材を受ける形になっております。これは大変に私および私どもの方の時間の設定にある意味では問題があるといえるわけではありますが、高木社長が本日その直後の新幹線で東京のほうにお戻りになられるということで、今しばらくの時間で今日の記者会見は、1510ないしはその前後で終了することができれば大変うれしく思います。

 

日本ビデオニュース 神部旬記者

 今回、記者会見を県の主導でやるということで

長野県知事 田中康夫

  今、「主導」という言葉はあまり私が意図しているものとは、私が意図しているものとは、私の中での言葉の語感のニュアンスとしては違うかもしれません。

 

日本ビデオニュース 神部旬記者

  例えば外のインターネット放送局のようなところにもオープンなものにするということに関して、県政をめぐる報道をめぐってどのような変化が起こるとお考えでしょうか。

 

長野県知事 田中康夫

  それは実際に経て行かねばわかりません。というふうにお答えするのが一番正直だと思います。

  ただ、先ほど申し上げたように少なくとも同じ表現者である人間の受け手の側は、より多面的に一つの会見、一つの現場の視察、それは私に限らず部課長や私どもの様々な職員の活動、あるいは一般の市民の方の記者会見、まさに表現者でありながら受け手である瞬間に、多面的に多角的にご判断いただける機会が増えるということだと思います。またそれは同時に、受け手の方に受け手としての勘性が、勘があるかどうかの勘性が鋭い方はよりその勘性を磨くことに結果としてなり、より社会のあり方ということに関して意識的になられるということだと思います。そういう方が一人でも多く増えていかれるということが、そのスピードの差こそあれ、それがまさに開かれた社会であり、また、暴走を防ぐ社会であり、よい意味でのまさに質的向上のある成熟した社会になっていくことだと思っております。

  ですから、逆にいえば送り手の側が、書き手の側が表現者として勘性が鋭くなければ、それもまた厳しい自由競争の中の評価という淘汰にさらされて行く可能性を排除しきれないということです。けれどもそれは、まさに私たちの社会が様々な人によって成り立ち、私たちが考える葦である以上、それを恐れることは、それは仮にそこにあまたの言葉やあまたの映像があっても、そうした恐れを乗り越える気概のない方々によって、送り手としての、書き手としての表現が行われることがあれば、それは先ほど言ったように、表現のメルトダウンへとつながっていくということです。

 

テレビ信州 谷口考司記者

  今年、今月から「どこでも知事室」というのがあって、県内各地を回るんですけれども、県庁ばかりが県ではないという中で、そういった発表の場を、長野の県庁だけに(ある)仮称のプレスセンターをここ(県庁内)だけにするのか。それとも県内各地に置くのかという部分ではいかがですか。

 

長野県知事 田中康夫

 県知事としての私の会見はおそらくその週のスケジュールによって、まぁ例えば、私が休暇であっても、視察であっても、ニューヨークに行った、サンパウロに行ったときにそこでやるからといわれても、そこではそこで表現者の方がいらっしゃるでしょうけれども、現実的には長野県内にいるときにおいては、全国4番目の広さとはいえ同じだと思います。

 そして、今のご指摘の点は大変大事な点でありまして、私は今後「現地機関」という言い方にしておりますし、また繰り返し最近記者会見等の場でも申し上げてきてますように、県庁の3階に位置しておりますような政策秘書室や財政課や人事課、市町村課といった総務部の部署が県の中枢ではないわけでございまして、ある意味では県の最も大事な機関は様々な県民とより多く接している場所でございますから、今、ご指摘があったようなプレスセンターを今後、可能性としてですね、他の場所にも設けていくということはあるのかとは思います。それはやはり、県の今後、県政改革ビジョンであったり、機構の改編であったり、そうしたこととある意味ではパラレルなことでありますから。よい意味のですね。現時点においては、長野県内での表現者の方、そしてまた、県の職員も表現者でありますが、それらを勘案すると、同時に県民の税金でまかなって行くわけでございますから、様々な費用対効果等を勘案すれば、現時点においては3階の現在の記者クラブの場所にプレスセンターを置くということが理にかなった現実的な第一歩であると考えております。

 

市民タイムス 山本章三記者

  二つ質問があります。

  まず一点目。各合同庁舎にある記者クラブの部屋の扱いを今後どうするのか。

  それともう一つ、先ほど、適用外と言われた県警の記者クラブですが、同じ税金で賄っている県政のクラブとかなり似たような性質のものですが、これを適用外とした理由といいますか、根拠といいますか、その辺をお聞かせください。

 

長野県知事 田中康夫

 まず、各合同庁舎にある記者クラブの部屋でございますが、これは実態、例えば、今、市民タイムスの記者の方からのご質問でありましたが、松本の合同庁舎にありますのは、いわゆる親睦的性格も含めた記者クラブとしてのご利用いただく方の名称は確か松本の市政クラブというような

 

市民タイムス 山本章三記者

  二つあります。市政記者クラブと地方記者会と、二部屋、合庁の中にあります。

 

長野県知事 田中康夫

  地方記者会というのは?質問者にご質問し返すのは失礼かと思いますが。

 

市民タイムス 山本章三記者

 うちのような小さい、いわゆる地域紙ですね、が5,6社入っているクラブが市政の中にもありまして、二つ分かれているのが、そのまま合庁においても分かれたまま隣り合っている。

 

長野県知事 田中康夫

  明日から松本に行きますので、実際に拝見する形になると思いますが、現時点で、例えば市政記者クラブという形は、常駐を常になさってらっしゃる形ではないというふうに、私は認識いたしております。ですから、今後、箱としての部屋ということの問題になるかと思いますので、ここもそれぞれ表現者の方とお話ししていく形でしかないというふうに申し上げられると思います。

 10階にあります県警記者クラブでございますが、これは一義的には松田県警本部長のもとにあるわけですから、同時に県警の広報担当の方々も今日の記者会見、その他のまたそれを報ずるものをご覧なるわけでしょうから、その中でお考えになっていくのではないでしょうか。現時点で、私のほうから県警に対して、このような形にしましょうというような形を申し上げる用意は現時点ではとりたててはございません。

  では、本日の会見は以上で終わりにいたします。

 今後、長野県主催の会見になってまいります。ホームページ上でのアップ等が、動画はサーバーの大きさの問題がありますし、今日申し上げましたことがすぐに立ち上がるわけでもございません。繰り返しになりますが、記者クラブの現在の三つの部屋に関しては6月の末を目途に、現在、お貸ししている県の財産はお返しいただき、皆様の私有物はそれを目途にお持ち帰りいただくということを長野県としては目指しますので、その点を最後に今一度申し上げておきます。

 

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