「過去の出来事に目を瞑る(つむる)人は、現在に対しても目を閉じようとする。だから、私たちは有りの儘(ありのまま)の歴史を、心に刻み続けねばならないのです」 東西ドイツ統一後の初代大統領・ワイツゼッカー氏が、敗戦40周年記念演説で述べた言葉です。歴史に於ける(おける)責任を説く、その演説を読む度に、僕は胸が熱くなります。 が、どうして彼は40周年という一見、中途半端に思える"節目"に拘った(こだわった)のでしょう?25周年や50周年が一般的なのに。その点に関して彼が述べた理由も感動的です。 「月日と共に誰もが年老い、何時(いつ)しか昔の出来事を語り継げる人物は少なくなる。通常、社会では10年が一括り(ひとくくり)。とするならば40年という歳月は、過去の忌まわしい記憶を私たちの脳裏から消し去らせるに十分な長さ。だからこそ、有りの儘(ありのまま)の歴史を心に刻み続けねばならぬのです。25周年や50周年という切りの良い"節目"は、個人ではなく組織にとっての都合でしかないのです」 有為(ゆうい)なる数多くの若者の命を奪い、肉親を悲しませた不幸な歴史を、二度と繰り返してはいけません。戦争を知らない世代の一人として、あの敗戦から56回目の夏を迎えるに当たり、改めて痛感します。
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